安倍総理大臣

<仮訳>
日本マレーシア外交関係50周年に際しての共同声明
「変わらぬ友情と広範なパートナーシップ~共通の未来に向けて」

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1.はじめに

 2007年8月24日、安倍晋三日本国内閣総理大臣とアブドゥラ・アフマッド・バダウィ・マレーシア首相は、安倍総理大臣初のマレーシア公式訪問を機に、プトラジャヤにおいて首脳会談を行い、二国間及び地域的・国際的な諸問題について広範な意見交換を行った。安倍総理より、マレーシアの独立50周年に心からの祝意を表明するとともに、マレーシアの今日の繁栄に深い敬意を表した。アブドゥラ首相は、日本からのマレーシアに対する長年にわたる経済協力に深甚なる謝意を表明した。

2.外交関係開設50周年と今後の二国間関係の展望

 アブドゥラ首相は、日マレーシア関係が外交関係開設50周年を迎える節目の年に、また、両国において「日マレーシア友好年2007」の関連行事が行われる中で、安倍総理がマレーシアを公式訪問したことを心より歓迎した。両首脳は、今回の訪問が二国間関係に新たな弾みを与える上で極めて重要な機会となるとの認識で意見が一致した。

 両首脳は、友好及び協力関係の50年を踏まえ、日マレーシア関係の基盤である人材育成分野における更なる協力や緊密な経済関係の一層の緊密化を進めつつ、地域や国際社会が直面する課題に共に取り組んでいくための新たな協力関係を築いていくことで一致した。これを受け、両首脳は、「変わらぬ友情と広範なパートナーシップ」の下、共通の未来に向けて下記の5分野で具体的な協力を進める決意を表明した。

 安倍総理は、二国間関係を一層強固なものとすべく、アブドゥラ首相に対し日本を訪問するよう正式に招待した。アブドゥラ首相は、右招待を喜んで受け入れ、双方の都合の良い時期に日本を訪れたいと述べた。

3.協力推進5分野と具体的協力内容

(1)政治・安全保障分野における協力

 両首脳は、両国の位置する東アジア地域の繁栄を一層確固たるものとすべく、長年の友好関係により培われてきた信頼関係を基盤として、東アジア地域の直面する政治・安全保障分野の課題に対処するため、以下の通り協力を進めることで意見が一致した。

(i)ASEAN統合及び地域協力の促進

 両首脳は、日ASEAN間の対話、ASEAN+3プロセス、東アジア・サミット(EAS)、ASEAN地域フォーラム(ARF)を始めとする既存の地域枠組みにおける一層緊密な協力を通じて地域の統合、平和、安全、安定及び繁栄を推進していくことを改めて確認した。また、両首脳は、ASEANを推進力として東アジア共同体を形成していくという長期目標を再確認した。さらに、マレーシアは、2015年までにASEAN共同体を形成するための開発格差縮小や地域統合推進に向けたASEANの努力に対する日本の継続的な支援を歓迎した。

(ii)ミンダナオ和平

 両首脳は、フィリピンのミンダナオにおける和平の実現は、地域の安定と繁栄を確保する上で極めて重要であることを確認した。安倍総理は、マレーシアを中心とする国際監視団のプレゼンス及びそれが和平プロセスにおいて有意義な役割を果たしていることを賞賛し、アブドゥラ首相は、ミンダナオの復興及び開発への日本の貢献を高く評価した。

 両首脳は、両国が引き続き緊密に連携しつつ、今秋の平和構築セミナーの開催や、ミンダナオにおける行政分野の人材育成等を通じ、ミンダナオの復興開発に関する両国間の協力を更に進めることで意見が一致した。

(iii)平和構築に関する協力

 両首脳は、両国の平和構築分野での積極的な取組に対して相互に敬意を表するとともに、国連PKO等に関する情報・意見交換の促進及び平和構築を担う人材育成のための連携を推進していくことで意見が一致した。

(iv)海上安全の確保

 両首脳は、マラッカ・シンガポール海峡を含む海上交通路(SLOC:sea lanes of communication)における、航行安全確保の重要性についての認識を表明した。安倍総理より、マレーシアの主権、主権的権利、管轄権、及び領土保全に十分配慮しつつ、航行安全に関する協力を更に進める意図を表明した。アブドゥラ首相は、マレーシアの海域及びマラッカ・シンガポール海峡における航行安全をその努力によって引き続き確保するというマレーシアのコミットメントを再確認した。

(v)テロ対策に関する協力

 安倍総理は、マレーシアが、本年9月にクアラルンプールにおいて第2回日ASEANテロ対策対話を共催する予定であるなど、テロ対策分野で積極的な貢献を行っていることを高く評価した。両首脳は、テロ対策における地域協力の重要性を改めて確認し、ASEAN加盟国がこの分野における協力を強化すべきとの意見で一致した。

(2)経済分野における協力

 両首脳は、長年にわたる緊密な経済関係が両国関係の基盤を形作ってきたことを認識し、昨年発効した日マレーシア経済連携協定を着実に実施していくことを改めて確認した。また、地域の繁栄をより確固たるものとするため、日ASEAN包括的経済連携協定の早期締結、東アジア包括的経済連携(CEPEA)の研究、東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)の時宜を得た設立等の地域協力の促進が重要であることについて意見が一致した。アブドゥラ首相は、ERIAに関し、マレーシアがその設置に適当な環境を提供することができると述べた。

