科学技術

平成30年6月13日

 6月5日~6日,国連本部にて,持続可能な開発目標(SDGs)と科学技術との関係を討議する第3回STIフォーラムが開催されたところ,概要は以下のとおりです(約1,000名参加(昨年は約800名))。

1 全体概要

(写真1)フォーラムの様子 フォーラムの様子
(写真2)星野大使とサンドバル大使 星野大使とサンドバル大使
  • (1)星野国連代次席大使が,サンドバル・メキシコ次席大使とともに共同議長を務め,全体の議論をリードしました。
(写真3)中村委員 中村委員
(写真4)岸顧問 岸顧問
  • (2)日本人の登壇者としては,オープニング・セッションでの新井紀子国立情報学研究所社会共有知研究センター長による基調講演,セッションでの岸外務大臣科学技術顧問による登壇,スペシャル・イベントでの中村国連「10人委員会」委員(科学技術外交推進会議委員)によるリマークス及び10人委員会との対話のセッションにおける発言がありました。このほか,セッション中において,有本政策研究大学院大学教授(科学技術外交推進会議委員),大竹JST特任フェロー,川合NEDO技術戦略研究センター長,矢部NEDO技術センターユニット長が発言を行いました。
  • (3)各セッションにおいては,科学技術の急速な発展を踏まえ,科学技術は持続可能な社会の達成を助けるものであるとの意見が出された一方,格差や雇用に与えうる影響を考慮しつつ,適切な方策を取る必要性も指摘されました。また,多様なステークホルダーの関与や連携の重要性についても多くの指摘がありました。こうした議論を踏まえ,日本からは,岸科学技術顧問等から,SDGsの更なる進展に向けた協力に関する体系的プロセスとして,各国等が科学技術イノベーション(STI)活用の方策を可視化する工程表(STIロードマップ)を策定する意義を強調しました。
  • (4)本フォーラムを行動志向のものにするとの観点から,日本の団体の協賛によるイノベーターと資金提供者との対話イベントが行われ,星野大使司会の下,イノベーターや資金提供者として日本からの出席者が参加しました。また,日本企業5社,米企業,ベルギーの団体及びコンペティションを勝ち抜いた9組のイノベーターによる展示が国連本部エントランスや本部内スペースに設置され,各企業・団体・イノベーターのSDGsのための科学技術への取組が紹介されました。さらに,日・墨共同議長レセプションでは,両国の料理とともに両国の機関・企業がパネルや展示物を設置し,出席者から高い関心が示されました。
  • (5)国連内外で行われているSDGsのための科学技術の会合等における議論との関連付け及び協力関係を構築するため,今年は初めてSTIフォーラムにおいて,開発のための科学技術委員会(CSTD)の年次会合(5月開催)の結果報告が行われたほか,UN Innovation NetworkやWorld Science Forumの運営委員会委員が登壇しました。また,Global Solutions SummitやG-STIC等の国連外の会合と連携してSTIウィーク(6月4日~7日)が開催されました。
  • (6)オンライン・プラットフォームに関するサイドイベントも開催され,国連側から,オンライン・プラットフォームは技術評価を終えた段階にあるが,運用開始まで作業が残されている旨の説明とともに,デモンストレーションが行われました。
  • (7)会合全体を通じ,多様な参加者を得て活発な議論がなされたことに対し,国連機関や各国代表団等,同フォーラムの多くの出席者から謝意が表明されました。

2 STIロードマップに関する議論の概要

  • (1)星野大使より,STIはSDGs達成に当たり限られたリソースを活用する切り札であり,各ステークホルダーがSDGsの更なる進展のために協力する体系的プロセスが重要である,これは各国がSTI for SDGsを自国の国家戦略にいかに組み入れるか考え,各事情に合わせたSTIロードマップを策定することで可能である,STIロードマップはいつまでに何をすべきかを可視化するコミュニケーション・ツールである旨発言しました。
  • (2)コルグライザー元米国務省科学技術顧問より,ロードマップはステークホルダーからのインプットにより有効に機能するもので,科学と政策の接点強化が重要である旨指摘がありました。
  • (3)岸外務大臣科学技術顧問より,STIはSDGs達成に貢献するものであり,STIで課題を解決してより良い未来社会を形成していくことは,先進国,新興国,途上国にとって良いアプローチである,一例として日本は人間中心の包摂的社会としてのSociety5.0の実現に取り組んでいる旨発言しました。また,データ・サイエンスを例に挙げSTIには光と影があり,全ての人がSTIの恩恵を享受できるためには,SDGsの目標間の相関関係や各政策の分析といった「知の構造化」に基づく,STIロードマップが有効である旨指摘しました。また,STIロードマップは多様なステークホルダーが,点や線ではなく面で協同することを可能にし,新たなビジネス機会をもたらし,新たな科学フロンティアの開拓につながり得る旨述べ,日本では安倍総理のイニシアティブでSTIロードマップ関連の施策に取り組んでいる旨紹介しました。
  • (4)世銀より,STIロードマップは各国の計画に反映され,資金ギャップの特定に資することが期待される,各アクターの立場に応じた関与が重要である,アフリカでのデジタル・インフラの整備に向けた取組は世銀の関与の一例である,民間セクターも関与した枠組みが求められる,世銀は人材育成の取組も進め,ロードマップ実施を支援できる旨指摘がありました。
  • (5)OECDより,ジェンダー平等に関してOECDは知見がある,科学界への女性進出は不十分,気候変動や保健などの分野もOECDで取組を進めており知見を共有したい旨指摘がありました。
  • (6)このほか,STIロードマップに関するセッションで,ガーナ,ジャマイカ,ジョージア,チリからの出席者がそれぞれ発言を行いました。

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