安倍総理大臣

安倍総理のインドネシア、インド、マレーシア訪問に関する内外記者会見記録

平成19年8月24日

(英語版はこちら)

 安倍総理は、24日午後5時10分より約30分間、インドネシア、インド、マレーシア訪問に関する内外記者会見を行ったところ、概要以下の通り。また、英文仮訳を別添する。

1.冒頭発言

 私は、今回、インドネシア、インド、マレーシアの3カ国を訪問した。今年は、インドネシアに事務局を置くASEAN結成からちょうど40年、そしてマレーシアとの外交関係開設から50年、そして日本とインドの交流年にあたる、今年、この節目の年に、この3カ国を訪問できたことは誠に意義深いと思う。
 今回の訪問を通じて、貿易・投資面や環境技術面でも我が国への期待は引き続き大きいと感じた。
 この新しいアジアを、活力とイノベーションに富み、開放的な地域としていくことが重要である。そのため、私は、アジア諸国、なかんずくインドやASEAN諸国と、政治、経済、文化・教育、更には環境・エネルギーといった幅広い分野で、重層的に協力関係を強化していくことが重要であると考えている。今回の訪問を通じて、各国首脳との間でそうした協力関係強化の具体策について合意をみることができたことは大変有意義であった。
 今回の訪問には、経団連の御手洗会長を団長とする延べ250名近くの我が国経済界を代表する方々にご同行頂いた。この経済ミッションは各国で大変熱い歓迎を受けた。これは、我が国が正に官民を挙げて各国との協力関係を強めていきたい、深めていきたいという熱意の表れであると受け取ってもらえたと確信している。今後、各国との協力関係を新たな次元に引き上げるべく努力していきたいし、今回のこうした訪問が契機となるものと考える。
 訪問した各国において、私は世界的課題である気候変動問題を取り上げ、私の提案した「美しい星50」に対し、各国首脳より高い理解と評価を頂けたと思う。そして、ポスト京都の実効的な枠組みづくりでも前向きな協力を進めていくことにつき確認した。
 北朝鮮問題については、私より各国首脳に対し、非核化に向けた動きの加速化の必要性、我が国にとって重要な問題である拉致問題の一刻も早い解決の必要性を強調した。そして理解と支持を得ることができた。
 インドネシアでは、日・インドネシア経済連携協定等に署名した。この協定は、両国の経済関係を今後大きく発展させる原動力となろう。また、ASEAN政策に関するスピーチを行い、「思いやり、分かち合う」精神をもって、ASEANの統合・発展を一層支援していくことを表明した。
 インドでは、昨年12月に、シン首相と合意した「戦略的グローバル・パートナーシップ」を具体化し、政治、経済、環境・エネルギー、人的交流、グローバルな場での連携等、幅広い分野での協力を盛り込んだ「ロードマップ」を発表した。また、日印教育交流の深化のため、日印学長懇談会も開催された。インド国会では、アジアの民主主義大国である日印両国の歩みを踏まえて、今後の協力拡大の可能性を訴え、議会の皆様から日本に対する期待が示された。
 ここマレーシアでは、アブドゥラ首相との会談で、二国間関係にとどまらず、地域・国際社会の課題について両国が更に協力していくことを確認した。共通の未来に向けた「変わらぬ友情と広範なパートナーシップ」の構築を謳った共同声明を発表した。
 最後に、今回訪問した各国から大変暖かいおもてなしを頂き、この場を借りて御礼申し上げたい。

2.質疑応答

問1

 安倍総理は今回のインド訪問で「拡大アジア」という概念を打ち出した。その拡大アジアの中で、自由と民主主義という価値観を共有する「日米豪印」4ヵ国の結びつきを強化したい考えだと思うが、このうち日米豪の首脳は来月のAPECで顔を揃える。その機会に初の3カ国首脳会談を行い、総理から今後の定例化を提案するという考えはあるか。また、将来的に日米豪首脳会談にインドを加え、4カ国首脳会談にもっていきたいという考えはあるか。

(総理)

 私は来月のAPEC首脳会合に出席する予定である。その際、日米豪の三カ国による首脳会談が行われるとすれば、自分としても有意義だと考えている。
 日米豪印の対話については、本年5月に、日米豪印の事務レベル会合を行っており、引き続き関係国間で、今後の進め方について、連携・協議を行っていかなければならないと考えている。
 いずれにせよ、アジア太平洋地域の自由と繁栄のために、この地域における様々な枠組みが重層的な形で、各々補完し合い、このような色々な仕組みが重層的に存在することによって地域間の理解が深まり、地域がより平和で安定的なものになっていくと考えている。

問2

 来年、日本はG8サミットのホスト国となるが、G8諸国は総理が提案した「美しい星50」をどのように受け止めているのか。

(総理)

