気候変動

平成31年1月25日

 12月2日から15日まで,ポーランド・カトヴィツェにおいて,国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24),京都議定書第14回締約国会合(CMP14),パリ協定第1回締約国会合第3部(CMA1-3)等が行われた。我が国からは,原田義昭環境大臣,菅沼健一気候変動交渉担当政府代表,外務・経済産業・環境・財務・文部科学・農林水産・国土交通各省の関係者が出席した。
 今次会合では,2020年以降のパリ協定の本格運用に向けて,パリ協定の実施指針を採択した。概要,我が国の取組の発信及び評価は以下のとおり。

1 概要

(1)パリ協定の実施指針

 本会合では,2020年以降のパリ協定の本格運用に向けて,パリ協定の実施指針採択を目指し,議論が行われた。第1週には,パリ協定特別作業部会第1回会合第7部(APA1-7)・第49回補助機関会合(SB49)が開催され,技術的な交渉を行い,緩和・適応・透明性枠組み・市場メカニズム・資金等について,APA・SB共同議長が事前に用意した,テキスト提案の改訂作業が複数回行われた。第2週には,APA・SBでの議論の成果を土台に,COPにて技術的な議論を継続,政治レベルで解決が必要な論点について,並行して閣僚級の交渉が行われた。

(2)気候資金

 2013-2017年の先進国から途上国への気候変動対策にかかる支援実績報告書がOECDから公表され,2020年において先進国全体で年間1000億ドルの資金支援を達成するとの目標の着実な進捗が確認された。パリ協定実施指針交渉においては,気候資金の事前情報(パリ協定第9条5),事後情報の報告方法(パリ協定第9条7)について,各国の裁量を確保した形で透明性のある報告システムの確立について合意した。また,事前情報の報告に関してワークショップの開催及び閣僚級会合の開催が決定された。さらに,2025年以降の長期目標の設定については,年間1000億ドルの長期資金目標の達成状況や途上国のニーズや優先事項も踏まえつつ,全ての資金フローをパリ協定の長期目標に整合的にするための議論の必要性が確認された。

(3)タラノア対話

 パリ協定の長期目標達成に向け,世界全体の温室効果ガス排出削減の取組状況を確認し,野心の向上を目指す,「タラノア対話」の政治フェーズが実施された(タラノアとは,COP23の議長国であるフィジーの言葉で,包摂性・参加型・透明な対話プロセスを意味する)。
 各国の経験やビジョンを共有する閣僚級ラウンドテーブルが開催され,我が国から原田環境大臣が参加。我が国が「環境と成長の好循環」を実現する世界のモデルとなる強い決意を示すとともに,温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号」による各国のインベントリの精度向上への貢献,浮体式洋上風力発電の商業化,二国間クレジット制度(JCM)を通じた途上国における脱炭素技術の普及等を紹介した。

(4)ハイレベル・セグメント等

 第3回ハイレベル資金閣僚級対話・プレ2020の実施と野心に関するストックテイク(全ての国の2020年までの取組についての対話)・タラノア対話等の議論が行われた。また,議長国であるポーランドが主導し,「公正な移行」・「E-mobility」・「森林」の3つの分野において宣言が取りまとめられ,我が国は,同3宣言への支持を表明した。

(5)COP24決定

 交渉の結果,12月15日,パリ協定の実施指針案,プレ2020の実施と野心に関するストックテイク,タラノア対話の成果,IPCC1.5度特別報告書への言及等を含んだ,COP24決定が採択された。その後,同実施指針を含んだCMA決定が採択された。我が国は,首席交渉官・専門家レベルの技術的な交渉のみならず,原田環境大臣が閣僚レベルの交渉に参加し,パリ協定の実施指針採択に向けた議論に積極的に貢献した。次回COP25は,2019年11月チリで開催される。

2 我が国の取組の発信

(1)各国の閣僚級との会談

 原田環境大臣は,各国の閣僚級等(米国,EU,モルディブ,中国,エチオピア,ポーランド・COP24議長等)との会談を実施。パリ協定実施指針採択に向け,強く働きかけを行うとともに,気候変動分野での協力等について意見交換を行った。

(2)閣僚級会合における原田環境大臣ステートメント

 原田環境大臣は,COP24におけるパリ協定の実施指針採択に向け,積極的に貢献していく強い決意を述べた。また,日本の優れた技術と科学的知見を活用して世界の脱炭素化を牽引するとともに,来年のG20議長国として,「環境と成長の好循環」を実現する世界のモデルとなるべく取組を進めること,脱炭素化とSDGsを実現するため,「地域循環共生圏」という将来ビジョンを構築したことについても言及した。
 さらに,パリ協定の着実な実施のため,資金,能力開発及び技術開発・移転を通じた支援を継続していくことを表明。2020年における1.3兆円の支援の着実な実施,2国間クレジット制度(JCM)の推進,温室効果ガス観測技術衛星「いぶき2号」による科学的知見の提供,菅沼気候変動交渉担当政府代表のGCF次期事務局長候補への擁立,IPCC第49回総会の京都での開催等に言及した。

(3)ジャパン・パビリオン

 また,日本政府としてジャパン・パビリオンと題するイベントスペースを設置し,12月7日に発表した「日本の気候変動対策支援イニシアティブ2018」をはじめ,国,各種機関・組織,研究者等の取組の紹介や議論を行うイベントを多数開催し,我が国の優れた先端技術を含む,気候変動対策に関する我が国の貢献等について紹介した。

(4)市場メカニズム

 二国間クレジット制度(JCM)に署名した17か国が一堂に会する「第6回JCMパートナー国会合」を開催した。その場で17か国の代表者とJCMの進捗を歓迎し,JCMプロジェクトのさらなる形成と実施の支援を行うことで一致した。

3 評価

  • (1)今回のCOP24に際し,日本は,ア パリ協定の実施指針の採択,イ タラノア対話への貢献,ウ ハイレベル・イベント等を通じた我が国の取組の発信,の3点を主な目的として臨んだ。これらの3点については,会議の各局面を通じておおむね達成できたと評価している。
  • (2)特に,2020年以降のパリ協定の本格運用に向けて,パリ協定の実施指針採択に合意したことは,パリ協定のモメンタムを維持し,世界全体で気候変動対策を進めていく上で非常に重要な成果。内容面でも,パリ協定の精神を貫徹した,全ての国に共通のルールに合意し,透明性・実効性の高いものと評価できる。我が国は,各議題で具体的なテキスト案を提案する等,積極的に交渉を行い,実施指針採択に貢献した。市場メカニズムについては,現在の作業状況に留意し,来年の採択を目指して引き続き検討されることとなった。
  • (3)また,ハイレベル・セグメント等の機会に,
    • ア 我が国が,イノベーション等を通じて「環境と成長の好循環」を実現する世界のモデルとなること
    • イ 全ての国がパリ協定を円滑に運用できるよう,積極的に国際協力に取り組むこと 等,気候変動対策への強いメッセージを,一貫して発信することができた。

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