世界の医療事情
アルバニア
1.国名・都市名(国際電話国番号)
アルバニア共和国(国際電話国番号355)
2.公館の住所・電話番号
- 在アルバニア日本国大使館(毎週土日休館)
- 住所:Embassy of Japan in the Republic of Albania, Rruga e Kavajes Nd 50, H1 Kodi Postar 1023, Tirana
- 電話:(04)- 454 7930、FAX:(04)- 454 7934
- ホームページ:https://www.al.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
3.医務官駐在公館ではありません
在イタリア日本国大使館 医務官が担当
4.衛生・医療事情一般
アルバニアはヨーロッパの南東にあるバルカン半島の南西部に位置し、西側のアドリア海沿岸部の低地は平野ですが、内陸部は標高 2,753 m のコラビ山などがある山岳地帯です。夏には気温が 30 ℃以上となることもある一方、地中海性気候の海岸部の低地は冬でも 0 ℃ぐらいまでしか下がりませんが、大陸性気候の内陸部の高地では-10℃以下まで低下することがあります。中央部にある首都ティラナは、北海道の函館とほぼ同じ緯度に位置し、1年を通じて温暖な地中海性気候です。総人口は約300万人です。
上水道配管の保守が悪く劣化していることがあり、水道水は飲料に適しません。一部のレストランや屋台等では食品衛生管理が十分でないことがあるので、特に夏場は食中毒に注意してください。
第二次世界大戦後に鎖国状態となり、1990年代に市場経済が導入されてからも、社会基盤の整備は進まず、医療水準は周辺諸国のレベルには達していません。特に国公立病院は設備が老朽化しており、邦人の利用には適しません。
首都ティラナには、近年新たな私立病院が開設され、24時間体制で初期救急対応を行っている病院もあります。これらの病院では多くの部署で英語が通じますが、日本語の通じる医療機関はありません。緊急時に、公的な救急車による搬送は期待できないため、私用車かタクシーを利用して、付添い者とともに受診することをお勧めします。
街中には、24時間営業のものも含め多くの薬局があります。
国公立・私立病院ともに、大きな手術や重症管理には十分対応できないので、重篤な病気や怪我の治療が必要な場合は、周辺の医療先進国か日本への移送が望まれます。移送には高額な費用が必要となりますので、渡航前に緊急移送特約付き海外旅行者保険への加入をお勧めします。
5.かかり易い病気・怪我
(1)交通事故
運転マナーが極めて悪く、道路整備も十分ではないため、交通事故が頻発しています。乗車中はシートベルトを着用し、歩行中にも十分な注意が必要です。
(2)狂犬病
ティラナ市内で狂犬病に感染することはまれですが、イヌ、コウモリ、その他の動物に咬まれた場合には必ず、傷口を石けんと流水で十分洗い、すぐに病院を受診し、狂犬病や破傷風、その他の感染症予防および怪我に対する処置を受けてください。
(3)ダニ媒介性脳炎
ダニ(マダニ類)の刺咬により感染する、脳などの中枢神経系のウイルス感染症です。アルバニアでの発生は多くはありませんが注意が必要です。流行期はダニが多く発生する春~秋で、潜伏期は7~14日程度とされます。未殺菌のミルク(ヤギ、ヒツジ、ウシ)や加工乳製品の摂取による感染の報告もあり、1~2日程度の短い潜伏期間で発症します。発熱、倦怠感、頭痛、悪心・嘔吐などの症状(第1期)の後、数日間は一旦治まったように見える時期がありますが、その後に約3分の1の症例が脳炎などを発症します(第2期)。死亡率は1 %以上と報告されています。
特に農作業や森業に従事する方や、郊外や森林でのハイキングやキャンプ、アウトドアスポーツをする方など、ダニと接触するリスクが高い場合にはワクチン接種が推奨されます。ワクチンを接種してから抗体(免疫)ができるまで数週間を要しますので、早めにダニ脳炎ワクチンの取扱のある医療機関(トラベルクリニックなど)に相談してください。
(4)バルカン・バイパー(Balkans viper snake)
山岳地帯には有毒ヘビが生息しており、咬傷を受けた時の致死率は非常に低いのですが、ハイキング等の際には注意が必要です。治療のための抗毒素血清に関しては、マザー・テレサ病院に確認してください。
(5)ウイルス性肝炎
B型肝炎は血液(輸血や医療行為、出産)や体液(性交渉など)を介して伝染するウイルス感染症で、アルバニアの全人口の2 %以上が感染しているとされています。国内の輸血用血液製剤は、B型肝炎ウイルスの検査済とされていますが、必ずしも安全とはいえません。特に長期滞在される方にワクチンの予防接種をお勧めします。
