気候変動
パリ協定特別作業部会第1回会合第6部(APA1-6),科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)及び実施に関する補助機関(SBI)第48回再開会合
9月4日~9月9日,タイ・バンコクにおいて,パリ協定特別作業部会第1回会合第6部(APA1-6)及び2つの補助機関の第48回再開会合(SB48-2)が開催されたところ,概要は以下のとおり。これらの会合は,本年12月に開催予定のCOP24でのパリ協定の実施指針の採択に向けて交渉を加速させることを目的として,追加会合として開催することが決定されたもの。我が国から,外務・環境・経済産業・農林水産・国土交通の各省関係者が出席した。
1 議題間の関係(リンケージ)に関するラウンドテーブル
パリ協定は,世界全体が包括的な気候変動対策に取り組むため,各規定が密接に関係している(例えば,協定第4条に基づき締約国が提出する温室効果ガスの排出削減目標は,同第13条に規定された透明性枠組みを通じて,締約国から進捗状況が報告される)。そのため,パリ協定の詳細設計にあたる,APA・SBの各議題における実施指針の検討においても,リンケージに留意する必要がある。本会合に先立つ9月3日,議題間の関係を理解し,どのように実施指針に反映するべきかを議論するため,ラウンドテーブルが開催された。事前に提示された設問に従い活発な議論が行われ,多岐にわたる議題間の関係について理解を深める有意義な機会となった。
2 パリ協定特別作業部会第1回会合第6部(APA1-6)
本会合は,これまでの交渉を踏まえ,テキスト案への移行に向けた「合意された交渉の土台」を作ることが目的とされた。具体的には,前回会合(APA1-5)で作成された非公式ノート(実施指針の項目や要素に関する締約国の異なる見解を整理したもの)を踏まえ,APA共同議長が準備し,8月上旬に公表された文書(Additional tools)について,APAの各議題(緩和,適応報告書,透明性枠組み,グローバル・ストックテイク(パリ協定の世界全体の実施状況に関する検討),実施及び遵守の促進等)で同文書の整理・改訂作業が行われた。9月9日に結論文書が採択され,APA・SB両共同議長が,締約国が検討を進める助けとなる「テキスト化に向けた提案」を含め,これまでの進捗評価や今後の進め方に関する合同リフレクション・ノートを,10月中旬までに公表すること等が盛り込まれた。
3 第48回補助機関再開会合(SB48-2)
本会科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)及び実施に関する補助機関(SBI)の第48回再開会合では,実施指針関連の議題(NDCの共通時間枠に関する事項,協定第6条に基づく市場メカニズム等に関する事項,同第9条5項に基づく締約国より提供される資金に関する情報の特定,同第9条7項に基づく資金のアカウンティングのモダリティ,技術枠組等)について議論が行われた。結論文書は,APAの結論文書と同様の内容。
4 評価
- (1)今回の会合においては,実施指針の項目や要素に関する締約国の異なる見解が整理され,各議題の進捗状況に応じ,項目によっては,テキスト案に近い成果物が作成される等,議論に前進が見られた。また,次回会合までのAPA・SB両共同議長の作業に合意したことは,COP24で本格的なテキスト交渉を開始する基礎となるものとして評価できる。
- (2)他方,COP24での実施指針採択に向けては,議題間で進捗に差が見られ,未だ多くの作業が残っている。また,先進国と途上国との間でパリ協定に基づく取組に差異を設けるべきとの強い主張(二分論)や各議題のスコープを拡大しようとする動き,資金関連議題における議論等で,各国の見解や立場に隔たりが見られる論点が引き続き見られる。
- (3)我が国代表団はオーストラリア,カナダ,アメリカ,ニュージーランドなど,立場を同じくする国々と協調しながら議論に積極的に参加するとともに,他の交渉グループとも連携を図った。また会議と並行し,NGOとも様々な論点について意見交換を行い,多様な視点を取り入れながら交渉にあたった。