北極・南極

令和6年6月14日

 2024年5月21日から30日までインド(コチ)において、第46回南極条約協議国会議(ATCM46)が、また、5月20日から24日まで第26回環境保護委員会(CEP26)がそれぞれ開催されたところ、概要以下のとおり。

1 南極条約体制の運用等に関する事項

  • (1)2023年6月の第45回協議国会議(ACTM45)以降、サウジアラビアが新たに南極条約を締結し、締約国は57か国となった。一方、環境保護に関する南極条約議定書(以下「環境保護議定書」という。)を新たに締結した国はなく、締約国数は引き続き42か国である。
  • (2)前回までの協議国会議に引き続き、カナダ及びベラルーシから協議国入りの申請が改めてあったものの、コンセンサスを得られず、検討を継続することとなった。
  • (3)次回の第47回協議国会議(ATCM47)は、イタリアのミラノで開催されることとなった。我が方から、2026年に日本が主催する第48回協議国会議(ATCM48)の開催地が広島市に決定したことを紹介した。

2 南極地域における観光活動に関する枠組み

 前回の第45回協議国会議(ATCM45)で立ち上げられた観光活動に関する枠組みの作業部会での議論が開始された。南極地域における観光客数の増加、観光活動の多様化等の現状を踏まえ、観光活動を規制する包括的な枠組みを構築していく必要性についての認識を改めて共有し、次回のATCM47からは本件に関するセッションを拡大し、幅広い論点について議論を進めることを確認した。また、ATCM47に際してワークショップを開催することが確認された。

3  情報交換

 南極条約が定める科学的調査に関する協力の促進の観点から、電子情報交換システム(EIES)の重要性が改めて確認されるとともに、システムの改善について包括的に見直しを行っていくことを確認した。南極条約第7条5で定められているとおり、南極地域での活動内容は他の締約国に対して事前に通告する必要があり、情報の共有及び透明性が南極条約システムの基本的側面であることが再確認された。

4 教育・アウトリーチ活動

 教育・アウトリーチに関する会期間作業の有用性について多くの国から指摘があり、第2回ワークショップ開催の可能性を含め、引き続き取り組んでいくことを確認した。

5 複数年の戦略的作業計画

 今後3年間における優先課題について議論が行われ、南極条約及び環境保護議定書の締約国拡大に向けて取り組み、教育・アウトリーチ活動、環境保護議定書附属書VIの発効に向けた取組、気候変動の文脈での基地の先進化、観光活動の管理等を対象とすることが確認された。従来の優先課題に加え、鳥インフルエンザ対策が追加された。

6 環境保護に関する事項(第26回環境保護委員会(CEP26))

 日本が管理する第41南極特別保護地区(ASPA141)を含む14件の南極特別保護地区(ASPA)管理計画の改定、3件の南極特別保護地区(ASPA)管理計画の新規策定、1件の史跡記念物(HSM)の新規指定、4件の史跡記念物(HSM)の情報の更新が行われた。
 コウテイペンギンを環境保護議定書上の特別保護種に指定することについては幅広い支持があったものの、コンセンサスが成立しなかった。

7 その他

 未発効の法的文書の状況、南極における安全と活動、査察、科学協力と促進、気候変動の影響等についても意見交換が行われた。

(参考)南極条約協議国会議(ATCM:Antarctic Treaty Consultative Meeting

 南極条約協議国と称される、南極において積極的に科学的調査活動を実施してきている国(29か国)が、南極地域の平和的目的の利用、南極地域における科学調査の促進、生物資源の保護保存等の南極条約の原則と目的を助長する措置等を立案し、審議し、及び各協議国政府に勧告するために参集する会議(年1回)。協議国が持ち回りで開催。同時に、環境保護議定書に基づき、環境保護委員会(CEP:Committee for Environmental Protection)も開催される。

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