主な要人の来日日程

アナン国連事務総長の訪日(概要)

平成18年5月22日

【要点】

  • アナン事務総長は、16日~19日、外務省賓客(:今年は我が国の国連加盟50周年)として訪日、小泉総理、安倍官房長官、麻生外務大臣とそれぞれ意見交換を行った。
  • 今回の一連の会談においては、安保理改革をはじめとする国連改革の推進、国連分担率のあり方に対する我が国の強い問題意識を事務総長に伝えるとともに、我が国の国連に対する協力として、平和構築、人道危機への対処といった分野への協力を印象付けた。また、事務総長より、イラクにおける国連の活動への空輸支援につき要請があり、我が国として積極的に検討し、前向きに対応していくこととなった。
  • また、アナン事務総長は滞在中、東大での講演、グローバル・コンパクトとの会合、千玄室国連親善大使主催茶会等に出席し、ナーネ夫人は、学習院女子大学において講演を行った。

I.主要会談の概要

1.小泉総理との会談(17日、16時40分から40分間)

(1) 総理より、先のアフリカ訪問の際に発表した、アフリカでの感染症等の疾病対策のための研究、医療活動において顕著な功績を遂げた者を讃える、ノーベル賞に匹敵する「野口英世賞」の創設につき説明を行った。

(2) 国連改革について、アナン事務総長より、幅広い分野で改革が進んでおり、日本及び小泉総理の協力に感謝したい、安保理改革についても、いまだ死んでいない、改革の必要性については大部分の加盟国が同意しており、あとは如何にコンセンサスを形成するかの問題であると述べた。これに対し、総理より、昨年のG4との協力を踏まえ、米国とも協議しつつ、引き続き改革を目指す旨発言があった。

(3) アナン事務総長より、イラクにおける国連の活動について、人や物資の空輸支援の要請があり、総理より、国連との協力は大事であり、積極的に検討して前向きに対応したいと応じた。

(4) アナン事務総長より、北東アジア情勢につき、拉致問題、北朝鮮の核開発問題、日韓関係の重要性が提起され、これに対し、小泉総理より、日韓・日中関係共にかつてないほど交流は盛んになっており、何の心配もしていない、いつでも首脳会談に応じる用意がある旨応答した。

2.麻生外務大臣との会談(17日、18時50分から20分間、以後、主催夕食会)

 上記の総理とのやりとりに含まれる内容に加え、以下の点についての意見交換があった。

(1) 麻生大臣より、国連改革の推進を望む、特に安保理改革なくして国連改革は完成しないと考えており、今次総会中の進展を目指し、具体案を模索している旨述べた。また、改革の文脈で、平和構築、人道危機への新たな取組につき言及し、これらの分野での国連の機能強化のため拠出を決定した旨伝達した。これに対し、アナン事務総長より深甚なる感謝の意が表された。

(2) また、大臣より、国連分担率に関し、衡平かつ公正なものとなることが必要、不公平な負担には国民の強い不満がある、次期分担率については、既に提出した日本案を堅持して臨む旨述べた。

3.安倍官房長官との会談(17日、17時45分から40分間)

 上述の総理、大臣とのやりとり以外に以下のやりとりがなされた。

(1) 国連改革の文脈で、アナン事務総長より人権理事会に言及があったことを受け、安倍官房長官より、日本は人権理事会の理事国に選出されており、同理事会の場等において、北朝鮮の拉致問題について国際社会に提起していきたい旨述べた。

(2) また、安倍官房長官より、北朝鮮が六者会合の場に戻ることを期待している、我が国としては北朝鮮に対し「対話」と「圧力」との基本方針で臨んでいる、核問題や拉致問題を包括的に解決することにより、日朝国交正常化に繋げたい旨説明した。また、日中・日韓間ではそれぞれ1日1万人以上の人の交流があり、両国との関係は、経済や文化の面を中心に極めて緊密である旨述べた。これに対し、アナン事務総長より、説明を多とする、日中・日韓関係の良好な維持を通じ、日中韓が共に世界においてより重要な役割を果たすようになることを期待している旨述べた。

