安倍総理大臣

平成25年4月29日
(写真提供:内閣広報室)
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 ロシアを公式訪問中の安倍総理は,4月29日,モスクワ・クレムリンにおいてプーチン大統領と日露首脳会談及び午餐会兼ワーキングランチを行ったところ,概要と評価以下のとおり。
1. 全体概要  
 4月29日モスクワ時間13時25分から約2時間にわたり,安倍総理はプーチン大統領との間で少人数の首脳会談(日本側同席者は世耕官房副長官,原田駐露大使,斎木外審,上月欧州局長)を行い,幅広い分野について密度の濃い意見交換を行った。続いて15時35分から約1時間10分間,江藤農水副大臣や同行している経済界の代表も同席して,プーチン大統領主催午餐会兼ワーキングランチが行われた。 
 会談終了後,日露パートナーシップの発展に関する共同声明(主要ポイント(PDF)全文(PDF))の採択が発表され,両首脳立ち会いの下,文化センター設置協定を含む9件の文書(リスト)(PDF)の署名が行われた。

 安倍総理の訪露の際に作成された文書一覧はこちら(PDF)

2. 日露関係全般
 会談の冒頭,プーチン大統領から,日露関係は発展傾向にあり,貿易額も過去最高を記録したが,両国の潜在力に見合った水準には達していない旨述べた。これを受けて,安倍総理から,日露両国がパートナーとして協力の次元を高めるのは時代の要請である旨述べ,「力強く繁栄するロシア」をつくるとのプーチン大統領の目標と,「強い日本」をつくるという総理の目標の共通点を指摘しつつ,その目的のためにも両国間に戦略的パートナーシップを構築することが必要である旨述べた。

3. 安全保障
 (1)安全保障分野については,総理から,戦略環境の変化の中で,日露両国がアジア太平洋地域の平和と安定に共通の責任を有していることを指摘し,安全保障・防衛分野での協力強化の重要性につき両首脳の認識が一致した。

 (2)具体的には,外務・防衛閣僚による「2+2」会合の立ち上げに合意した。また,防衛交流を拡充し,テロ・海賊対策を含む協力の新たな分野を模索していくことで一致した。国際テロリズム,国際組織犯罪に対する関係当局間の協力強化についても一致した。

4. 平和条約交渉
 (1)平和条約交渉については,安倍総理から,日露関係発展の未来図を描くに当たって,平和条約締結に向けた展望が欠けてはならない旨述べた。両首脳は,戦後67年を経て日露間で平和条約が存在しないことは異常であるとの認識を共有し,双方の立場の隔たりを克服して,2003年の共同声明及び行動計画において解決すべきことが確認されたその問題を最終的に解決することにより平和条約を締結するとの決意を表明した。

 (2)安倍総理から,この困難な問題の解決には,プーチン大統領と自分の決断が不可欠であることを強調し,両首脳は「日露パートナーシップの新たな未来志向の地平を模索する中で,両首脳の議論に付すため,平和条約問題の双方に受入れ可能な解決策を作成する交渉を加速化させる。」との指示を各々の外務省に対し共同で与えることで一致した。

5. 国際情勢
 (1)国際情勢については,安倍総理から,アジア太平洋地域の責任あるプレーヤーとしてのロシアの役割への期待を表明し,EAS,APECをはじめとして,日露双方が参加する地域協力枠組みにおける更なる連携を行っていくことで一致した。

 (2)挑発的言動を繰り返している北朝鮮については,北朝鮮の核保有を断じて認めないこと,北朝鮮が一連の安保理決議を誠実に履行するよう日露で連携していくことで一致した。

 (3)また,拉致問題について,総理からロシアの理解と協力を要請し,プーチン大統領から理解と早期解決への期待が示された。

6. 経済
 (1)経済関係については,少人数会合においても,午餐会兼ワーキングランチの場でも議論された。ロシア側からは,シュヴァロフ第一副首相,ドヴォルコヴィッチ副首相のほか,6名の閣僚,セーチン「ロスネフチ」社長ほかロシアを代表する企業のトップが出席した。

 (2)まず,プーチン大統領から,エネルギー,農業,医療,運輸,インフラ等各種分野での協力,極東・東シベリア開発における協力など,日本との経済協力推進への期待が述べられた。

 (3)安倍総理から,金融政策,財政政策,成長戦略の「三本の矢」で日本経済の復活を図っており,成長戦略の重要な要素である海外展開の観点から,約30名のCEOを含む総勢約120名という日露関係史上最強最大のミッションが同行したと紹介した。そして今回の経済ミッションの3つのテーマである,(1)農業・食品,(2)医療,(3)都市環境・省エネの各分野における日露協力の推進について一致した。

 (4)両首脳は,今後日露両国が極東・東シベリア地域の発展のために協力し,その将来の青写真を描くため,官民協議を開催することにつき合意した。また,この関連で,JBICとロシア直接投資基金・対外経済銀行による投資プラットフォームの創設を歓迎した。

7. 文化・人的交流
 文化・人的交流の関連では,人的交流の充実により,両国関係の裾野を広げ,相互理解を深化させる重要性につき意見が一致した。両首脳は,文化センター設置協定の署名を歓迎し,また,2014年を日ロ武道交流年とすることを決定した。

8. 政治日程
 少人数会合において,安倍総理から,プーチン大統領と今後できる限り頻繁に会っていきたいと述べ,プーチン大統領から賛意が示された。また,安倍総理から,2014年中のプーチン大統領の訪日を招請したところ,プーチン大統領から謝意が表された。

9.評価
 (1)日本の総理として10年ぶりとなる公式訪問において,プーチン大統領との間で「日露パートナーシップの発展に関する共同声明」を採択し,日露協力の具体的あり方を指し示すことができたことは有意義。

 (2)平和条約交渉については,ここ数年停滞していたが,今回の会談で交渉を再スタートさせ,加速化させ,しかも両首脳の議論に付すことに合意したことは大きな成果。

 (3)安倍総理がプーチン大統領との間で幅広い問題について胸襟を開いてじっくり話し合ったことを通じて個人的信頼関係が生まれた。

 (4)今回の総理訪問は,今後の日露関係に新たな弾みと長期的方向性を与えるものになったと考えられる。    

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