 アブドゥラ首相は、今回安倍総理の訪問に併せて日本のハイレベル経済ミッションがマレーシアを訪問したことに心からの歓迎の意を表し、日本の経済ミッションを迎えて日本マレーシア・ビジネス・フォーラムが開催されることを歓迎した。両首脳は、日本の経済ミッションの今次マレーシア訪問を契機として、日・マレーシア経済関係が一層強化されることへの期待を表明した。

 アブドゥラ首相はまた、マレーシアの南部及び北部の経済地域の開発に現在以上に日本が関わり、開発に伴うビジネスの機会を活用することを期待する旨表明した。

(3)人材育成分野における協力

 安倍総理は、東方政策が本年25周年を迎えたことに心からの祝意を表明し、25年間に約1万1千人のマレーシア人の学生及び研修員を日本に派遣したマレーシア政府の継続的な努力に深い敬意を表明した。アブドゥラ首相は、東方政策はマレーシアの経済発展に極めて重要な役割を果たした旨述べ、日本の協力に深甚なる謝意を表明した。両首脳は、東方政策を通じて築き上げられた日マレーシア両国国民間の強固な紐帯が二国間関係の重要な基盤を形成していることを改めて確認した。

 アブドゥラ首相は、マレーシア政府が今後もさまざまな分野での研究や研修のため、東方政策の下での学生や研修生の日本への派遣を続けると述べた。安倍総理は、日本は、今後もマレーシア政府の東方政策の下での人材育成に協力と支援を続けることを確認した。

 また、両首脳は2007年1月にセブで開催された第2回東アジア・サミットで安倍総理が表明した「21世紀東アジア青少年大交流計画」(JENESYS Programme)の着実な実施を始め、青少年を中心とする人的交流を強力に推進していくことを確認した。

 両首脳は、ASEANの人材育成の拠点としてのマレーシア日本国際工科大学(MJIUT)の重要性を再確認しつつ、同大学の早期設立に向けて引き続き協力していくことを確認した。また、両首脳は、MJIUT設立に向けての準備作業を通じて、両国大学間の交流が活発化していることを歓迎した。

(4)環境・エネルギー分野における協力

 両首脳は、気候変動問題を含む環境・エネルギー問題が全世界的な課題となっていることを認識し、環境・エネルギー分野における協力を一層推進していくことで意見が一致した。

 両首脳は、安倍総理が2007年5月に発表した「美しい星50」で提案されているとおり、大気中の温室効果ガス(GHG)の濃度を安定化させるため、「世界全体の排出量を現状に比して2050年までに半減する」ことの必要性について一致した。また、アブドゥラ首相は、「共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力」 の原則を尊重しつつ、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)下で全ての国が参加する2013年以降の実効的な枠組みの構築を求める安倍総理のイニシアティブを高く評価した。

 両首脳は、2007年1月に開催された第2回東アジア・サミットにおいて発出された「東アジアのエネルギー安全保障に関するセブ宣言」に則り、エネルギー効率向上のための目標及び行動計画を積極的に策定することの重要性を再確認した。両首脳は、相互の利益のため、二国間で行われているエネルギー協力を歓迎した。これは、水素化分解によるバイオ燃料製造についての協力を含む。安倍総理は、第2回東アジア・サミットで同総理が表明したクリーン・エネルギーと持続可能な成長のための日本のエネルギー協力イニシアティブに基づく協力等、マレーシアとエネルギー協力を進めていく意向を表明した。アブドゥラ首相はこれを評価し、歓迎した。

 両首脳は、世界有数の熱帯林と生物多様性を有しているマレーシアにおいて、持続可能な森林経営を促進することは、温室効果ガス(GHG)の排出緩和及び生物多様性の保全の観点からも重要であるとの認識を共有し、国際熱帯木材機関(ITTO)等の多国間協力を通じ、これらの分野における協力を促進していくことで意見が一致した。

 両首脳は、地域の公害対策に関連する、気候変動へのコベネフィッツ・アプローチ(co-benefits approach)の有効性を認識した。

(5)国際場裡におけるその他の協力

(i)アフリカ

 両首脳は、日本及びマレーシア両国の様々な分野における協力関係がマレーシアの発展を促進したことを想起し、貿易と投資がアフリカ発展に大きな役割を果たすとの認識の下、アジアにおける開発の成功の経験をアフリカで活かすことの重要性について意見が一致した。安倍総理は、1)アフリカにおける経済成長の加速化、2)「人間の安全保障」の確立、3)環境・気候変動問題への取組に国際社会の知識及び資金を結集することをねらいとして、第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)を2008年5月に日本で開催する旨説明し、マレーシアの協力を求めた。アブドゥラ首相は、同会議の意義に賛意を表明し、その成功に向けて積極的に協力していく旨答えた。

(ii)北朝鮮

 両首脳は、六者会合の2005年9月19日の共同声明及び2007年2月13日の「共同声明の実施のための初期段階の措置」を速やかに実施することを通じ、北朝鮮が非核化に向けた行動を継続すべきであることについて意見が一致した。アブドゥラ首相は、六者会合において採択された共同声明の実施に対する強い支持を確認した。両首脳は、国連安全保障理事会決議第1695号及び第1718号の着実な履行の重要性を強調した。両首脳は、北朝鮮に対し、拉致問題を含め、国際社会が有する安全保障上及び人道上の懸念に積極的に取り組むよう強く要請した。

(iii)国連改革

 両首脳は、国際連合の改革、特に安全保障理事会の改革の早期実現の重要性を強調した。また、アブドゥラ首相は、拡大した安保理において日本が常任理事国となることへの支持を改めて表明した。

 2007年8月24日、プトラジャヤにて署名した。

日本国内閣総理大臣
安倍 晋三
マレーシア首相
アブドゥラ・アフマッド・バダウィ
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