パレスチナ
日・パレスチナ共同プレスリリース
2016年2月15日,安倍晋三総理及びマフムード・アッバース大統領は東京にて会談し,日・パレスチナ関係やイスラエル・パレスチナ紛争について議論した。
1 日・パレスチナ関係
(1)安倍総理及びアッバース大統領は,政府高官レベル及び実務者レベルでの往来を通じ,経済協力のみならず政治,経済,安全保障,文化及び教育をも含む幅広い分野に関する意見交換を行うために,双方間の対話を継続していくことの重要性に関する見解を共有した。
(2)双方は,日本の独自のイニシアティブである「平和と繁栄の回廊」構想が域内の平和及び発展に寄与することを再確認し,ジェリコ農産加工団地(JAIP)においてパレスチナ企業第一号が操業を開始したことを歓迎した。双方は,JAIPの本格稼働に向けて,他の同回廊構想に関係する国と協力しつつ,努力を強化させていくことをコミットした。この観点から,JAIPの発展を促進するために,東京にて「パレスチナ・ビジネスフォーラム」が開催されたことを歓迎した。
(3)双方は,パレスチナにおける観光業の潜在性,ひいては観光資源及び観光産業の発展の重要性を確認した。この文脈において,双方は「観光回廊」構想の一部である「ジェリコ・ヒシャム宮殿遺跡大浴場保護シェルターの建設及び展示計画(詳細設計)」に関する書簡の署名・交換を歓迎した。
(4)安倍総理は,パレスチナが独立した,民主的で持続可能かつ一体の国となるために,政治的及び経済的支援を継続するとの日本の意向を表明した。このような支援の一部として,安倍総理は,日本がパレスチナに対する追加的な経済支援パッケージとして新たに7800万米ドル以上供与する旨表明した。アッバース大統領は,新規支援を含め,1993年以降17米億ドル以上に上るこれまでの日本の対パレスチナ支援に深い謝意を表明した。
(5)双方は,2016年2月3日に日本の箱根にて開催された,パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)の高級実務者会合の成功を歓迎し,次の閣僚級会合に向け,アジア諸国との連携を強化していくことを確認した。
(6)アッバース大統領は,20年以上もの間,日本政府が主催し続けるパレスチナ・イスラエル合同青年招へいを評価するとともに,日本の地方自治体による類似の活動も,日本とパレスチナとの間の草の根での相互の理解及び信頼醸成の促進に資するものとして認識した。
(7)安倍総理は,ガザ地区における封鎖の継続及び復興の遅延から来る人道状況の悪化,並びに高い失業率を始めとして若者が直面する困難な状況に憂慮の意を表明するとともに,これらの問題に対処するために,日本は国際社会と協力しつつ支援を継続していく旨表明した。また,安倍総理は,度重なる戦争に苦しんできたガザ地区の子供たちと東日本大震災で被災した岩手県釜石市の子供たちの友好交流を歓迎し,また,被災地を毎年励ますガザ地区の子供たちに謝意を表明した。
2 イスラエル・パレスチナ紛争
(1)双方は,中東地域における数々の困難の中,イスラエル・パレスチナ紛争は引き続き中心的な問題の一つであり,この問題の解決なくして中東全体の平和と安定はないとの認識を共有した。また,双方は,1967年の境界を基礎とした,自立したパレスチナ国家とイスラエルが平和かつ安全に共存する二国家解決を支持すること確認した。
(2)安倍総理は,パレスチナ・イスラエル間の信頼関係の欠如と,現在の治安情勢の悪化により市民に多くの犠牲者が発生していることに対して深い懸念を表明した。安倍総理は,パレスチナ人及びイスラエル人に対して,自制と,いかなる暴力も否定するよう促した。
(3)安倍総理は,非暴力路線やイスラエル・パレスチナ間の治安協力を通じた暴力の封じ込めに向けたアッバース大統領の努力を評価するとともに,西岸・ガザにおいて公正かつ透明性を有する選挙実施に不可欠であるパレスチナの和解の重要性を強調した。
(4)アッバース大統領は,引き続き二国家解決と和平に向けた建設的な役割を堅持することを改めて表明した。
(5)双方は,聖地エルサレムの特別な地位に留意し,最終的地位を予断するいかなる行為も是認しないことを強調し,いかなる暴力や扇動行為も控えるべきことを確認した。
(6)双方は,東エルサレムを含めた西岸における入植活動は国際法違反であり,二国家解決にとり大きな障害となるところ,イスラエルは入植を完全に凍結するべきであるとの認識を共有した。
(7)安倍総理は,日本が,パレスチナ人の苦難を和らげ,二国家解決を実現するために,G7議長国及び国連安保理非常任理事国として,一層の貢献をしていくことを表明した。
(8)安倍総理は,国際社会が中東和平を強力に後押しすべきとの考えに立ち,日本は,イスラエル・パレスチナ紛争に関する多国間協議を歓迎し,右会議が開催される場合には,地域の関係諸国とも協力の上,これに積極的に参加する用意がある旨述べた。
(9)アッバース大統領は,これまでの日本の中東和平に関する貢献を評価した上で,日本独自の役割に期待を表明した。これに対し,安倍総理からは,ガザ復興支援及びパレスチナの若年層が抱える問題への対処において日本らしい貢献を行っていく用意がある旨述べた。このことを考慮し,安倍総理は河野雅治中東和平担当特使を近々地域に派遣する旨述べた。