寄稿・インタビュー

「サウジアラビアとの歴史的なパートナーシップ発展と中東地域全体の平和・繁栄のための日本の役割」

令和8年8月18日

 目覚ましい発展を遂げるサウジアラビアに、日本の外務大臣として再び訪問できることを心から嬉しく思う。

 日本とサウジアラビアは、中東地域がどのような状況にあっても、良好な友好関係を長年にわたり築き上げてきた。サウジアラビアは日本にとって最も重要かつ最大の原油供給国の一つであり、エネルギー分野は両国関係の基礎である。現在はこれに加え、「日・サウジ・ビジョン2030」を基軸として、製造業、金融、AI、医療、宇宙、物流、教育、エンターテイメント、そして水素やアンモニアを含む次世代エネルギーなど、様々な分野に連携の裾野は拡大している。

 活発な二国間の要人往来も、良好な二国間関係を象徴している。両国の外交関係樹立70周年を迎えた昨年には、日本で大阪・関西万博が開催され、ファイサル外務大臣やバドル文化大臣を始めとする多くの閣僚が訪日された。これらを通じ、両国の戦略的パートナーシップが一層強化される一年となった。また、今年11月にはリヤド・東京間の直行便が就航予定であり、両国間の交流がより一層、様々なレベルで発展していくことを期待している。

 中東情勢に目を向けると、今般のイラン情勢においては、紛争の当事者ではない地域諸国に対しても攻撃が発生し、サウジアラビアを始めとする各国では様々な人的・物的被害が発生した。このことについて、改めてお見舞い申し上げる。中東地域の安定は、地域のみならず世界全体の安定と繁栄にとって重要であり、国際社会全体にとって喫緊の課題となっている。とりわけ、ホルムズ海峡は世界の石油輸出の約3割が通過する極めて重要なエネルギー供給路であり、同海峡の自由で安全な航行が脅かされている現状は、その主たる消費国である日本を含むアジア諸国にも甚大な影響をもたらしている。

 このような困難な状況の中、サウジアラビアは事態の外交的解決を目指し、重要かつ有効な仲介努力を果たしている。日本は、サウジアラビアのこうした取組を一貫して支持している。また、サウジアラビアは、中東情勢が緊迫化する中でも、東西パイプラインの稼働と紅海沖の港からの積み出しにより、日本、そして世界市場への原油の供給継続に尽力している。サウジアラビアのこうした真摯な努力に対し、心から敬意を表する。

 紅海でも、イエメンのホーシー派による攻撃などにより、自由で安全な航行が脅かされている。日本は、ホーシー派によるサウジアラビア等に対する攻撃を強く非難し、ホーシー派に対し、事態のエスカレーションを控えるよう求めている。日本は、イランをめぐる事態の早期沈静化、ホルムズ海峡及びバブ・エル・マンデブ海峡における自由で安全な航行の一刻も早い回復に向け、サウジアラビアを含む地域諸国と連携しつつ、外交努力を重ねていく決意である。

 また、今般のイラン情勢を踏まえ、サウジアラビアを始めとする湾岸アラブ諸国は、原油輸送手段を含む社会・経済インフラの強靱性の強化を喫緊の課題とし、迅速に取り組み始めている。日本は、今後、湾岸アラブ諸国との経済・ビジネス面での協力を一層活性化させ、こうした強靱性の強化の取組に積極的に貢献していく。例えば、日本は本年4月、広くアジア地域におけるエネルギー・資源供給の強靱性をさらに強化するための協力枠組として「パワー・アジア」を立ち上げた。これは、アジア地域における湾岸産油国の供給拠点・海外備蓄の拡大にも資するものであり、こうした枠組を通じ、生産者である湾岸産油国と消費者であるアジア諸国の結びつきをより一層強固なものにしていきたい。

 サウジアラビアは、日本の大阪・関西万博からのバトンを受け取り、2030年にリヤド万博の開催を控えている。リヤド万博は、「サウジ・ビジョン・2030」の成果を披露すると同時に、今般のイラン情勢をめぐる危機を乗り越えたサウジアラビア、ひいては中東地域全体の姿を世界に示す上で重要な舞台となると確信している。

 アラブには、「من طلب العلا سهر الليالي」(頂を目指すものは、多くの夜を徹しなければならない)という諺があるが、日本にも「千里の道も一歩から」という諺がある。日本はサウジアラビアと共に、豊かな未来を築いていくために、これからも一つずつ協力や交流を積み重ね、80年、90年、100年と、多層的かつ未来志向の協力関係を発展させていく。今回の私のサウジアラビア訪問を、両国の戦略的パートナーシップの更なる強化につなげていく機会としたい。


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