国際社会における法の支配

平成28年1月8日
 11月18日から26日にハーグ(オランダ)にて開催された国際刑事裁判所(ICC)第14回締約国会議(ASP)の主な概要は以下のとおり。

1 一般討議等

  • (1)カバASP議長から,ICCが不処罰との闘いを進めていく上で,裁判の実効性の向上や各国によるICCへの協力・支援が重要であり,ローマ規程を更に普遍化することが重要であることを強調した。
  • (2)各国から,ICCの活動(捜査, 訴追等)への国家の協力の重要性, ICCと国連(特に安保理)の協力関係の強化の重要性等が指摘された。また,被害者保護や裁判の実効性・効率性向上などに関して言及があったほか,侵略犯罪改正の締結促進を各国に呼びかける発言もあった。我が国から,ローマ規程起草段階から,ICCを実効的,効率的,普遍的で,財政的に持続可能な組織とするために貢献するとの政策を維持していることを紹介するとともに,ICCの普遍性促進に向けて他の加盟国とともにさらに努力する考えを表明した。

2 被害者信託基金(TFV)理事選挙

 本年11月に任期が満了する5名のTFV理事の後任を選出する選挙が実施され,我が国候補の野口元郎現理事長ほか,英,ウルグアイ,マリの候補が選出された。任期は,2015年12月から3年間。なお,東欧グループからは候補者不在のため選出されなかったため,今後選挙が行われる予定。

3 裁判官指名諮問委員会(ACN)委員の選出

 本年11月に任期が終了する9名の委員の後任を決定する選挙が行われ,議長団の下に設置された作業部会による推薦を踏まえ,我が国候補の福田博現委員を含む新しい委員が選出された。任期は,2015年11月18日から3年間。

4 協力問題

 カバ議長から,ICCと締約国の間の協力問題に関して,特権免除協定の重要性について言及があり,各国に対して締結を呼びかけた。ベンソーダ検察官から,裁判所の実効性,効率性を高めるためには締約国による時宜を得た真の協力が不可欠であること,協力問題は検察局の戦略計画の成功にも極めて重要な意味をもっている旨の発言があった。

5 裁判手続の効率性と実効性

 我が国の辻在蘭大使及びインファンテ在蘭チリ大使が共同議長を務める形でパネルディスカッションが開催された。各国から,手続の効率性と実効性の強化は裁判所の設立以来の継続した課題であること,ICCが不処罰の闘いを進める上でより効率的な手続を確立することが肝要であること等が指摘され,締約国と裁判所が密に対話を継続し,本問題に取り組むべきであることが確認された。

6 アフリカ諸国の追加議題

  • (1)南アフリカの追加議題(ローマ規程第97条(ICCからの協力要請に関する締約国とICCとの間の協議方法を規定),第27条(ローマ規程の適用における公的資格の扱いを規定)と第98条(免除の放棄等を規定)の関係について)
    今次ASPでの議論の結果,第97条の手続を明確化することを目的とし,今後も議論を継続していく可能性を締約国間で確認するとともに,第27条と第98条の関係については,いくつかの締約国が両規定の関係が不明確であることに懸念を表明したことを踏まえ,関心国はこの問題を議長団に付託することができることを確認した。
  • (2)ケニアの追加議題(改正手続証拠規則第68条の遡及適用の可否等について)
    欧州諸国・ラ米諸国からは,締約国間で裁判所の決定に影響を与えうる議論をASPにて行うことは裁判所の独立を侵害することになり不適切である,との強い反発があった。これを受け,カバASP議長の提案により,本件を協議する少人数会合(各地域グループから代表1か国)が設置され,アジアグループからは我が国が参加。見解の異なるアフリカ諸国と欧州・ラ米諸国の橋渡し役として積極的に議論に参加した。

7 2016年の予算

 8月に提出された書記局予算案は対前年比約17.3%増であったが,予算財務委員会(CBF)勧告を踏まえた削減交渉の結果,コンセンサスにて対前年比約7%増の2016年予算が採択された(約1億3959万ユーロ)。

8 第15回ASPの日程

 次回日程を2016年11月16日~24日(於:ハーグ)とすることが決定された。

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