寄稿・インタビュー

令和8年8月4日

 日本とパナマは、1904年の外交関係樹立以来、120年以上にわたり友好と信頼を積み重ねてきた。昨年の「日・中米交流年」及びムリーノ大統領の訪日を契機として、価値や原則を共有する日本とパナマの関係強化への機運は、かつてなく高まっている。こうした中、5年ぶりにパナマを訪問できることを大変嬉しく思う。

 今日、価値や原則に基づく国際秩序は揺らぎを見せ、国際社会における不確実性は高まっている。このような時代だからこそ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化は、海洋国家である日本とパナマ、そして、国際社会全体にとっての極めて重要である。

 日本は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を外交の柱として推進しており、本年5月には、時代の変化を踏まえ進化した「FOIP」を打ち出した。これは、不確実性と変革の時代に安定と繁栄を実現するためには、「自由」や「法の支配」といった理念を維持しながら、自らの針路を自らの手で決めるための「自律性」と「強靱性」を備えることが不可欠であるという考えに基づいたものである。

 パナマは交通の要衝に位置し、太平洋を挟む隣国である日本にとって、中南米地域へのゲートウェイともいえる存在である。特に、パナマ運河は、グローバルな海上交通の要衝として、長年にわたり世界経済の発展に安定的に寄与してきた。こうした地政学的な重要性を有し、基本的価値と原則を共有するパナマは、日本にとって、FOIPを実現する上で極めて重要なパートナーであり、共に「自律性」と「強靱性」を備えられるよう、協力していく決意である。

 具体的には、例えば、本年1月には、「日・パナマ官民サイバーセキュリティ会合」が開催され、パナマ運河や港湾など重要インフラのサイバーセキュリティ強化に向けた協力が始まった。こうした協力は、FOIPの理念を具体化する取組の一つである。日本は、このような具体的な取組を幅広い分野で積み重ねることで、パナマと共に強く豊かになることを目指していく考えである。

 他にも、協力の可能性がある分野は多岐にわたる。特に、環境分野は両国が重点を置く戦略分野の一つである。日本は、世界共通の課題である気候変動に対し、危機管理投資の観点から大胆なGX投資を進め、脱炭素、経済成長、エネルギー安全保障を同時に実現するための取組を推進している。パナマもまた、環境保全とクリーンエネルギーへの転換を国家の重要課題と位置付け、カーボンゼロ政策を推進するとともに、国民生活の質の向上に力を注いでいる。

 こうした共通の方向性の下、日本は、環境に配慮した経済基盤の整備をパナマとの協力の柱として位置付け、進めている。パナマでは、交通渋滞やそれに伴う環境負荷、廃棄物の増加等の問題が深刻化しており、日本はこれらの喫緊の課題の解決に向けて、連携して取り組んできた。

 その象徴的な取組の一つが、日本のODAによる「パナマ首都圏都市交通3号線整備計画」である。本事業は、日本企業の技術も生かしながら、交通機能の改善と二酸化炭素排出量の削減を通じて、パナマの持続可能な経済成長に寄与することを目指している。

 日本は今後も、パナマ運河をはじめとする重要インフラの機能強化に加え、GX、廃棄物管理、AI・デジタル、さらには重要鉱物をはじめとするサプライチェーンの強靱化など、幅広い分野において、ビジネスや投資を含む官民一体の協力を一層推進し、パナマにおける課題の解決を、新たな成長機会の創出へとつなげていく。

 日本とパナマは、ともに責任ある対等なパートナーであり、信頼のおける友人である。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を共に支え、共に強く、共に豊かな未来を築いていくために、緊密に連携し、相互に解決策を提示し合う、新たな時代の戦略的関係をともに構築していきたい。今回の私のパナマ訪問を、こうした機運を高め、両国のパートナーシップの更なる強化につなげていく機会としたい。


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