総理大臣

グローバル・サプライチェーン・セキュリティに関する日米共同声明(仮訳)

平成24年5月1日

英語版

 日米両国は,長期にわたる同盟国及び主要な貿易相手国として,安全で効率的な物流について重要な利害を有し,グローバル・サプライチェーンに対するテロリズムや自然災害によって引き起こされる破壊的な脅威に対する認識を共有している。

 日米両国は,日本の生産拠点やインフラのみならずグローバル・サプライチェーンに対して深刻な影響を与えた東日本大震災,また,2010年に発生した米国向け航空機爆破未遂のように,グローバル・サプライチェーン・セキュリティにおける間隙を不当に利用した,9.11テロ後のいくつかのテロ未遂事件を経て,我々の安全保障,経済的繁栄,及び生活のあり方に悪影響を与えるような人為的な,また自然による破壊に対し,更なる対処を行う喫緊の必要があるとの認識で一致した。

 日米両国は,グローバル・サプライチェーンの強化に向けた取組は,官民パートナーシップ及び合法的な通商と潜在的な脅威を峻別するための事前情報・技術を活用したリスクに基づくアプローチを前提として,貿易促進及びセキュリティ強化の両立の重要性が反映されたものであるべきであると確信している。この共通の信念に基づき,日米両国は,米国のC-TPAT制度及び日本のAEO制度の相互承認取決めの策定及び実施などの共同の取組を通じて,この分野の国際協力におけるロールモデルを提示してきた。

 日米両国は,税関,輸送,海運安全におけるこれまでの両国間協力に加え,グローバル・サプライチェーンを構成する,陸海空の環境における物品,輸送,施設及び拠点が,より強固でより回復力の強いものとなるように,両国の協同の取組を強化する意思をここに表明する。

 日米両国は,共同の取組をさらに前進させるため,以下の取組を行う。

  1. (1) サプライチェーンの安全確保を一層強化し,二国間の貿易を促進させるため,米国のC-TPAT制度及び日本のAEO制度の相互承認をさらに深化させる。
  2. (2) 航空貨物セキュリティ相互認証にかかる協議を加速化することにより,旅客機に搭載された航空貨物に対する脅威に対応するための航空当局の取組を強化する。
  3. (3) 国境,港湾,海運及び航空における安全強化のため,可能な範囲内で,アジア太平洋地域における地域的キャパシティ・ビルディングに取り組む。
  4. (4) グローバル・サプライチェーン・セキュリティの強化に向けた,新技術の開発・導入を支援する。
  5. (5) 必要に応じて,関連法執行当局を通じ,拡散対抗措置に関する共同調査を実施する。
  6. (6) 両国の官民セクター間における,対話,情報交換,ベスト・プラクティスの共有を促進する。

 日米両国は,両国による二国間協力は,調整された国際的取組と共になされるべきとの見解で一致している。サプライチェーンは複合一貫輸送という性質を有しており,すべてのモードにおける途切れのないセキュリティを確保するため,関連国際機関や利害関係者間での更なる統合を必要としている。日米両国は,世界税関機構(WCO),国際民間航空機関(ICAO),国際海事機関(IMO),万国郵便連合(UPU),アジア太平洋経済協力(APEC)のグローバル・サプライチェーン強化に向けた取組への支援を強化する意向である。戦略的レベルにおいては,以下の項目の確保が目指される。

  • グローバル・サプライチェーンが,大規模災害・破壊から強い回復力を持つものであること。
  • テロリスト,国際犯罪組織,その他の違法行為主体が,攻撃及び違法な活動を計画・実行するためにグローバル・サプライチェーンを不当に利用しないこと。
  • 輸送拠点や関連の重要インフラなど,サプライチェーン・システムの最も重要な要素が特定され,攻撃や破壊から保護されていること。

 日米両国は,上記の国際機関との連携を通じて以下の取組を行う。

  1. (1) ICAOの航空セキュリティ作業部会のリスク・コンテクスト・ステートメントや,WCOのリスク管理コンペンディウムなどのリスク管理のためのガイドラインの策定及び維持を支援することにより,また,新たな国際的な脅威に取り組むために,WCO及びICAO等他の適切な会議における協議に参加することにより,進化する脅威を特定し,それに対応するための情報共有・分析を改善する。
  2. (2) WCO・SAFE基準の枠組みでの議論に沿った形で,潜在的脅威の選定・特定を促進する出発前情報の堅固でグローバルな要件の発展を支援する。また,危険度の高い航空貨物に関する共通の定義,基準,推奨対応例を発展させる。
  3. (3) 日本において海上コンテナ貨物に係る積荷情報の事前報告制度(24時間ルール)が法制化されたことを踏まえ,積荷情報に係る両国間の情報交換を強化する。
  4. (4) WCOのグローバル・シールド・プログラムを通じて貨物情報を積極的に報告し,また,グローバル・シールド・プログラムへの地域内の参加拡大及び同プログラムの支援を促進することにより,危険物質の違法輸送を阻止する。
  5. (5) 官民協力に基づき,ベスト・プラクティスとしての米国のC-TPAT制度と日本のAEO制度の相互承認を踏まえ,WCO・SAFE基準の枠組みに整合的なAEO制度の発展を進める。
  6. (6) UPUの枠組みの下,国際郵便特有の条件を考慮しつつ,より厳格な事前データ要件を奨励し,基本となるスクリーニング基準を策定し,対応手順を開発することで,国際郵便のセキュリティを強化する。
  7. (7) APEC及びWCO等他の適切な会議において,貿易回復における協働及び情報要請にかかる国際基準の確立を先導する。

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