気候変動

平成26年9月23日
写真提供:内閣広報室
写真提供:内閣広報室
9月23日、潘基文国連事務総長のイニシアチブにより国連気候サミットがニューヨーク・国連本部で開催され、オバマ米大統領,バローゾ欧州委員会委員長,ウマラ・ペルー大統領(COP20議長国),オランド仏大統領(COP21議長国)等,計178か国・地域の首脳及び閣僚(スピーカーズリストによる)が参加した。 我が国からは安倍総理が出席し、地球温暖化対策に関する日本の取組を紹介するスピーチを行ったほか、午後の分野別のセッションのうち、「強靱性」セッションで、スチュアート・バルバドス首相と共に共同議長を務め,国際社会において日本が強みを持つ防災分野における日本の国際協力について発信した。

1.概要

(1)オープニングでは、潘基文事務総長、アル・ゴア米元副大統領の他、国連平和大使に任命されたレオナルド・ディカプリオ氏、デブラシオ・ニューヨーク市長、パチャウリIPCC議長、市民社会代表らが出席し、それぞれ多様な立場から地球温暖化対策の必要性を訴えた。

(2)続いて「ナショナル・アナウンスメント」として、首脳レベルのスピーチが経済社会理事会議場(議長:潘基文事務総長)、信託統治理事会議場(議長:仏・ペルー両国大統領による共同議長)、国連総会議場(議長:クテサ国連総会議長)の3会場で同時並行で行われた。

(3)スピーチにおいては、多くの国が気候変動は世界各国が取り組むべき喫緊の課題であり、2015年末までに新たな国際枠組みに合意することが重要である旨述べたほか、自国の温室効果ガス排出削減や地球温暖化への適応に関する取組等を紹介した。また、2020年以降の約束草案の提出時期や緑の気候基金(GCF)への拠出を表明する国もあった。ツバルやセントルシアは、これまでの各国からの支援について、日本を挙げつつ感謝の意を表明した。

(4)午後には、閣僚レベルのスピーチが行われたほか、資金、エネルギー、森林、農業、強靱性、産業、運輸、都市の8つの分野において、官・民・市民社会等の多様なアクターが共同で地球温暖化に対する取組を発表する「マルチステークホルダー・アクションアナウンスメント」が開催され、各分野における新たな取組や宣言等が発表された。

(5)クロージングでは、潘基文事務総長が各セッションにおいてなされた新たなコミットメントなどを総括した議長サマリーを読み上げた。また、ウマラ・ペルー大統領が、COP20をホストする国としてサミットは大きなステップであったとしつつ、COPへの各国の参加を呼びかけた。

2.日本政府の対応

(1)我が国からは、午前、午後共に安倍総理が出席し、午前中は潘基文事務総長が議長を務める経済社会理事会議場において、以下を概要とするスピーチを行った。
 地球温暖化は,疑いのない事実。日本の新たな行動を紹介。鍵は,(ア)途上国支援,(イ)技術革新と普及及び(ウ)国際枠組みへの貢献の3つ。
  • 7年前、「クールアース」の概念を提唱し、2050年温室効果ガス半減を世界の目標とするよう提案した。途上国支援:2013~15年の3年間で約160億ドルの支援の約束を,一年半あまりで達成。新たに,今後3年間で,気候変動分野で1万4千人の人材育成を約束。「適応イニシアチブ」を立ち上げ,途上国の対処能力の向上を包括的に支援。さらに,気候変動にも深く関係する防災では,来年3月に仙台で開催される第3回国連防災世界会議の成功裡の開催に向け,各国に協力を訴える。
  • 技術の革新と普及:日本は,技術革新を今後も推進するとともに,国際フォーラム「イノベーション・フォー・クールアース・フォーラム(Innovation for Cool Earth Forum: ICEF)」の第一回会合を来月東京で開催。また,省エネルギーの国際的なハブを東京に設置するとともに,二国間クレジット制度を着実に実施し,世界の温室効果ガス削減に貢献。さらに,衛星を打ち上げ,温室効果ガスの排出量データを世界規模で相互活用する。
  • 国際枠組み: 日本は,COP19の決定も踏まえ,約束草案をできるだけ早期に提出することを目指す。緑の気候基金(GCF)については,その受入れ体制など必要な環境が整った際に,日本としても応分の貢献をするべく,検討を進めている。
(2)午後の「マルチステークホルダー・アクションアナウンスメント」に関しては、安倍総理が「強靱性」セッションに共同議長として参加した(もう一人の共同議長はスチュアート・バルバドス首相)。冒頭、安倍総理は、気候変動に適応できる強靱な世界を築くためには人間の安全保障の観点から防災に取り組むことが重要であり、日本は防災先進国として国際社会を主導してきた旨述べ、午前中の演説で発表した島嶼国を中心に途上国を支援する「適応イニシアチブ」について改めて説明した。また、来年3月に仙台で開催される第3回国連防災世界会議の成功に向けた協力を呼びかけた。
その後、スチュアート・バルバドス首相、ムセベニ・ウガンダ大統領、ミッチェル・グレナダ首相等の各国代表、国際機関・地域機関代表、市民社会代表、民間企業代表より、それぞれの立場からの取組について発言を行った。
(3)さらに日本政府として森林、農業、産業、都市、エネルギーの計5分野の新たな取組や宣言に参加した。

3.評価

(1)地球温暖化問題に関しては、2015年にパリで開催されるCOP21において、新たな国際枠組みを採択することが予定されている中、「行動の促進(Catalyzing Action)」をテーマとする今次サミットにおいて、首脳だけで120カ国以上(スピーカーズリストによる)が参加し、新たな枠組みの構築に向けた各国の政治的意思が首脳レベルで確認されたことは有意義であった。
また、自治体や市民社会、経済界からも多数の参加を得た本会合では、気候変動に関する国際交渉だけでなく、地球温暖化対策の具体的な取組・行動に焦点が当てられ、様々なアクターの役割の重要性が再確認された。

(2)我が国としては、安倍総理がスピーチ及び参加した会合において、地球温暖化対策に関するこれまでの実績と途上国支援、技術革新・普及をはじめとする新たな貢献策を発表したほか、望月環境大臣は、各国環境大臣との二国間会談を行い、我が国の取組について発信した。さらに「マルチステークホルダー・アクションアナウンスメント」においては、合計5分野の取組に参加した。これによって、地球温暖化問題に対する日本政府としての積極的な姿勢を参加国のみならず国際社会全体に対して示し、我が国の存在感を高めることができた。

(3)また、強靱性セッションで安倍総理が共同議長を務め、防災先進国としての日本の取組を世界に発信することができた。特に、来年3月に東日本大震災の被災地仙台で開催される第3回国連防災世界会議については、今次サミットにおいて各国の出席を安倍総理自身が呼びかけることにより、同会議の成功に向けて大きな弾みをつけることができた。

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