平成18年5月23日
5月23日、麻生外務大臣は、アジア協力対話(ACD)の機会に、ドーハ(カタール)にて、潘基文(パン・ギムン)韓国外交通商部長官と会談したところ、その際のやりとりの概要は以下のとおり(会談は、約1時間30分行われた。)。
(1)麻生大臣より、この会談を海洋調査をめぐり一時緊張した日韓関係を落ち着かせ、大局的な見地から未来志向の関係を構築していく流れに戻す契機としたい、基本的価値観を共有し、共に米国と同盟関係にある日韓両国が、東アジアの安定と繁栄のため、対話と交流を強化し、具体的協力を積み重ねたい旨述べた。
(2)潘長官より、日韓関係には困難が続き残念だが、最も地理的に近いのみならず、基本的価値観を共有する国であり、一日も早く困難を克服し、未来志向の関係を発展させていきたい旨述べた。
(1)潘長官より、観光交流の拡大に関する北側国土交通大臣と金文化観光部長官との共同声明、特に、地方交流、コリアウィーク、交流おまつり、日中韓の観光大臣会合を歓迎したい、また、外交当局間の対話を活性化していきたい旨述べた。
(2)麻生大臣より、国民レベルの交流はかつてないほど進展しており、互いの文化への関心も強い、日本のドラマやアニメの地上波による放送など、文化開放をさらに進めてほしい旨述べた。また、観光交流の拡大について、外務省としても後押ししていきたい、感染症に関する両国の国立研究所間の協力を歓迎する旨述べた。
(3)これに対し、潘長官より、高校生のホームステイ等の交流を進めることは大変良いことであるので検討したい旨述べた。また、日本のドラマやアニメに対する文化開放について、麻生大臣の発言に留意しつつ積極的に検討したい旨述べた。
(1)靖国神社参拝について、潘長官より、この問題がこれ以上日韓関係に負担とならないよう、賢明な対応をお願いしたい旨述べた。これに対し、麻生大臣より、日本の立場はこれまで繰り返し述べているところであり、自分自身の立場については、個人の信条と閣僚としての公の立場を踏まえ、適切に判断する旨述べた。
(2)第二期歴史共同研究について、潘長官より、早期に合同支援委員会を開催したい旨述べ、麻生大臣から、早期立ち上げに向け努力していきたい旨述べた。
(3)在サハリン「韓国人」支援について、潘長官より、来年から永住帰国者支援を加速化したい旨述べた。これに対し、麻生大臣より、過去15年以上、約64億円の支援を実施しているが、今後とも可能な限りの協力を進めたい旨述べた。
(4)朝鮮半島出身者の遺骨の調査・返還に関し、潘長官より、協議を通じて具体的な成果を挙げたいとし、6月中に次回の政府間協議を開催する方向で調整することとした。さらに、麻生大臣より、7月中に日韓共同の実地調査を開始したい旨述べた。
(5)「強制動員」被害判定のための資料提供について、潘長官より、厚生年金名簿および供託金名簿の提供の要請があり、麻生大臣より、いかなる協力が可能か検討させたい旨述べた。
(6)ハンセン病療養所入所者への補償について、潘長官より、日本政府が先般、2名に対し補償金の支給を決定したことを評価し、更に前向きで柔軟な対応を期待する旨述べた。これに対し、麻生大臣より、認定資料の収集に苦労しているが、良く調整させたい旨述べた。
(7)麻生大臣より、こうした問題全般に関し、韓国国民の過去をめぐる心情を重く受け止め、引き続き人道的観点から対応していく旨述べた。
(1)麻生大臣より、4月の次官協議での合意に従い、韓国が6月の「委員会」で海底地形名称の提案を行うことはないことを改めて確認したい旨述べたところ、潘長官より、韓国側の立場は既に日本側が理解しているとおりである旨述べた。
(2)麻生大臣より、EEZの境界画定交渉を6月12日及び13日に東京で行うことを提案し、潘長官もこれに同意した。
(3)麻生大臣より、この交渉においては海洋の科学的調査を巡る協力も取り上げたい、また、誠実に交渉し成果を求めたい旨述べた。これに対し、潘長官より、次回の交渉が意味あるものとなることを期待する旨述べた。
(1)麻生大臣より、拉致問題は日韓のみならず多くの国に共通する人道問題である、南北閣僚級会談で韓国が拉致問題を提起したことや先般の拉致被害者ご家族の訪韓を踏まえ、協力を進めたい旨述べた。
(2)これに対し、潘長官より、横田めぐみさんの事件には深い同情心を感じている、韓国側のDNA鑑定の結果を見て、どのような部分で協力できるか検討していきたい、関係国が協力して六者会合の再開に努力する必要がある、今後の南北閣僚級会合等を通じ、北朝鮮の六者会合への早期復帰を促し、状況を悪化させないよう自制を求めたい、共同声明の履行を進めるための作業を行うことも重要である旨述べた。
麻生大臣より、東アジア首脳会議のフォローアップのため、外相会議の開催が重要である、また、日中韓で投資協定を進め、協力を深めたい旨述べた。これに対し、潘長官より、東アジア首脳会議のフォローアップのための外相会議の開催は良い考えである、また、日中韓投資協定については三国のコンセンサスが必要である旨述べた。