平成19年5月5日
(於:エジプト・シャルム・エル・シェイク)
1.5月4日10時15分から13時45まで、エジプト・シャルム・エル・シェイクの国際会議場にて開催され、23の国と地域が参加し、各々の立場を表明。日本からは麻生外務大臣が出席。(ステートメント別添)
2.冒頭、アブルゲイト・エジプト外相よりイラクの安定を実現させるための国際会議であり、テロの排除とイラクの安定化に向けた意見交換を行いたいとの趣旨の発言があった。
3.続いて、マーリキー・イラク首相より概ね以下をポイントとする発言があった。
(1)今回のシャルム・エル・シェイクの会合に出席している我々は、憲法に従って選ばれた代表であり、現在イラクの国造りの努力を行っている。
(2)イラク安定化のためには、現行の政治プロセスを引き続き進展させることが唯一の方法である。
(3)宗派間対立は確かに存在するが、全ての宗派は平和共存の途を指向している。
(4)テロリストは、イラク安定を妨害することが唯一の目的、イラク近隣諸国は、テロリストのイラクへの浸透を排除するため協力して欲しい。
(5)イラクは大規模な予算を手にして国造りのプロセスを継続している。イラン・クウェートを侵攻した過去はあるが、今後そのようなことはなく、他国の主権を尊重する国となる。各国の協力をお願いしたい。
4.各国とも概ね以下の諸点に言及した。
(1)ほぼ全ての国がテロを非難した。さらに、イランや国連が、テロによりイラクが不安定化すると、それが近隣諸国にspill overするとの懸念を表明した。
(2)また、各国とも国民融和が重要と発言した。国民融和との言葉を使用した国もあれば、宗派・民族による差別解消と言及した国もあったが、対立のない国造りとの立場で一致していた。
(3)昨日のイラクコンパクト会合と違い、イラク国内避難民やイラク人難民へも言及が多くなされた。その文脈で、国連、米国等より、イラク人難民の受入国であるシリア、ヨルダンの努力を評価するとの言及がなされた。
(4)また、開発の重要性についても、昨日ほどでなかったが、多くの国が言及していた。
(5)イラン、クウェート、米国等がマーリキー首相支持を明言した。
(6)シリア及びロシアが、多国籍軍のイラク駐留にタイムテーブルを設ける必要があると発言した。なお、ロシアのラブロフ外相は、この文脈で、コアリションの存在は、現在のイラク安定化のために必要不可欠であるがendlessではない、安保理決議1723により多国籍軍の駐留は1年間延長されたが、永久に存在するわけではなく撤退に向けたスケジュールが必要であると述べていた。
(7)外相会合を踏まえ、1)治安、2)イラク人難民、3)燃料とエネルギー資源の作業部会を設置しフォローを実施すべしとの発言が、国連、米国、ドイツ、ロシア、トルコより行われた。
5.イランのモッタキ外相の発言の主要点は以下のとおり。
(1)イランとしては、イラク政府の努力が成果を挙げることを期待。イラクの全ての構成員が合意したプロセスを支持。宗教指導者であるハキーム氏が暗殺された事件のようにイラク国内に未だに存在する不穏分子の動きを懸念している。
(2)テロとの関係では、イラクを拠点として周辺国を攻撃する企ては排除すべきであり、さもなくば暴力の連鎖が継続する。
(3)米国は、イラク占領がもたらした混乱の責任を認めるべきであり、他者を非難するのは誤りである。イラクの平和及び安定のため、米軍はイラクから撤退すべきである。
(4)イランとしては、イラク周辺国と協力して、独立したイラクを支援する。
(5)最後に、イラン外交官がイラクで拉致された問題があるが、これは国際法違反かつイラクの主権も侵害する行為である。早急な解放を求める。
6.ライス米国務長官の、発言概要は以下のとおり。
(1)イラクは、民主的に選ばれた政府が国造りを行っているが、まずはイラク人自身による国民融和の取組みの継続が重要である。
(2)次に、周辺国は、この会議の作業部会の継続を支援する中で適正な国境管理及びエネルギー協力の面で支援をしていくべきである。
(3)さらに国際社会全体としては、イラクコンパクトの着実な実施が必要。その関連で更なる対イラク債務救済を行う必要がある。
(4)米国及びコアリションは、多くの血と金を使ってイラクを解放した、かつてイラン及びクウェートに侵攻した国は消滅したことは事実であり、米国はこのようなことを誇りに思っている。多国籍軍の存在は、イラクの要請に基づき、安保理決議に従って行われている。米軍はイラク治安部隊とともに与えられた任務を果たしており、そのために毎日死者を出している。今後もイラク治安部隊の強化に努めていきたい。
(5)更なるイラク支援として、米国は、20.6億ドルの支援を出す予定である。
(6)今回の会合を踏まえ、各国が行動し、再び外相会合が開催された際に成果を報告できるよう作業部会を作りフォローアップを行うことが必要である。
(7)日本や韓国のように、イラクから地域的に離れていてもイラク支援を継続している国がある。それぞれの国により形は異なる。マーリキー首相には、各国とも何らかの形でイラク支援を継続しており、同政権を支えているのだという点を認識してもらいたい。
7.以上の各国の発言の後、アブルゲイト外相より、本件会合の後最終声明を発表する旨の発言があり、引き続き、マーリキー首相より、各国の発言に感謝する旨の発言があり、会議を了した。