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サビエルがつないだ絆 (山口県山口市とスペイン王国ナバラ州パンプローナ市の交流)
山口市交流創造部国際交流課国際交流室
1 パンプローナ市と山口市をつないだフランシスコ=サビエル
今から約500年前の室町時代末期、スペイン人宣教師のフランシスコ=サビエルは山口に滞在し、大内義隆にキリスト教を布教することが許されました。これが由来となって、サビエルの生誕地であるスペイン王国ナバラ州の州都パンプローナ市と山口市は1980年に姉妹都市提携に至りました。サビエルがつないだ交流が、現在どのように広がっているのか紹介します。
2 40年以上続く姉妹都市交流
日本とスペインは飛行機で約14時間かかります。長期の休みを取ることが苦手な本市の現役国際交流課職員は、まだ誰も訪れたことのない遠い国ですが、公式訪問団や民間使節団の相互訪問、児童の作文・絵・絵葉書の交換等が長年続いてきました。山口からの訪問団がパンプローナ市を訪れた際には、図書館への図書の寄贈、市内の小学校への竹馬・絵本の贈呈や日本の紙芝居の披露等によって、日本の紹介を行いました。
3 パンプローナ市の中のYamaguchi
山口市内には、サビエルを記念して「サビエル記念聖堂」や「サビエル記念公園」、パンプローナ市の名を冠する広場「スペース・パンプローナ」があります。
一方、パンプローナ市内には、「やまぐち映画館」「やまぐち広場」等、「Yamaguchi」の名を冠する施設があります。
姉妹都市提携15周年の記念事業では、パンプローナ市に山口の造園業者を派遣し、1997年に日本庭園の様式を取り入れた「やまぐち公園」が完成しました。また、2002年には「パンプローナ・やまぐち公立図書館」が開館しました。
「やまぐち図書館」の日本語の書籍の蔵書数は、これまでの交流事業で寄贈されたものを含めて、スペイン国内でもトップクラスとなっており、定期的に日本についての講座や展示も実施されることから、日本文化の発信地となっています。
また、パンプローナ市出身の著名な歌手Amaia Romeroさんは「Yamaguchi」という曲を発表し、自分と同じように日本の山口市にあるパンプローナ公園でも涙を流した女の子がいるのだろうかと山口に想いを寄せつつ、「やまぐち公園」で過ごした青春時代の想い出を歌っています。恋愛で悩んだ日々、成人してパンプローナを離れないといけない切なさを感じる大切な場所が、やまぐち公園であったことを歌うこの曲からも、やまぐち公園がパンプローナ市民の生活の身近にあり、親しまれていることが感じられます。
4 東京2020オリンピック・パラリンピックでスペインのホストタウンに
2016年に、東京2020オリンピック・パラリンピックにおけるスペインのホストタウンの一つとして山口市が登録された後、競泳とアーティスティック・スイミングのスペイン代表チームが同市において事前キャンプを行いました。
2018年度、2019年度のキャンプでは、歓迎セレモニー、エキシビション開催のほか、練習の合間に、市内小中高等学校への訪問や大学生との料理交流等、幅広い世代との交流が行われました。東京オリンピックの事前キャンプでは、練習会場に市民からの応援メッセージやポスターの掲示を行って歓迎の意を伝えたほか、アーティスティック・スイミング選手の皆さんから市民の皆さんへのメッセージ紹介や公開練習のライブ配信を行いました。
スペインチームの演技には、ハンディキャップのある人も、ない人も、誰もが楽しめるように「協力し、助け合おう」などのメッセージの表現として、日本語の手話が取り入れられたことから、山口市内の総合支援学校と応援メッセージをビデオで贈り合う交流が行われました。
5 広がる交流
本市ではホストタウンに選ばれたことを契機に、スペインからの国際交流員を迎え、市内におけるスペイン文化・言語の紹介やインスタグラム等を活用しての情報発信等、様々な場面で活躍していただいています。国際交流員は日本語が実に堪能なのですが、日本については、「やまぐち図書館」蔵書の漫画で学んだとのことです。
今回のホストタウンをきっかけに、LINEのスタンプ開発やスペインの美食を紹介するグルメ食材試食会、スペイン料理のメニュー開発及び市内小中学校給食での提供等、新たな試みが行われました。
さらに、インターネットを活用した交流も始まっています。サビエルの生家「ハビエル城」(注:「ハビエル」は「サビエル」のスペイン語の発音)オンラインツアーでは、現地に「行けない」からこそ、普段は公開されていない場所も案内してもらえる特別公開が実施され、当時の生活とサビエルの歩みに思いを馳せる旅となりました。また、2022年3月には、山口大学教育学部附属山口小学校が、パンプローナ市のサン・ファン・デ・ラ・カデナ小学校と英語を通じた学術連携パートナーシップを結びました。オンラインで実施した式典では、両校の児童が英語で挨拶を交わしており、今後の交流が期待されます。
一つひとつは小さな出来事かもしれませんが、今、様々な分野で人が出会い、これまでにない速さでパンプローナ市と山口市の交流に関わる人が増え、姉妹都市交流として撒かれた種が芽吹きつつあります。
インターネットを活用することで、訪れたことのない国であっても、相手の顔が見え、リアルタイムで話せるようになり、パンプローナ市が身近に感じられるようになりました。約500年前の史実をもとに繋がった両市ですが、脈々と人と人とが繋がり、広がる、「絆」として、この交流を大事にしていきたいと思います。
最後に、パンプローナ市と山口市の姉妹都市交流は、本市の他の姉妹・友好都市も交えての交流に発展しており、その成果や歌手Amaiaさんを、山口市国際交流課YouTube公式チャンネルとInstagramで紹介していますので、是非ご覧ください。