A型肝炎は、飲み水や食べ物から感染するウイルス感染症で、アルバニアでの発生率は低くなってきていますが、先進国と比較すると感染のリスクは高いので、手洗いときちんと加熱されたものだけを食べる習慣に加え、渡航前のワクチン接種を推奨します。
6.健康上心掛けること
(1)真夏には熱中症対策を、冬には十分な防寒対策をしてください。
(2)上水道の保守が不十分な場合があり、飲用には市販のボトル入りウォーターの使用が推奨されます。
(3)動物には近づかない、刺激しない、餌をやらない等の注意をしてください。夜間の公園等に餌を求めて野犬の群れが徘徊していることがあります。
(4)野外活動時にはダニに刺されないよう、皮膚の露出を減らし、靴下・靴を着用してください。防虫剤の使用も有効です。
(5)当地で購入できる医薬品は、日本と用量の設定が異なっている場合も多く、使用の際には注意が必要です。使い慣れた薬の携行を勧めます。
7.予防接種
現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)
(1)赴任者に必要な予防接種
成人・小児とも、本邦からの入国に際して必要な予防接種はありません。
成人:(推奨)A型肝炎、B型肝炎、破傷風(狂犬病、ダニ媒介性脳炎)
小児:(推奨)日本の定期予防接種、A型肝炎、B型肝炎(狂犬病、ダニ媒介性脳炎)
(2)当地の小児定期予防接種一覧(2022年、WHO)
出生時 | 2か月 | 4か月 | 6か月 | 12か月 | 18か月 | 2歳 | 5歳 | 6歳 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
BCG | ○ | ||||||||
B型肝炎 HepB | ○ | ||||||||
肺炎球菌 | ○ | ○ | ○ | ||||||
5種混合 DTwP +Hib, Hep B(注) |
○ | ○ | ○ | ||||||
ロタウイルスRotavirus | ○ | ○ | ○ | ||||||
不活化ポリオ IPV | ○ | ○ | |||||||
生ポリオ OPV | ○ | ○ | ○ | ||||||
MMR 麻疹(はしか)、おたふくかぜ、風疹 | ○ | ○ | |||||||
3種混合 DTwP | ○ | ||||||||
2種混合 DT ジフテリア、破傷風 | ○ |
(注)DTwP:ジフテリア、破傷風、百日咳、Hib:インフルエンザ菌b型
参照:https://immunizationdata.who.int/pages/schedule-by-country/alb.html?DISEASECODE=&TARGETPOP_GENERAL=
8.病気になった場合(医療機関)
◎ティラナ
近年私立医療機関の新設がつづき、設備面では先進国レベルに達している医療機関もありますが、専門的知識を要する診断や治療レベルには不安が残ります。診断や治療レベルは医師個人の力量によるところが大きく、また医師の移動が多いことから、口コミで良い専門医を探す必要があります。
- (1)American Hospital 2
- 所在地:Rruga e Dibres, Tirana
- 電話:042 35 75 35
- https://al.spitaliamerikan.com/en/
- 概要:2011年に開設された、ティラナに3施設を有するAmerican Hospitalグループの病院(3が最も大きく、1が最も小さい。2018年8月に下記Hygeia病院もグループ内施設となった)。マザー・テレサ病院の向側に位置し、24時間救急、手術室3室、ICU8床、透析施設などを有する総合病院です。MRIや心臓カテーテルの設備があるのは American Hospital3のみです。多くの部署で英語が通じます。
- (2)Hygeia病院(Spitali Hygeia Tiranë)
- 所在地:KM 01 i rrugës dytësore të Autostradës Tiranë-Durrës, Tirana
- 電話:(04)- 23 90000、救急 (04)- 23 23000
- http://www.hygeia.al/
