安倍総理大臣
安倍総理大臣の中東,ジブチ訪問(概要と評価)




1.訪問日程
(1)バーレーン(8月24日及び8月25日)
ハリーファ首相との会談・署名式・共同記者発表・同首相主催晩餐,日バーレーン経済界の懇談会,ミラー米海軍第五艦隊司令官兼連合海上部隊司令官による表敬,ハマド国王との懇談・勲章の授与・同国王主催午餐,サルマン皇太子との電話会談等。
(2)クウェート(8月26日)
ジャービル首相主催歓迎式典・歓談,ナッワーフ皇太子との会見,ガーニム国民議会議長との会談,クウェート商工会議所主催経済セミナー,ジャービル首相との会談・署名式・晩餐等。
(3)ジブチ(8月27日)
自衛隊活動拠点の視察,ゲレ大統領との会談,オスマン・フクザワ中学校校長等日・ジブチ関係者からの表敬等。
(4)カタール(8月28日)
日カタール・ビジネスフォーラムでの冒頭挨拶,タミーム首長との会談,アブドッラー首相兼内相との会談・署名式・同首相主催午餐,内外記者会見等。
2.全体概要と評価
(1)今回の訪問の狙いと評価
ア.今回の中東訪問の狙いは,(ア)日本と中東諸国との「安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップ」の一層の強化・拡大,並びに,(イ)過酷な環境下で海賊対処行動に従事する自衛隊の激励及びジブチとの関係強化。
イ.日本との外交関係樹立40周年や東日本大震災後の温かい支援等によって示された各国との強い絆に基づき,「安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップ」を構築し,資源・エネルギーを中心とする関係を超えて,幅広い分野での経済面での協力,更には政治・安全保障,文化・人的交流といった重層的な関係を築いていくことを確認。
ウ.2007年の安倍総理の中東訪問の際に捲いた種は一つ一つ結実。今後とも,教育,インフラ,医療,農業など幅広い分野で,官民の力を結集して,日本の技術やノウハウをもって貢献するとの方針を確認。
エ.各国からは,日本経済が成長著しい中東の活力を取り込んで再生し,日本が中東地域で経済的のみならず政治的にもより一層積極的な役割を果たしていくことへの強い期待が示された。また,我が国自衛隊への高い評価を得ることもでき,地域の平和,安定と繁栄にさらに貢献していく必要性を再確認。
オ.このように,本年5月の安倍総理の中東訪問及びTICADVに続き,中東・アフリカ地域との関係強化に向けて,大きな一歩を踏み出すことができた。また,今次訪問は,日本と湾岸諸国との新しい関係構築に向けた歴史的な訪問となった。
(2)安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップ
ア.「協働」:政治・安全保障の分野での関係強化
日本として,この地域の安定に一層の政治的役割を果たすとの観点から,政治対話を強化し,安全保障対話を新設し,防衛交流を強化する等,地域の安定化に向けて緊密に連携することで各国首脳と一致。
イ.「共生と共栄」:経済関係の拡大・深化
中東諸国は,エネルギー資源に恵まれ,急速な経済成長の中で国家建設を進めており,日本の技術やノウハウに対して多大な関心。エネルギー分野のみならず,インフラ建設の分野等,双方の産業界との相互発展的な協力を政府としても支援。本年5月の中東訪問に引き続き,今回も農業,医療を含む多くのビジネス・リーダーが共に各国を訪問。湾岸諸国の関係者との面会,日本の果物のプロモーションの機会を設け,その質の高さをアピール。改めて,官民が連携して進める本格的な経済外交に大きな手ごたえ。
ウ.「寛容と和」:教育,文化・人的交流の分野の協力強化
向こう5年で中東諸国と約2万人の研修実施と専門家派遣を行うという目標を念頭に,教育関係者も共に各国を訪問。各国からは日本の教育システムへの高い評価が示され,教育・科学技術分野の協力や日本式教育の普及,日本への留学生の増加,人材育成の強化で一致。
3.各国での概要と成果
(1)バーレーン
