気候変動
国連気候変動枠組条約第27回締約国会合閣僚級準備会合(プレCOP27)
1 会合の概要
(1)日程
10月3日(月)~10月5日(水)
(2)場所
コンゴ民主共和国・キンシャサ
(3)主催者、出席者等
- 主催:
- コンゴ民主共和国政府、共催:エジプト政府(COP27議長国)
- 参加者:
- 約50か国・地域、国連気候変動枠組条約事務局他
- 我が国出席:
- 北村外務省国際協力局参事官(気候変動交渉担当大使)他、外務省関係者が出席。
2 本会合での議論の概要
本年11月に開催予定の国連気候変動枠組条約第27回締約国会合(COP27)に先立ち、主要議題について、締約国間で意見交換・認識共有を図るべく開催された。会合ホストであるコンゴ民主共和国(バザイバ副首相兼環境・持続可能な開発大臣)及びCOP27議長国・エジプト(シュクリ外務大臣)の共同議長の下、約50か国・地域・機関が参加。米国(ケリー気候問題担当大統領特使)、英国(シャーマCOP26議長)、EU(ティマーマンス欧州委員会筆頭上級副委員長)を含む10数か国から閣僚級が参加。全出席者が参加する閣僚級ラウンドテーブルのほかは分科会方式が採用され、適応、緩和、気候資金、損失と損害(ロス&ダメージ)について、各国が意見交換を行った。
(1)適応
多くの締約国から、最新の科学的知見に基づく適応策の実施の重要性が指摘されたほか、「適応に関する世界全体の目標(Global Goal on Adaptation: GGA)に関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画(Glasgow–Sharm el-Sheikh work programme on the global goal on adaptation: GlaSS)」の下で、締約国間のGGAに関する理解の深まりを期待する意見が表明された。また、途上国からは、適応資金の必要性が指摘され、COP26での先進国の適応資金倍増コミットメントに基づく取組について、透明性や今後の見通しが確保されるべきという意見が出された。先進国側も、適応策実施の必要性を共有し、各締約国のコミットメント等に基づく適応支援の紹介等が行われた。
我が国からも、適応基金への拠出等、適応資金倍増の取組を着実に実施している旨、発言を行ったほか、民間部門からの資金動員を促進する観点から、途上国の適応ニーズの特定や投資環境整備が必要であることを指摘した。
(2)緩和
本年のパリ協定第4回締約国会合(CMA4)で決定される「この決定的な 10 年間に緩和の野心及び実施の規模を緊急に拡大するための作業計画(Mitigation Work Programme:MWP)」に関する議論が行われた。複数の締約国から、パリ協定の1.5℃目標に整合的な取組の確保の必要性が指摘され、緩和策の野心の向上及び実施の強化につながる成果が必要との意見が出された。また、いくつかの締約国から、MWPに関連して、COP26で採択されたグラスゴー気候合意の緩和章(含:排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の逓減及び非効率な化石燃料補助金からのフェーズ・アウト)のフォローアップをすべきとの意見が出されたほか、同作業計画の下での活動の成果をCMA4から開始される「2030年以前の野心に関する年次ハイレベル閣僚ラウンドテーブル」と連関させるべき、地方公共団体や民間企業等の非国家主体の取組を考慮に入れるべきといった意見が出された。他方、一部の途上国からは、CBDR(Common But Differentiated Responsibilities:共通に有しているが差異のある責任)原則に基づき、緩和策の実施は先進国がまず範を示すべきと指摘があった。
我が国からは、COP27における野心的なMWPの採択は、必要不可欠な成果と考えており、MWPがG20等の主要排出国の長期戦略、NDCを1.5℃目標に整合的な内容へと強化するための枠組みとして採択されるべきと発言した。
(3)気候資金
気候資金1000億ドル資金動員目標の達成に向けた取組、COP26の先進国の適応資金倍増のフォローアップ、新規合同数値目標(New Collective Quantified Goal on Climate Finance: NCQG)について議論が行われた。途上国からは、気候資金目標の早期達成を目指すべきとの意見が出された。先進国側からは、1000億ドル目標に引き続きコミットしているとしつつ、ドイツ及びカナダが主導している「デリバリー・プラン」に関する取組状況を共有し、目標達成に向けた道筋を示すべく努力している旨、発言した。また、NCQGに関する議論においては、資金支援のドナーベースの拡大の必要性やパリ協定第2条1(C)を考慮にいれるべきと指摘した。
我が国からも、COP26での気候資金コミットメントを着実に実施していること、また、我が国のコミットメントは先進国の中でも最大規模であることを説明した。加えて、今後の気候資金に対する途上国のニーズが拡大していくことが予想される中で、先進国による資金動員だけでなく、民間資金動員や南南協力の実施を含むドナーベースの拡大を検討すべきと指摘した。
(4)ロス&ダメージ
途上国から、ロス&ダメージ資金支援の拡充を求める意見が出された。具体的には、緑の気候基金(GCF)をはじめとする既存の資金メカニズムはロス&ダメージに十分に対処できていないとして、新規のロス&ダメージ資金ファシリティを設置すべきであり、そのためにCOP27で資金ファシリティに関する新規議題を採択し、その創設に向けて議論すべきとの意見が多く聞かれた。先進国からは、ロス&ダメージ対策の議論の実施には、COP26で設立された「グラスゴー対話」を活用すべきという見解が示されたが、ロス&ダメージ対策の重要性及びロス&ダメージ支援について議論する場を作る必要性については一致した。上記の考えを受け、先進国から資金ファシリティの創設等の結果を予断しない形で、ロス&ダメージ支援に関する議論を行う新規議題の採択は受け入れ可能という姿勢が示された。
我が国からも、ロス&ダメージ対策の必要性について同意しつつ、GCFを例に出して、新規資金枠組みの立ち上げには多くの時間と労力がかかるため、ロス&ダメージ対策の緊急性を鑑みると既存の資金枠組みの活用が最も迅速な解決策であること、また、COPでガイダンスを決定すれば、GCFがロス&ダメージ対策を強化することは可能であることを指摘した。加えて、ロス&ダメージ対策には防災の取組を考慮することも重要であることを発言した。
(5)COP27での成果に向けて
COP27議長国エジプトから、困難な地政学的な状況が続いているが、これを気候変動対策の後退の理由としてはならず、COP27は誰も取り残さない形で、緩和、適応、気候資金、ロス&ダメージ等の分野で最大限の成果を追求していく意向が示された。
我が国からも、COP26の成果に基づき、COP27においても気候変動対策への国際社会の決意を確認することが重要と指摘した上で、緩和、適応、ロスダメに関する議論や各種イニシアティブの成果がバランスよく進展していくことが必要と指摘した。我が国として、COP27の成功裡の結果の実現、そして、翌年以降のCOPへの機運向上に貢献していく旨、発言した。