北極・南極
第47回南極条約協議国会議
2025年6月24日から7月3日までイタリア(ミラノ)において、第47回南極条約協議国会議(ATCM47)が、また、6月23日から27日まで第27回環境保護委員会(CEP27)がそれぞれ開催されたところ、概要は以下のとおりです。我が国からは、鈴木秀生南極条約協議国会議担当大使を代表団長とし、外務省、環境省、文部科学省、国立極地研究所から成る代表団が出席しました。
1 南極条約体制の運用等に関する事項
- 2024年5月の第46回協議国会議(ACTM46)以降、アラブ首長国連邦が新たに南極条約を締結し、締約国は58か国となりました。一方、環境保護に関する南極条約議定書(以下「環境保護議定書」という。)を新たに締結した国はなく、締約国数は引き続き42か国となりました。
- 本年で任期を終了するアルベルト・ルベラス氏(ウルグアイ出身)の後任として、フランシスコ・ベルグーニョ氏(チリ出身)が第4代の事務局長として選出されました。
- 次回の第48回協議国会議(ATCM48)は、2026年5月11日から21日まで、広島県広島市で開催されます。鈴木大使から、準備状況の報告及び開催都市についての紹介を行いました。
2 環境保護に関する事項(第27回環境保護委員会(CEP27)で議論)
3件の南極特別保護地区(ASPA)管理計画の改定が行われました。
コウテイペンギンを環境保護議定書上の特別保護種に指定することについては幅広い支持があったものの、コンセンサスに至りませんでした。
海洋プラスチックについては南極条約地域で汚染を防止・削減する対策をとる旨が決議されました。
また、南極における気候変動とその影響に焦点を当てた、CEP/南極海洋生物資源保存に関する科学委員会(SC-CAMLR)の合同ワークショップをATCM48の際に開催することが確認されました。
3 南極観光枠組みの構築
ATCM本会合直前に2日間のワークショップが開催され、非公式の意見交換が行われたことを踏まえ、今次会合では、南極地域における観光客数の増加、観光活動の多様化等に対応するためにどのような規制・管理が必要か等について議論されました。今後の議論の進め方についても検討され、会期間にコンタクト・グループを設立し、論点ごとに具体的な提案をまとめ、ATCM48に提出することで一致しました。
4 複数年の戦略的作業計画
今後3年間に扱っていく優先課題について議論され、南極条約及び環境保護議定書の締約国拡大に向けて取り組み、教育・アウトリーチ活動、環境保護議定書附属書VIの発効に向けた取組、気候変動の文脈での基地の先進化、観光活動の管理等を対象とすることが確認されました。従来の優先課題に加え、透明性向上のための議論の重要性が課題として追加されました。
5 教育・アウトリーチ
会期間に行われた各国の教育・アウトリーチ活動についての情報交換の有用性が確認されました。我が国は多くの国の支持を得て、ATCM48の際に教育・アウトリーチに関するワークショップを開催する旨提案し、詳細について今後調整することとなりました。
6 情報交換
情報交換について、南極条約第7条5で定められている通告の義務及び電子情報交換システム(EIES)の重要性が改めて確認され、今後会期間のコンタクト・グループでEIESの改善について包括的に見直しを行っていくこととなりました。
7 ATCMにおける透明性の向上
会議の専門的な議論、参加者の拡大、記者会見の実施など、ATCMの運営上の透明性をどのように向上できるかについて今後議論していくことで一致しました。
8 その他
未発効の法的文書の状況、南極における安全と活動、査察、科学協力と促進、気候変動の影響等についても意見交換が行われました。前回に続き、カナダ及びベラルーシから協議国入りの申請が改めてあったものの、コンセンサスを得られず、検討を継続することとなりました。
(参考)南極条約協議国会議(ATCM: Antarctic Treaty Consultative Meeting)
南極条約協議国と称される、南極において積極的に科学的調査活動を実施してきている国(29か国)が、南極地域の平和的目的の利用、南極地域における科学調査の促進、生物資源の保護保存等の南極条約の原則と目的を助長する措置等を立案し、審議し、及び各協議国政府に勧告するために参集する会議(年1回)。協議国が持ち回りで開催。同時に、環境保護議定書に基づき、環境保護委員会(CEP:Committee for Environmental Protection)も開催される。