小泉純一郎日本国内閣総理大臣とパルヴェーズ・ムシャラフ・パキスタン大統領及びショーカット・アジーズ首相は、日本及びパキスタンの緊密かつ協力的な関係の重要性を再確認し、次のとおり決意を宣言する。
日本とパキスタンは、1952年の外交関係樹立以来長年にわたり、要人の交流並びに政府及び民間部門における多角的な協力を通じ、緊密な関係を構築してきた。特に、両国の協力関係強化は、2001年の米国同時多発テロ以降の世界的なテロとの闘いにおけるパキスタンの重要性により、一層強化されてきた。小泉総理の今次パキスタン訪問を契機に、両国は、すべての面において力強い協力を一層拡充させていく新しい段階を迎えた。
日本政府及びパキスタン政府は、国際社会の中においてそれぞれが果たす重要な役割を相互に認識するとともに、共に関心と懸念を有する課題に対し、両国がより一層緊密に協力していくことが決定的に重要であるという信念を共有していることを確認する。
日本政府及びパキスタン政府は、アジアの将来、特にテロとの闘い、不拡散、経済面での協力、民主的価値、人権、法の支配、市場経済の普及に共通の関心を有す。両国の共通の目標及び利益に照らし、日本とパキスタンは、アジアの安全、安定及び繁栄を確保していくために、様々な課題について緊密に協力していく強い決意を再確認する。
日本は、南アジア、中央アジア及び中東の交差点に位置するパキスタンの地政学的重要性を認識する。また、日本は、テロとの闘いにおいてパキスタンが果たす役割、ムシャラフ大統領の「啓蒙的穏健主義」の原則の下での民主的かつ近代的イスラム国家の建設を目指す努力を高く評価し、これらの分野での進展を歓迎する。
パキスタンは、50年を超える日本の寛大な経済協力及び技術支援に感謝するとともに、特に発展途上国との協力、国連平和維持活動への参加など、国際社会の安定と繁栄の推進に日本が果たしている重要な役割を高く評価する。
日本政府及びパキスタン政府は、以上のような共通の認識の下、日本・パキスタン関係の新たな段階における共通の挑戦への取組に向けた協力について次のとおり宣言する。
日本とパキスタンは、テロリズムは依然として国際社会が直面する最重要課題の一つであるとの認識を共有するとともに、両国が相互に、また、考えを同じくする国々と共にテロ対策協力を維持することを決意する。
日本は、パキスタンの「テロとの闘いの前線国家」としての努力及び将来にわたる決意を高く評価する。
日本政府及びパキスタン政府は、インド洋において、不朽の自由作戦海上阻止活動に参加しているパキスタン艦船に対し、日本自衛隊艦船が給油・給水を行うことで示される両国間のテロ対策協力を引き続き強化していく。
日本及びパキスタン間の対テロ対策協力は、情報交換並びに能力向上支援を通じて強化される。
日本は、常に関心を有している南アジア地域及びアジア情勢において、パキスタンが果たしている決定的に重要な役割を高く評価する。
日本は、パキスタンとインドの立場の違いを平和的に解決することを目的として両国間で行われている、信頼醸成措置、カシミール問題及びその他の二国間問題を含む複合的対話プロセスを歓迎し、その成功を期待する。また、日本は、バス運行の開始やムシャラフ大統領の成功裏のインド訪問など、この対話の過程から生じた最近の進展を歓迎する。
日本とパキスタンは、南アジア地域協力連合(SAARC)が南アジア地域に安定と繁栄をもたらす潜在力に対する認識を再確認し、SAARCを巡る情況が正常な状態に回復されることを心より希望する。
日本政府及びパキスタン政府は、アフガニスタンの安定と発展が地域の安定に決定的に重要であることを認識し、アフガニスタンに対する支援を継続する。
日本政府は、パキスタンが国際社会において果たす決定的に重要な役割及び数多くの国内改革により達成されたパキスタンの経済改善を考慮し、チェナブ川下流灌漑用水路改修計画に上限約125億円、給電設備拡充計画に上限約38億円、計約164億円に上る円借款の供与を決定した。
