日本の安全保障と国際社会の平和と安定
国際刑事裁判所(ICC)第12回締約国会議(結果概要)
1 一般討議等
- (1)要人挨拶(潘基文国連事務総長(セルパ=ソアレス法律顧問代読),ディウフ・フランス語圏諸国機関(OIF)事務総長,ピレー国連人権高等弁務官)では,不処罰との戦い,普遍性の確保等の重要性が強調されるとともに,各機関との協力の重要性等が指摘された。
- (2)各国から,補完性原則,普遍性,協力などに言及しつつ,被害者保護や効率性向上などに関するステートメントが行われたほか,AUの要請により,現職の国家元首及び政府の長の訴追とその和平及び安定並びに和解に対する影響に関する特別セグメントが行われ,ICCの枠組みでどのような方法によって正義,和平,安定,和解を達成するかに関し活発な意見交換が行われた。
- (3)我が国から,最も重大な犯罪を終わらせ,より広い普遍性を達成し,ICCを通じた法の支配の強化の重要性を指摘した上で,我が国が被害者支援を重視し,被害者信託基金(TFV)の取組を含むICCの被害者のための活動を高く評価。さらに,AUが提起した懸念を含め,新たな課題に取り組む際には長期的な視点が必要であることを指摘した(別添:英文ステートメント(PDF)
)。
2 被害者
全体会合において被害者に関するパネルディスカッションが行われ,野口元郞TFV理事長を始めとする関係者がパネリストとして参加。我が国を含む各国から,正義は被害者にとっても重要であること,被害者の裁判への参加,証人保護の重要性等が強調されるとともに,TFVへの拠出金を表明する国もあった。こうした議論も踏まえた被害者に関する決議が採択された。
3 協力
全体会合において協力に関するパネルディスカッションが行われ,国際社会の関心である最も重大な犯罪を行った者を訴追するためには,各国の協力が不可欠であることが強調されるとともに,我が国を含む各国から積極的な意見が表明された。こうした議論も踏まえ,協力の強化等を内容とする決議が採択された。
4 手続証拠規則の改正
- (1)手続証拠規則第68条(事前に記録された証言),第100条(公判手続の場所),第134条(被告人の在廷)を改正することが決定された。
- (2)手続証拠規則第68条及び第100条については,今回のASPまでにガバナンス問題スタディ・グループ及び改正に関する作業部会で議論され,日本はその議論に貢献してきた。これらの改正により,事前に記録された証言を使用する条件及び公判手続の場所を変更する際の手続が変更された。
- (3)手続証拠規則第134条については,今回のASPの特別セグメント(上記1(2))でも議論された現職国家元首等の訴追に関連した問題として提起されたものであり,今回のASPの中で主に議論が行われ,日本は条文の作成に深く関与・貢献した。この改正により,通信技術を使用した在廷や弁護人による代理出席の際の条件が定められた。
5 裁判官選挙
23日,本年3月のカルモナ裁判官(トリニダード・トバゴ)の辞任に伴う裁判官補欠選挙が行われ,ヘンダーソン候補(トリニダード・トバゴ)が選出された。任期は,前任の裁判官の残りの任期の2021年3月10日まで。
6 予算財務委員会(CBF)委員選挙
来年4月に任期が終了する6名のCBF委員の後任を決定するCBF委員選挙が行われ,全ての地域グループの議席につきスレートにより新しい委員が選出された。任期は,2014年4月21日から2017年4月20日までの3年間。
7 2014年の予算
7月に提出された書記局予算案は前年度比約10%増であったが(約1億2607万ユーロ),CBF勧告を踏まえ約440万ユーロが削減され,基本的にはこのCBF勧告に基づく決議案がコンセンサスで採択された(約1億2166万ユーロ)。なお,我が国は,他の主要財政拠出国と連携して,検察局及び書記局の組織改革・合理化を促進することを求める条項等の挿入に尽力し,これが決議に反映された。
8 第13回ASPの日程
次回の日程を2014年12月8日~17日(於:NY)とすることが決定された。