小泉総理大臣

小泉総理のインド及びパキスタン訪問について
(概要と成果)

平成17年5月9日

I. 滞在日程

滞在日程
日付 内容
4月28日(木曜日) 東京発ニューデリー着
4月29日(金曜日) ラージガートでの献花、中・高等学校訪問
カラーム印大統領への表敬
印経済団体主催昼食会
円借款案件視察(デリー地下鉄・建設工事現場)
日印民間関係者との懇談(文化、経済関係者)
日印首脳会談、日印共同声明の署名、シン印首相主催晩餐会
4月30日(土曜日) ナトワル・シン印外相による表敬
ニューデリー発イスラマバード着
首相公邸での歓迎式典
ムシャラフ「パ」大統領との会談及び同大統領主催昼食会
日本企業製品展示会視察
アジーズ「パ」首相との会談、技術協力協定他署名式典、同首相主催晩餐会
5月1日(日曜日) イスラマバード発(欧州訪問へ)

II. 概要と成果

1.インド

 マンモハン・シン首相との会談では、日印グローバル・パートナーシップに戦略的方向性を付加し、二国間協力をアジア及び世界での協力に拡大していくことに合意。日印共同声明「アジア新時代における日印パートナーシップ~日印グローバルパートナーシップの戦略的方向性~」とその行動計画である「8項目の取組」を発出。

(1)首脳会談
 両首脳は、アジアの新時代にアジアにおける責任と能力ある主要国として、二国間関係強化、アジア地域の平和と繁栄の確保、国連改革の実現等、国際的な課題等について議論。

(イ)二国間協力
 両首脳は、日印関係の潜在力を現実のものとする重要性について認識を共有。シン首相からは、特にインフラ、安保分野、テロ、エネルギー安全保障、学術・文化、IT等の分野における協力を進めたい旨述べた。これに対し、総理は共同声明の中身を実行に移すことが重要であり、環境分野でも協力していきたい旨述べた。

(ロ)アジア協力・地球規模の課題での協力
 シン首相より、日印が協力し、両国が享受する繁栄をアジア全体そして国際社会全体に広げる努力が必要、両国は既に国連に多大な貢献をしている、安保理改革に関しG4としての協力関係が進んでいることに満足している旨述べた。これに対し、総理からは、アジア、国際社会において日印が協力すべき分野は多い、G4が結成されたことは日印関係にとって画期的であった旨述べた。また、総理は、現在の国際情勢に応じた改革を実施すべきであり、この機会を逃すべきではない旨述べた。

(ハ)地域情勢
 総理より、日中関係に関し、日中国交正常化以来、日中間の経済関係が現在ほど活発な時はなく、日中友好関係の維持・強化が重要である旨述べた。これに対し、シン首相からは、印中関係について、4月の温家宝首相訪印等につき説明があった。
 また、シン首相から、パキスタン、スリランカ、ネパール及びバングラデシュとの関係について言及し、小泉総理からは、最近の印パ関係改善に向けた動きを賞賛したい旨述べた。

(2) カラーム大統領表敬
 総理は、大統領を表敬し、「戦後の日印関係は極めて友好的に推移し、今次インド訪問に際しては、インド政府及び国民の皆さんより暖かい歓迎を受け、感謝している。日印関係の潜在的可能性は高く、そうした可能性を顕在化していけるよう、自分としても努力していくつもりである。」と述べた。
 これに対し、大統領は、「小泉総理のお言葉を歓迎したい、日印間は単に友好的関係が存在するというだけでなく、貿易、文化交流等多岐にわたって関係を緊密化させるべきであろう。日印間の貿易総額は現在40億ドル台にとどまっているが、これを5年以内に200億ドルないしは300億ドルに拡大していく可能性が十分あると考える」と述べた。