2005年4月30日、日本政府及びパキスタン政府の間で、技術協力協定に署名が行われた。これは、円滑な技術協力の実施を通じてパキスタンの経済、社会開発の一層の進展に貢献するものである。
2005年4月30日、両国政府は、無償資金協力2案件、すなわちファイサラバード上水道整備計画約32億円とタウンサ灌漑用堰計画約52億円に関する公文を交換した。これにより、日本政府は、2001年に表明した無償資金協力3億ドルの約束を達成した。日本は、今後ともパキスタン国民の生活向上のための事業への支援を行っていく。
パキスタンは、1954年以来の日本の寛大な技術協力及び資金協力に心より感謝し、2004年、その感謝の印として記念切手を発行した。パキスタン政府は、引き続き日本の開発援助をパキスタン国民の最善の利益となるよう使用する約束を維持する。
日本政府及びパキスタン政府は、大量破壊兵器及びその運搬手段に関する軍縮及び不拡散は国際社会が直面する喫緊の課題であることを認識し、国際社会が一致してこの課題に取り組むことの重要性を再確認する。
日本政府及びパキスタン政府は、国際的な軍縮・不拡散の枠組みを強化するとの確約を再確認する。その関連で、日本は、NPT及びCTBTに関する日本の立場を繰り返す一方、本件についてのパキスタンの立場、並びに一方的に核実験の停止を遵守するとのパキスタンの決定に留意する。
両国政府は、大量破壊兵器関連技術と装置の拡散に関する国際的地下ネットワークに対する重大な懸念を共有するとともに、全ての国にとっての協力的な努力を通じてそのようなネットワークの全容解明・解体の必要性を強調する。
日本政府は、核開発計画問題、ミサイル開発問題、拉致問題を含む北朝鮮問題について包括的に解決することが極めて重要との日本の立場を繰り返す。パキスタン政府は、北朝鮮の核計画及び他の問題に関する六者協議を支持するとともに、全ての問題が平和的手段によって解決されることを希望する。また、パキスタン政府は、核兵器の存在しない朝鮮半島を支持する。
日本政府及びパキスタン政府は、協議を継続していくとともに、輸出管理等の分野における具体的な協力を進めていく。その関連で、両国政府は、日本・パキスタン安全保障対話の文脈の中で、二国間の軍縮・不拡散協議を継続していく。
日本政府及びパキスタン政府は、国連が21世紀の課題に効果的に対応できるようにするための包括的な国連改革の必要性を強調する。安保理改革は、全般的な改革アジェンダの重要な構成要素であるとともに、全ての国連加盟国にとり死活的な重要性を有していることから、安保理は一層効果的で、信頼性があり、代表性を示すものにならなくてはならない。両国政府は、さらに、多国間主義を強化し、国際の平和と安全及び持続可能な開発の維持・推進のための国連の役割を再強化し、意思決定過程における全ての国連加盟国の更なる参加とアジア諸国の一層の参画を確保するために、国連改革を推進する重要性に留意する。
日本政府は、常任・非常任双方の拡大を通じて、安保理が一層効果的で、信頼性があり、代表性を示すものにならなくてはならないとの見解を表明する。パキスタン政府は、国際の平和と安定の維持及び開発の分野における国連での日本の役割が増大していることを評価する。パキスタン政府は、安保理改革は、非常任理事国の枠の適切なる拡大を通じて実現できるとの意見を表明する。
両国政府はこの問題について、さらに建設的な協議を継続する。
日本政府及びパキスタン政府は、これまでの首脳の相互訪問及び様々なレベル・分野での活発な対話は、両国の利益になってきたとの認識を共有する。このことは日本・パキスタン関係の道筋に活力を与える上で重要な役割を果たしてきた。両国政府は、政務協議、安全保障対話、ハイレベル経済協議及び官民合同経済対話を、それぞれ定期的に継続していく。また、両国は、両国首脳を含むハイレベルの交流を継続していく。
イスラマバード
2005年4月30日