地球環境

令和4年3月24日

 令和4年3月7日から11日にかけて、フランスのリヨンにおいて、ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)第74回常設委員会会合(SC74)が開催された。我が国は常設委員会アジア地域代表メンバーではなく、オブザーバー国として参加(本会合における各議題の内容の意思決定は、常設委員会メンバーが行った。)。
 今次会合では、行財政事項(予算の執行状況の報告等)、戦略事項(CITES戦略ビジョン等)、解釈・実施事項(条約実施の国内法整備状況の議論等)及び個別の動植物種に関して議論された。
 我が国に関係する主な議論の結果は以下のとおり。

1 北西太平洋のイワシクジラの標本の海からの持込み

(1)これまでの経緯

  • ア 2018年10月に行われた第70回常設委員会会合にて、新北西太平洋鯨類科学調査で捕獲されたイワシクジラ標本の調査副産物が、ワシントン条約で規制されている「主として商業目的に使用されるもの」に該当するとの決定がなされ、日本に対して是正措置の導入及び報告等が勧告された。
  • イ これを受け、2019年1月に我が国からCITES事務局に対して、是正措置を書簡にて報告し、バイオプシーサンプルを除く北太平洋におけるイワシクジラの「海からの持込み」は行わない旨伝達しつつ、これをもって本件に関するワシントン条約上の問題は解消する旨回答した。
  • ウ  2019年8月の第71回常設委員会会合では、日本に対し当該標本の取扱いの報告を求める勧告が採択され、2020年7月、我が国は事務局に報告書を提出し、第70回常設委員会の勧告及び条約の規定を誠実に遵守している旨伝達した。

(2)今次会合での議論

 今次会合に先立ち事務局が作成した会議文書では、日本から提供された情報に留意の上、更なる措置の必要がなければ、本件を巡る案件を終了する勧告案が提出されていた。会合の場でも、全ての発言国が、我が国の対応が十分であるとして事務局の勧告を支持し、本件を終了することが合意された。

2 象牙の国内市場

(1)これまでの経緯

 2019年8月に開催された第18回締約国会議(COP18)において、象牙の国内取引市場を有する締約国は、これらの市場が象牙の密猟や違法取引の要因になることを防ぐための取組について報告する決定が採択された。これを従い、我が国は2020年と2021年に報告を提出した。

(2)今次会合での議論

 今次会合に際して事務局が作成した会議文書では、我が国を含めた各締約国から提出された報告書がまとめられるとともに、報告を求める決定については完全に履行されたとして削除することを次回の締約国会議に提案することが記載されていた。他方、今次会合の議論の場では、多くの国から同決定については削除するのではなく、むしろ同じ内容の決定として更新することを検討すべきとの意見が多く、議論の結果、同決定を更新することを締約国会議に求める内容の勧告が採択された。

3 今後の日程

 次回の常設委員会会合(SC75)は、次回締約国会議(COP19)開催前日の令和4年11月13日にパナマのパナマシティーにて開催されることとなった。


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