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未知の美しく遙けき国との出会い:交流を通じた市民の学び
(秋田県にかほ市とリベリア)
秋田県にかほ市商工観光部スポーツ振興課
1 ホストタウンになるまで
東京2020大会に出場する国や選手を応援し、交流ができるまたとない機会に、当市でも異文化を学び多様性を理解することや、障がいの有無に関わらずスポーツを楽しむ共生社会に向けて取り組むことを目的に、ホストタウン登録を検討していました。当市はもともとリベリア共和国とのつながりは無かったのですが、開催が近づく2020年2月にパラリンピック出場に向けた研修の機会に来日していたリベリアパラリンピック委員会の方を通じてつながりを持ちました。
お互いの共通点として、山と海の「にかほ市」、森と海の「リベリア共和国」の自然が似ていることを知りました。また、リベリアのジョージ・ウェア大統領は著名な元サッカー選手であり、国民の間でもサッカーが人気のようでした。にかほ市もサッカー競技で国体やインターハイ、プロチームのキャンプ受入れなどを行っており、サッカー愛好者が多くいます。このため、サッカーをはじめとした様々なスポーツ交流が期待されました。
2020年9月24日、にかほ市は駐日リベリア共和国大使館とオンラインでホストタウンパートナーシップを提携し、同年10月末に登録となりました。
2 未知の国を学ぶ
十数回におよぶリベリア講座で多くの市民にリベリア共和国のことを知ってもらうことができました。偶然にも当時秋田大学で教鞭をとられていたリベリア出身のスティーブンスさんという方がいることが分かり、講師に迎えJICA秋田の協力をいただきながら講座を開催しました。どこにある国?から始まり、歴史・文化・生活・人口・言語・民族など多くのことを学びました。
リベリア講座の中で、映画「リベリアの白い血」上映会を実施したときには福永壮志監督から次のメッセージをいただきました。
「リベリアは自然が本当に美しく夕日や星空などの景色に感銘を受けながら、一生懸命撮影しました。長い間の紛争を乗り越えてきた辛い過去を見せないくらい、とても明るくて大らかな人々の強さが印象に残っています。同じ人として、人間が持つ強さに共感してもらえればと思います。」
リベリアは発展途上国ですが、経済的な豊かさや民族・肌の色などに関わらず~同じ人として~感じることが大事なことを学びました。
小・中学校や高校での、スティーブンスさんのリベリア講座も興味深く、子どもたちの感想の中には「リベリアでも米を食べることが驚きでした。」「リベリアの方々の平均年齢が17歳と聞いて驚きました。」「大統領ジョージ・ウェアさんが元プロサッカー選手だったのでビックリしました。」「リベリアでは雪が降らないことを初めて知りました。」など、日本との違いや共通点のほか、様々な驚きが寄せられました。
3 リベリア選手団の応援
2021年7月、オリンピック選手団の激励会や交流会をオンラインで実施し、子どもたちのチアダンス応援や秋田の民俗芸能である釜ケ台番楽(かまがだいばんがく)による安全祈願の舞、仁賀保高校生による「クワクワエー」といったリベリア風応援や英語で当市の魅力や観光スポットを紹介しました。市民のお二人がリベリア国歌を斉唱したときには、ネルソン駐日リベリア大使や選手団の皆さんが起立して胸に手を当てて聴いてくれたことに感動しました。
また、市民手作りのおみやげを募集し、手芸作品を中心に心温まるおみやげを贈ることができ、日本のおもてなしを感じていただけたと思います。作品を出してくれたゆり支援学校の生徒や市民の方々の中には「自分が役に立てることがあるなんて思わなかった、地球の裏側で自分の作品が飾られたり生かされたりするなんてとても嬉しく充実感でいっぱい」と語ってくれました。さらに、仁賀保高校クッキングクラブの皆さんが開発したリベリア×にかほスイーツ(アフリカでよく採れるバナナとにかほ市の特産品イチジクを合わせたライスブレッド)を作り、駐日リベリア大使館や選手団に送ることもできました。

4 心のバリアフリーを学ぶ
パラ選手団を迎えることを想定し、富士通のサポートを受け地元の障がい当事者やスポーツ推進委員や市民と施設のバリアフリーチェックや意見交換を実施しました。障がいのある方と同じ時間と場所を共有し、同じ目線での気づきがあったり、心が通じ合い笑いながらの楽しい事業となりました。さらにパラアスリートの上原大祐さんのオンライン講演会で共に過ごす中、「障がいのある人もない人もあまり変わらないことに気づいた」と子どもたちの感想もあり、改めて「共生は共有から」を実感しました。
実際にはリベリアパラ選手団の方々との対面交流もできませんでしたが、2021年9月オンライン交流会を実施し、にかほ市側からは仁賀保高校、ゆり支援学校中学部、市内全小・中学校、福祉施設など440人が参加、東京2020大会の感想やリベリアでの練習環境などについて聞いたり、和やかにトーク交流を行いました。

5 今後の交流
東京2020大会でつながったご縁は、様々なスポーツ交流に広げられると感じています。
2022年2月にリベリア共和国に駐在するJICAの中村さん(秋田県出身)の橋渡しにより柔道交流に向けたトークを行いました。普段は砂浜で練習するなどリベリアでの柔道の環境は良いとは言えませんが、「柔道で学べる精神や礼儀などの柔道の良さを広めたい」「日本人に技を教えてもらいたい」という指導者の熱い思いが伝わり、にかほ市柔道連盟の方々が交流に向けた準備を始めています。
また、構想段階ではありますが、リベリアでよく子どもたちが遊んでいるバナナの葉の手作りサッカーボール交流などホストタウンサポーターの方々と企画できたらと考えています。
どんな環境でもスポーツを楽しむ人々からは、学ぶべきことが多くあります。そして、世界を知る事が自分たちのまちを知る事に繋がります。
これからもリベリアのスポーツを愛する人々と市民との交流を深めるとともに、にかほ市のスポーツ環境の充実に繋げていきたいと思います。