(3) インド経済団体主催昼食会への出席
 総理はインド経済団体主催昼食会に出席し、スピーチにおいて、日印が力強く、繁栄する両国をお互いに必要としていることを指摘し、「アジアにはインドという日本の友がいることを改めて強調したい」と述べた。また、総理は、日印が国際社会の課題に取り組んでいく上で戦略的な利益を共有しており、「日印グローバル・パートナーシップ」を発展させていく上での中心的な課題は経済関係の強化であり、現在の前向きな動きが進展するよう、両国ビジネス界に期待している旨述べた。
 なお、昼食会の同席者(カマル・ナート商工大臣等)から、日印貿易量を今の約45億ドルから3年間で100億ドルに拡大すべきである旨の発言あり。

(4)視察等
 総理は、印から強い謝意が表明されたODAに関連して、首都の交通混雑緩和に資する象徴的案件(デリー地下鉄)を視察。また、ラージガートへの献花、中・高等学校への訪問及び日印民間関係者との懇談を実施。

2. パキスタン

 小泉総理は、ムシャラフ大統領及びアジーズ首相と会談し、テロとの闘い等で重要な役割を果たし、穏健かつ近代的なイスラム国家の樹立を目指すパキスタンを引き続き支援する旨、及び円借款を再開する旨伝達。新たな段階に入った二国間関係を政治・経済面を含む多方面で一層強化することを確認し、今後の二国間関係の展望を示す初の政治文書となる日本・パキスタン共同宣言「日本・パキスタン関係の新たな展望~新たな、幅広い、そして強靱な関係へ向けて~」を発出。

(1)ムシャラフ大統領との会談

(イ)テロとの闘い
 総理より、大統領がテロとの闘いで毅然とした態度で臨んでいることに敬意を表した。大統領は、引き続きテロとの闘いに取り組む決意を述べるとともに、貧困撲滅等テロの根本原因に対処する必要性を強調し、雇用促進、投資拡大等の面に対する支援への期待を表明。これに対し、総理は、パキスタンの取組及び安定的発展のため、我が国が経済協力を通じた支援を行うこと及び円借款の再開を伝達。

(ロ)グローバルな課題

(i)総理から、軍縮・不拡散問題に対する我が国の立場を説明。大統領は、カーン博士が関わった拡散問題は博士個人の行動であり、軍や政府の関与はないと説明するとともに、再発防止体制の整備及び管理の徹底を引き続き図り、新たな情報があれば速やかに共有する旨述べた。また、両者は核廃絶という目標についての認識を共有。

(ii)国連改革については、総理から、安保理改革を含む国連改革の必要性及び我が国の立場を説明。大統領は、常任理事国の拡大は、原則の問題として賛成できないが、日本には好意的な気持ちであると述べた。

(2)アジーズ首相との会談

(イ)二国間関係

(i)総理は、引き続きパキスタンを支援していく、その一環として円借款を再開する旨述べた。アジーズ首相からは、パキスタン国民及び政府はこれまでの日本の技術協力・資金協力に心より感謝している旨述べ、パキスタン政府発行のODA50周年記念切手を総理に贈呈。また、日本からの技術協力の拡充についても要請。

(ii)アジーズ首相から、日本からの貿易・投資の増加及び観光客の増加に期待する旨述べた。小泉総理からは、二国間関係を政治・経済面も含め多方面において強化していきたい旨述べるとともに、観光振興については、お互い協力していきたいと述べた。

(ロ)その他

(i)アジーズ首相から、パキスタンが関与している国際的な天然ガスパイプライン構想につき日本の協力を期待する旨述べ、総理からは、経済発展と環境問題の両立のために科学技術振興が重要である旨述べた。

(ii)総理より、アジーズ首相が愛・地球博のパキスタン・ナショナルデーに合わせて訪日することを期待する旨述べた。

(3)視察
 総理は、アジーズ首相とともに、パキスタンで生産されている日本企業製品の展示会(自動車や家電製品等)を視察。展示会では、企業関係者の話を聞き、最近のパキスタン経済の動向や両国間の経済関係の動向等につき意見交換を実施。

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