- 概要:ギリシャのHygeiaグループにより2010年開設された、施設やサービス面でティラナ随一の私立医療機関で、多くの部署で英語が通じます。2018年8月にAmerican Hospital の管理となりました。25の診療科(精神科除く)と入院病床102床、手術室11室、ICU10床、NICU 8床を有し、PET-CT、1.5テスラMRI、64列CT、血管造影、各種内視鏡、リニアック(放射線治療装置)や人工透析などの検査・診断・治療設備を備える総合病院です。約100名の常勤医師と、200名の非常勤の協力医師が治療に当たり(Hygeiaグループ経営当時)、24時間の救急体制(救急車3台を保有)です。LASIKなどの特殊な眼科手術はドイツからの医師が行います。また、国内各地からのドクターヘリによる患者移送を受け入れています。また、2016年に歯科(Advanced Dental Center)が開設され、歯列矯正やインプラント治療も行っており、小児用治療室もあります。
- (3)ABC health center
- 所在地:Rruga Qemal Stafa 260, Tirana
- 電話:(04)- 2234 105、携帯 069-409-6078
- ホームページ:http://abchealth.org/
- 概要:ティラナ唯一の私立プライマリ・ケア診療所を自負し、妊婦健診や乳児健診も行う,英語の通じるかかりつけ医として、外国人コミュニティーの信頼も厚いようです。アルバニアの公的小児予防接種だけでなく、各国の接種スケジュールにも対応してもらえます。
(ティラナの公立病院)
約90万人が居住するティラナ診療圏の公的医療サービスは、一次医療機関として入院施設のないヘルスセンターがあるものの、二次医療機関がなく、三次医療機関であるティラナ大学付属の4病院が、二次医療機関の役割も果たさなければならないため、大変混雑しています。
- " Mother Teresa(マザー・テレサ)" University Hospital Centre of Tirana
- University Hospital of Lung Diseases " Shefqet Ndroqi ", Tirana
- Trauma University Hospital, Tirana(旧Military Hospital)
- University Hospital for Obstetrics and Gynecology " Queen Geraldine ", Tirana
このうちマザー・テレサ病院の規模が最も大きく、病床数は約1600床、年間入院患者数は約75,000人で、460名の常勤医師と138名の医学部教授を擁する国内最大の公立高次医療機関です。これらの公立病院ではほとんどアルバニア語しか通じません。また、旧式の医療設備であることが多く、やむを得ない場合以外、私立病院の受診を勧めます。
9.その他の詳細情報入手先
アルバニア保健省(Ministria e Shëndetësisë) http://www.shendetesia.gov.al/
世界保健機関(WHO) http://www.who.int/countries/alb/en/
英国旅行医学ネットワーク・センター:NaTHNaC https://travelhealthpro.org.uk/country/2/albania
10.現地語一口メモ(アルバニア語)
病院:spital(スピタール)
医師:mjek(ミエーク)又は Doktor(ドクトール)
飲み薬:ilaç(イラチュ)
注射:injeksion(インエクシオン)又は Vaksinë(ヴァクシーヌ)
頭痛:dhimbje koke(ディムビエ コーケ)
腹痛:dhimbje barku(ディムビエ バルク)
胸痛:dhimbje gjoksi(ディムビエ ジョクシ)
下痢:diarre(ディアレ)
発熱:me temperaturë(メ テムペラトゥール)
吐き気:të përzier(テ ペルヅィエール)
傷:plagë(プラーグ)
11.新型コロナウイルス関連情報
発熱や咳の症状があり感染が疑われる場合は、直接医療機関を受診することは控え、かかりつけ医に電話またはフリーダイアル「127」に連絡し指示を仰ぐように求められております。
○2022年9月現在、Covid-19 患者の入院を受け入れている医療施設
- マザー・テレサ大学病院(感染症指定病院)
○2022年9月現在、PCR検査を実施している医療機関
American Hospital 2、Hygeia病院、GENIUS laboratory、Intermedica、Pegasus MED等。
検査料は医療機関ごとに異なりますが3,000~5,000ALL前後にて受検可能です。