
町村外務大臣と唐家セン国務委員との会談
(概要)
平成17年4月18日
18日午後、中国訪問中の町村外務大臣は、約1時間20分にわたり、釣魚台第12号楼において、唐家セン(とう・かせん)国務委員と会談を行ったところ、その際のやりとりは概要以下のとおり。(日本側:阿南在京中国大使、佐々江アジア大洋州局長他、中国側:武大偉外交部副部長他同席)
1. デモに伴う暴力的活動
町村大臣
- 日本大使館及び大使公邸を視察したが、確かに窓ガラスが割られ、外壁が壊されている。これについて貴国より陳謝の意または迷惑をかけたとの一言があれば、日本人の気持ちもより良い方向に転換されたであろう。ただ、この点について、昨日の李外交部長との会談で意見が一致しなかった。
唐国務委員
- 我々は北京等にて少人数が行った過激な行動に対し賛成しない。我々は最大の努力を尽くして日本大使館等や日本人のために多くの措置をとった。引き続き必要な措置をとり安全を確保していきたい。また、法に基づいて必要な措置をとり関係問題を処理していきたい。(これに対し、町村大臣より、それぞれの国民感情に悪影響を与えないよう貴国務委員の指導力に期待したい旨述べた。)
2. 日中関係全般
唐国務委員
- 歴史、台湾の問題について日本は最近態度を変えている。日本は日中国交正常化以来の対中政策を転換し、中国に強硬な態度で対抗するような政策を採っているとの論調がある。
- 胡錦濤国家主席と中央指導者は一貫して日中友好関係については、3つの重要文書の基礎の下、「歴史を鑑とし、未来に向かう」という精神で関係改善を行っていくべきと考えている。両国関係の改善は誠意を以てやっていく。今後日本側と経済、文化、科学技術、観光等の面で協力関係を深め、両国国民間の友好的往来をさらに発展させたい。
- 本年は日中関係にとって極めて重要な年。日本側においては歴史、台湾、東シナ海等の敏感な問題での言行を慎んで欲しい。場合によっては計り知れない結果をもたらしかねず、日中関係のために協調を維持し、冷静に問題に対処していくべき。
- 温総理は小泉総理からの親書を非常に重視している。回答はいずれ外交ルートを通じてお伝えしたい。
町村大臣
- 日中間の先の大戦にかかる歴史認識、台湾問題等で政策を変えたというのは全く事実に合致していない。日本は、先の大戦の反省に立ち、戦後60年間、平和国家として国家経営を行ってきており、世界の多くの国々にもこれは認められている。日本は、戦後、一度も外国と戦争をしたことはなく、経済力を通じ諸外国の発展を支援してきた平和立国であり、その考えは今日でも変わっていない。
- 台湾問題についても日中共同声明のとおりの立場は全く変わっていない。
- 日本の教科書の内容は全ての教科書は戦争の反省の上に立って、平和な日本を創っていくというもの。教科書の内容は、基本的には各国国内の問題であるとの前提で、貴国における愛国教育が結果として「反日」教育となっていないかとの声は日本国内に多い。例えば、「抗日記念館」には多くの子供が訪れるが、同記念館の展示物の内容が、日中友好に資するものかどうかという議論が日本の国会においても屡々なされる。
- 北京オリンピックを支援したいと考えているが、今回のデモに伴う暴力的行為やサッカー・アジアカップの際の騒動もあり、国際社会の中では、オリンピックの平穏な開催を心配する向きもある。
- 貴国と手を携えて共に歩んでいくとの考えには賛成であり、5月15日に訪日する呉儀副総理を心から歓迎したい。唐家セン国務委員の訪日も歓迎する。
唐国務委員
- 日本の政策が不変であることについては、言葉も大事だが実際の行動も重要である。要人訪問については、適切な雰囲気と環境があることが重要。呉儀副総理の訪日に関する日本側の努力に感謝。