平成19年5月3日
イワノフ安全保障会議書記との会談
日露外相会談
故エリツィン大統領の墓参り
5月3日、麻生外務大臣は、ロシアを公式訪問したところ、概要以下のとおり。麻生大臣は、ラヴロフ露外務大臣との間でワーキングランチを含め約2時間、日露外相会談を行った。また、麻生大臣は、イワノフ露安全保障会議書記と約30分間、会談した。
これらの会談が終了した後、麻生大臣は、4月23日に逝去したエリツィン初代ロシア大統領の墓参りを行った。
冒頭、ラヴロフ大臣より、エリツィン大統領の逝去に際して日本側より表明された哀悼の意に対して心より感謝する旨述べ、麻生大臣より改めてお悔やみを伝えた。
(イ)6月にドイツ・ハイリゲンダムにおいて行われるG8首脳会合の際に日露首脳会談を開催すべきことで一致し、そのために具体的な調整を行うことになった。
(ロ)G8首脳会合の際に行われる日露首脳会談の準備のために、日露次官級協議を5月17日にモスクワで行うことで一致した。
(ハ)5月29日に東京において第2回日露戦略対話を行うことで一致した。
(イ)北方領土問題に関し、これまでの諸合意及び諸文書に基づき、日露双方にとり受入可能な解決策を見いだすために精力的に交渉を続けていくことを確認した。
(ロ)その上で、本年2月のフラトコフ露首相の訪日の際に署名された防災分野に関する協力プログラムに従って、平和条約締結交渉のための環境整備にも資するものとして、四島を含む日露の隣接地域において地震、津波等の自然災害の予測や対処の分野における具体的な協力を本年以降実施していくことを確認した。
(ハ)また、既存の枠組みの下で四島を含む日露の隣接地域における生態系の保全及び持続可能な利用に関する協力を行うことについて検討するため、両国の専門家間で議論させることで一致した。
(イ)原子力、高速鉄道、ICT、電力、LNG、石油精製等、我が国が優れた技術を有する新たな分野での協力は、日露両国の戦略的利益にも適うものであり、「日露行動計画」に基づき、これらの分野での日露協力プロジェクトを発掘・実現していくことで一致した。この関連で、民間の原子力協力進展の鍵となる原子力協力協定交渉を精力的に進めていくことで一致した。
(ロ)極東・東シベリア地域の安定的発展、同地域のアジア太平洋地域への統合を進めることが、この地域の持続的発展と長期的安定にとって重要であるとの認識で一致し、そのために上記(イ)に掲げられたハイテク分野を含めた協力につき、貿易経済政府間委員会を活用し話し合っていくことになった。この関連で、極東・シベリア森林保全に関する第1回作業部会を本年9月又は10月に開催することで一致した。
(イ)日露間の人的交流の拡大に向け、日露学生フォーラムを9月に札幌市で開催することで一致した。
(ロ)査証簡素化協定を早期に締結するため作業部会を早期に開催することで一致した。
(イ)プーチン大統領が年次教書演説で言及した外国企業への漁獲割当配分の停止の可能性について、麻生大臣より、仮に我が国漁業者がロシアの水域で操業できなくなれば、日露間の大きな問題になりかねないとして重大な関心を払っていると述べた。これに対しラヴロフ大臣は、ロシア外務省は主務官庁ではないが、漁業に関する日露間の政府間協定はロシアの連邦法の一部を構成しており、今後ともこれらの協定が履行されることを期待すると述べた。
(ロ)麻生大臣より、日本漁船の操業開始に向けたロシア側の内部手続の早期完了を求めたのに対し、ラヴロフ大臣より、ロシア側として適時に手続が完了するよう最大限努力している旨述べた。
(ハ)麻生大臣より、国後島付近で拿捕された漁船及び船長の一日も早い解放を改めて求めた。これに対し、ラヴロフ大臣より、本件についてはロシア側としても注視しており、船長と船体については然るべき「手続」を経て解放されることとなるが、再発防止のため日本側においても然るべき措置をとってほしい旨述べた。(イ)ラヴロフ大臣より、日露双方の利益を最大限高めるため、拉致問題への協力、日本の安保理常任理事国への選出の希望、四島の元島民への人道的配慮をこれまで最大限考慮するよう努力してきたし、今後も努力していく旨述べた。
(ロ)北朝鮮問題に関し、ラヴロフ大臣より、上記(イ)のとおり、拉致問題についての我が国の立場に改めて理解が示された。また、拉致問題の他、核問題及びミサイル問題の解決に向けて引き続き日露間で連携・協力していくことで一致した。
(ハ)イランの核問題について、引き続き緊密に連携していくことで一致した。麻生大臣より、イランの核問題は不拡散体制全体に関わる重大な問題である旨指摘した。ラヴロフ大臣より、イランが交渉に復帰するようあらゆる可能性を追求すべき旨述べた。
(二)イラクについて、治安の問題のみならず、イラク政府による国民融和が重要であることにつき認識の一致が見られた。
(ホ)中東和平について、和平プロセスの進展に向け、緊密に連携していくことで一致した。麻生大臣より、我が国が取り組んでいる「平和と繁栄の回廊」構想につき説明したところ、ラヴロフ大臣より、同構想を高く評価する旨述べた。
(1)二国間関係について、イワノフ書記より、麻生大臣とラヴロフ大臣がモスクワで協議した上でエジプトに向けて出発することは、日露協力発展に向けた良いシグナルであるとの発言があった。また、イワノフ書記より、極東地域の発展のためにフラトコフ首相が議長を勤める極東発展国家委員会で作成されているプログラムは、日露協力の新たな可能性を開くものであり、今後日露がどのように協力していけるかを検討していきたい旨述べた。
(2)北朝鮮問題について、イワノフ書記より、問題解決に向けて、既存の合意を確認し、さらに発展させていく必要がある旨述べた。
(3)イランの核問題について、イワノフ書記より、ロシアとしてはイランの核保有を認められないとの立場を確認するとともに、国際社会が一致してイランに対処すべき旨述べた。