 ドイツのハイリゲンダム・サミットにおいても、気候変動の問題は最も重要な課題の一つであった。G8諸国間において、気候変動にどのように対応するかにつき深い議論を行ってきた。その中において、2050年までに排出量を50%削減するというビジョン・目標は、私が提案した「美しい星50」が掲げている目標でもある。その目標及び日本の提案について真剣に検討していくということが合意され、文章にも盛り込まれた。
 私が提案している「美しい星50」、2050年までに排出量を50%削減することにより、これ以上温暖化が進まないという状況を達成するわけであるが、その際、全ての主要な排出国が入り、実効的な枠組みにしていく、更には、多くの国が参加するために柔軟で多様性のある仕組みにしなければならない。また、経済成長と環境保全を両立させていくことが、「美しい星50」の三原則である。この考え方については、G8の国々においても概ね理解・評価されていると思っている。今回の訪問においても、インドネシア、インド、マレーシアにおいてそれぞれ「美しい星50」について話し合った。特にマレーシアにおいては、私が「美しい星50」を発表した際、アブドゥラ首相はその場におられた。今後ともこの問題についてマレーシアともよく連携していかなければならないと思っている。
 更に、志を同じくする途上国に対しては資金メカニズム、或いは省エネ・環境保全の技術の提供等日本としても協力していきたいと思っている。

問3

 今回の訪問を踏まえ、総理の外交方針につき質問したい。総理は、「主張する外交」を進めてきたが、先の参議院選で与野党が逆転した。総理は、内政においては柔軟な姿勢を示しているが、外交面でもこれまで以上に民主党の声に耳を傾けていくのか。例えば、直近の課題であるテロ特措法の延長問題で修正を含めた柔軟な対応をしていく可能性があるのか、お聞かせ願いたい。

(総理)

 外交政策については、国民の皆様の理解が必要不可欠であると考えている。外交政策を進めていく上においては、国民の理解と支持があって初めて強力な外交を進めていくことができる。当然、野党の皆様とも外交方針については、よく協議をし、また自分達の考えを理解してもらえるよう努力していくことが大切だと考えている。
 自由民主主義、基本的人権、そして法の支配といった、価値を同じくする国々との連携を強化していく、オープンでイノベーションに富むアジアの構築に貢献していく、また、国際的な課題、国際社会の平和と安定のためにも貢献をしていく、これが私が申し上げている「主張する外交」である。やみくもに国益を主張するのではなく、日本は世界において何をすべきか、世界において日本は世界の国々と共に何をしようとしているかということを堂々と主張していくことが「主張する外交」である。今後とも、この基本的方針について、野党の皆様にも話をしていきたい。
 また、テロ特措法については、24名の日本人も犠牲となった、9・11事件に端を発するテロとの戦いについて国際社会が連携して取り組んでいく中で、日本の取り組みが国際社会から期待されている、また、日本の貢献が国際社会から大変評価されている活動を法的に担保しているものであり、日本は、テロ特措法によって、テロとの戦いを進めている。多くの国々が、日本がこの活動を続けていくことを期待している。国際社会からの評価、日本が如何にこの活動を続けていくことが期待されているかということにつき、民主党の皆様にもご理解頂きたい。

問4

 今回、総理はインドネシア、インド及びマレーシアを歴訪されたが、その中で「絆」、より強力なる経済的連携ということを呼びかけられたが、これは、台頭する中国の影響力ということがあっての発言なのか。

(総理)

 ASEANはまさにアジア・世界の成長センターである。発展していくASEAN、安定してさらに統合を深めながら連携を強化し、そして経済が成長していく、この未来あるASEANに対し、日本のみならず、多くの国々が期待をしている。ASEANに対する期待は、日本だけが有しているのではなく、世界の国々が共有していると思う。発展する中国、経済成長する中国は、脅威であるとは思っていない。日本にとっても、アジアにとっても世界にとってもチャンスであると考えている。その上で、中国が地域において、より責任ある役割を担っていくことを期待したい。ASEAN及び中国は決して対立する概念ではない。例えばASEANプラス3において、日中韓が共に語り合い、連携を深めている。更に、EAS東アジア・サミットにおいても、インド、豪州、ニュージーランドを加えた国々との間においても、様々な問題について具体的な成果が生まれようとしている。こうした様々な仕組み、重層的な仕組みが存在することによって、地域がより理解を深め合い、それが発展につながると考えている。

問5

 27日の内閣改造と党役人事についてお聞きしたい。本日、自民党がまとめた報告書によると、参議院選敗因の要因として閣僚の失言等があげられた。今後、国会運営において非常に難しい対応を迫られるが、どのような点を重視して新たな人事に踏み切るのか。

(総理)

 この3カ国訪問中は、これら重要な国々との会談及び外交に全ての神経を集中してきた。人事については、帰国してから最終的に決断をしたいと考えている。これからも日本は改革を進めていかなければ、いつか日本はやっていけなくなってしまう。改革を進め、新経済成長戦略をしっかり進めていくことが必要であり、その考え方は貫いていかなければならないと考えている。それを踏まえて、参議院選の結果があったわけで、様々な反省すべき点は反省をしながら、また景気の活性化にも力を入れていきたい。そうした様々な点を考慮しながら人事を考えていきたい。

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