寄稿・インタビュー
ネーション紙への林外務大臣寄稿(令和5年5月1日)
「日本、バルバドス-自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けたパートナー」
今回、半世紀以上に亘る友好・協力関係を有する美しく特別な国、バルバドスを、日本の外務大臣として初めて訪問することを、大変嬉しく思います。
日本はバルバドスから見ると地球の反対側にありますが、海に囲まれた島国で、豊かな自然と人材に恵まれているという共通点があります。また、自由、民主主義、法の支配等の基本的価値を共有する重要なパートナーであり、1967年の外交関係樹立以来、一貫して様々な国際場裡で協力を続けています。
特に、一昨年に世界で最も若い共和国となった貴国は、モトリー首相のリーダーシップの下、国内及び国際舞台で大胆な改革を高く掲げ、その率直で原則を尊ぶ不偏の声は国際社会で支持を拡げています。今回は、日本とバルバドスとを結ぶ友好の絆を強化し、国際社会が直面する共通の課題での連携を、更に深化させるために訪問を決めました。
現在、両国、そして世界は、厳しい国際情勢の下、重大な試練に直面しています。それは、ロシアによるウクライナ侵略により国際秩序が激しい挑戦を受け、足下では世界経済が動揺し対処が迫られる一方で、気候変動による自然災害の激甚化、国土浸食、海面上昇などから世界の人々と社会を守り抜くことができるかという、二重の難しい課題です。本年は2030年までのSDGs達成に向けた中間年ですが、その進捗には大幅な遅れが生じています。
そのような中、バルバドスは、昨年9月ブリッジタウン・イニシアティブ(BI)を発表し、途上国にとっての気候変動対応と経済成長の関連性をあげ、気候変動やCOVID-19等による影響など、途上国・脆弱国が直面する様々な困難への対応のために必要な資金を必要なところに届けるための提案を行いました。国際社会への新たな提案が、ここバルバドスから発信され、国際社会で広く反響を受けていることに敬意を表します。
「いかなる国も取り残さない」というバルバドスの高い理念に日本も共感するとともに、気候変動問題だけに止まらず、日本は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持し、強化するパートナーとして、バルバドスとの連携を深めていく考えです。
こうしたパートナーシップの基礎となるのは、バルバドスと日本との二国間の絆です。日本の開発協力の特徴は、人間の安全保障に着目した、各国の自立のためのパートナーとしての協力です。バルバドスを含むカリブ諸国は、たとえ一人当たりの所得が高かったとしても、小島嶼国であるがゆえの開発課題や困難に直面していると認識しています。日本は、こうした小島嶼国特有の脆弱性克服のため、各国の事情に応じたきめ細やかな支援を行ってきています。気候変動や防災・環境分野の取組として、バルバドスの美しい景観や海の環境を損ない、主要産業である観光や水産業に悪影響を与えるサルガッサム海藻を除去するための支援や、自然災害の被害に見舞われやすいバルバドスに日本から防災専門家を派遣し、日本の経験や知見を伝えてきています。今後とも日本ならではの協力を積極的に行っていきます。
また、両国間の人の交流では、今年もバルバドスから日本各地で英語指導助手や国際交流員として働くJETプログラムに参加される方がいます。さらに、近年では、大学間協力が進展し、学部生に加えて大学院生の留学機会も準備中です。東京オリンピック・パラリンピック競技大会でのバルバドスのホストタウンの山形県・南陽市との交流も活発です。日本は来年を「日カリブ交流年2024」として、カリコム諸国との交流を強化していきます。また、2025年の大阪・関西万博へのバルバドスの参加も楽しみにしています。
この様に、日本にとってバルバドスは近しさを増しています。バルバドスの方々にも日本に一層親しみを感じていただくとともに、今後、両国が国際社会の責任あるパートナーとして結びつきを益々強めていけることを願っています。