II.主要行事の概要

1.グローバル・コンパクトとの会合(18日9時45分から50分)

 UNIC東京と外務省の共催で、グローバル・コンパクト・ジャパン(GCJN)の24団体(23企業及び川崎市)とNGO1団体、アカデミック・ネットワーク代表、ニューヨークのグローバル・コンパクト・オフィス代表が参加し、冒頭の記念写真撮影に続き、会合が行われた。

(1) 会合では、GCJN活動概要の紹介が行われ、アナン事務総長より、1)GCJNメンバーは、リーダーとして誇りを持ち企業活動の中でGC原則を実施してもらいたい、2)ビジネス・パートナー、中小企業、市民社会組織等多様なステークホルダーに対してもGC普及・参加拡大を働きかけてほしい、3)企業としてのコア活動及びそれ以外の活動を通じて、ミレニアム開発目標達成に貢献していることを認識してほしいとの発言があった。

(2) その後、5団体(三井物産株式会社 、株式会社 リコー、富士ゼロックス株式会社、川崎市、株式会社 東芝)からそれぞれのGC活動の紹介があり、これを受けてアナン事務総長より、1)国際社会の課題解決のためには、幅広いパートナーと連携することが重要であるという観点からGCJNが幅広い分野・業種から構成されていることを歓迎、2)任期最後の年に日本におけるGC活動を知り、GCの前進を実感することができたとのコメントがあった。

2.千玄室日本・国連親善大使主催茶会(18日11時30分から30分)

 裏千家東京道場において、千玄室日本・国連親善大使主催によるアナン事務総長夫妻を招いて茶会が行われた(塩崎副大臣夫妻が陪席。事務総長としてお茶会に出席したのは04年に続き2回目)。茶室では、千玄室大使より、お茶の文化等に関する説明が行われた後、カメラ撮りを交えながら、終始和やかに英語で懇談が行われた。最後に千玄室親善大使とアナン事務総長との間で贈り物の交換が行われ会合を了した。

3.東京大学名誉博士称号授与式と記念講演会(18日15時00分から2時間)

 東京大学の安田講堂においてアナン事務総長の国連事務総長としての功績を讃える名誉博士称号が授与された。引き続き、同大学において、約1000名の聴衆を前に記念講演会及び学生との間で質疑応答が行われた。

(1) 同講演の中で事務総長は、広島、長崎が、昨年原爆投下から60周年を迎えたことに言及した上で、核軍縮・不拡散に向けた我が国の役割に期待を示した。特に、核兵器を生産せず、保有しないという原則にこだわりながら、国家として偉大な成功を収めた日本は世界に力強いメッセージを送ったとして、我が国を称賛する発言があった。また、拉致問題についても言及があり、日本と北朝鮮が拉致問題を完全に解決することを期待する旨言及があった。さらに、イラン核問題については、安保理での協議が交渉による解決に向けた新たな弾みとなることへの希望が示された。安保理改革については、安保理の改革なくして国連改革は終わらないとの言及があった。

(2) 講演後、学生との質疑応答が行われ、その中で、学生に対して、物事を変えていくには、まず周囲の環境に参加し、諦めずに行動するようにとのメッセージが送られた。

4.記者会見(18日17時45分から45分間)

 アナン事務総長は全日程を終え、日本記者クラブにおいて記者会見を行った。事務総長は、冒頭、今回の訪日は非常に生産的な訪問であったとの発言があった。引き続いて行われた質疑応答では、事務総長より、安保理改革、次期事務総長選挙、中国、韓国等近隣国との関係、北朝鮮の核および人権問題、イラク復興支援およびイラク戦争に対する評価、PKO、核不拡散等に関する質疑応答がなされた。

(参考) アナン事務総長訪日日程
日付 内容
5月16日 羽田着
5月17日 国連改革議連との会合
公明党との会合
小泉総理表敬
安倍官房長官との会談
麻生外務大臣との会談、夕食会
5月18日 グローバル・コンパクトとの会合
千玄室国連親善大使主催茶会
天皇皇后両陛下謁見
東京大学講演会
記者会見
5月19日 成田発
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