ハリーファ首相及びハマド国王との会談後,「日本とバーレーン王国との間の包括的パートナーシップの強化に関する共同声明」を発出。各分野での具体的な成果は以下のとおり。
ア.「協働」
外交・防衛当局間の安全保障対話を新設し,地域の安定化に向けて緊密に連携することで一致。また,テロや組織犯罪防止のため,マネーロンダリング等に関する情報交換の覚書に署名。なお,ミラー米第五艦隊兼連合海上部隊司令官からは,日本のこの地域での海賊対処,掃海活動について高い評価を得た。
石油開発・精製,保健・医療,農業分野の協力等,様々な分野での協力を確認(医療分野での協力に関する覚書,農業協力に関する覚書,臨床研究に関する合意文書に署名)。
JICEを通じた人材育成に加えて,バーレーン側のニーズに基づきJICAによるコスト・シェア技術協力の実施を検討することで一致。
日本側の働きかけにより,今次訪問において,バーレーンにおける日本産食品の輸入規制解除が実現。
ウ.「寛容と和」
バーレーンの教育分野での取組を支援するため,日本語教育や専門家派遣等を中心に協力することで一致。
日本側による,外交・公用旅券所持者の外交・公用目的又は短期滞在目的の入国について相互査証免除に向けた検討を歓迎。
(2)クウェート
ナッワーフ皇太子(首長代理)及びジャービル首相との会談後,「日本とクウェート国との間の安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップの強化に関する共同声明」を発出。各分野での具体的な成果は以下のとおり。
ア.「協働」
政府間合同委員会の早期開催,外務省間政策対話の強化,外交・防衛当局間のハイレベルでの安全保障対話の新設で一致。
クウェートの第2次5か年計画に基づく大規模インフラ整備に,技術・維持管理の両面で強みを有する日本が官民を挙げて協力することで一致(クウェートの国家開発に関する覚書に署名)した他,水,エネルギー,交通分野のインフラ整備で協力することを確認。 医療交流・協力,農業,原子力安全・災害管理,教育,人材育成分野の協力等,様々な分野での協力で合意。
ウ.「寛容と和」
高等教育・科学研究分野での協力に関する覚書に署名。
日本側による,外交・公用旅券所持者の外交・公用目的又は短期滞在目的の入国について相互査証免除に向けた検討を歓迎。
(3)ジブチ
自衛隊活動拠点にて視察及び自衛隊員に対する訓示を行った後,ゲレ大統領との間で首脳会談を実施。そのほか,我が国無償資金協力で建設されたフクザワ中学校に対し「安倍文庫」として図書104冊を寄贈。首脳会談の結果概要は以下のとおり。
ア.二国間関係
自衛隊による海賊対処活動へのジブチ側の協力に対する謝意を表明。TICADVへの大統領の出席に対し謝意を表明。
イ.経済協力
TICADVで表明したアフリカ支援策を着実に実施していくとの我が国の考えを改めて説明し,ジブチによるインフラ整備等の努力を引き続き支援することを表明。
電力インフラ(地熱開発事業化への支援,ジブチ市内の電力供給改善に関する調査実施)及び海上保安分野(ジブチ沿岸警備隊に対する巡視艇供与に関する調査実施,海上法執行にかかる専門家派遣実施)での支援を表明。
(4)カタール
タミーム首長及びアブドッラー首相との会談後,「日本とカタール国との間の安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップの強化に関する共同声明」を発出。各分野での具体的な成果は以下のとおり。
ア.「協働」
外務省間政策対話の強化(覚書に署名),安全保障対話の新設,防衛交流の更なる強化で一致。
イ.「共生と共栄」
カタールによるエネルギーの安定供給,石油・ガス開発,インフラ開発,医療,農業分野の協力等,様々な分野での協力を確認(石油・ガス開発に関する2つの覚書に署名)。
ウ.「寛容と和」
日本式教育の普及,日本への留学生数の増加等,教育分野での協力強化で一致。
日本側の一般旅券の査証申請手続の簡素化の実施,外交・公用旅券所持者の外交・公用目的又は短期滞在目的の入国についての相互査証免除に向けた検討を歓迎。