- 菅総理は,9月22日(水曜日)から24日(金曜日)まで,第65回国連総会出席のためニューヨークを訪問した。滞在中,総理は一般討論演説を行ったほか,ミレニアム開発目標(MDGs)国連首脳会合開会式,安保理首脳会合,小島嶼国開発ハイレベル会合開会式の3つの会合に出席し,演説を行った。そのうち,MDGs国連首脳会合では,保健医療と教育分野で「菅コミットメント」として,それぞれ約50億ドル,約35億ドルの支援を表明し,一般討論演説では(1)途上国支援,(2)地球環境,(3)核軍縮・不拡散,(4)平和維持・平和構築の4分野で具体的貢献の意思を表明した。
- 滞在中,菅総理はラフモン・タジキスタン大統領,ダイス第65回国連総会議長,オバマ米大統領,バトボルド・モンゴル首相,潘基文国連事務総長との会談を行った。また,国連邦人職員との懇談を行った。
1.主要行事の結果概要
(1)MDGs国連首脳会合全体会合(20日(月曜日)~22日(水曜日))
ミレニアム開発目標(MDGs)を中心テーマとして開催された国連首脳会合では,各国の元首・首脳レベルが参加し,保健や教育など各分野の進捗状況や促進策につき3日間にわたり議論が行われた。
菅総理は22日(水曜日)に演説を行い,「最小不幸社会」の理念に則り,2011年からの5年間で,保健医療と教育の分野において,それぞれ50億ドル,35億ドルの支援を行うことを発表(「菅コミットメント」)。また,母子保健支援モデル"EMBRACE" (Ensure Mothers and Baby Regular Access to Care)及び基礎教育支援モデル「スクール・フォー・オール」を提示し,併せて,幅広い関係者の連携強化のために日本が国際的な対話の場を提供することを発表した。
(2)安保理首脳会合(23日(木曜日))
9月の安保理議長国であるトルコが主催する本件会合では,安保理理事国15カ国が集まり,「国際の平和と安全の維持における安保理の効果的役割」をテーマに議論を行った。
菅総理からは,「最小不幸社会」に実現に言及しつつ,日本は,一人ひとりの人間が自由を獲得し,尊厳を保障され,充実した生活を送ることができる真の平和を実現するため,平和維持,平和構築,紛争予防,「人間の安全保障」の4つを柱とする支援を進めていくこと,また,安保理が効果的な役割を果たすためには,安保理が正統性を持つ必要があり,そのため安保理改革の実現に向け協力していくとの意思を表明。他の安保理理事国の首脳・閣僚からは,紛争予防や地域機関との連携の重要性等に言及した発言が行われ,ブラジルは安保理の構成や拒否権の扱いを含め,安保理改革に言及した。
(3)小島嶼国開発ハイレベル会合開会式(24日(金曜日))
小島嶼国の持続可能な開発に関する進展をレビューするために5年ぶりに開催されたもので,小島嶼国をはじめ,各国の首脳等が出席した。
菅総理は開会式で演説し,自らも島国である日本の立場から,小島嶼国の脆弱性克服のための努力を支援したいとして,小島嶼国のサポーターであり続けると表明した。また,自然災害と気候変動に関する日本の取組を説明するとともに,人間の安全保障の考え方の下,太平洋・島サミットや日・カリコム外相会議などの対話や協力を行ってきていることを紹介した。
(4)一般討論演説(23日(木曜日)~25日(土曜日),27日(月曜日)~30日(木曜日))
23日(木曜日)から始まった一般討論演説では,「グローバル・ガバナンスにおける国連の役割の再確認」のテーマの下,各国の首脳,閣僚等が演説を行った。
菅総理は24日(金曜日)に演説を行い,国際社会が直面する課題を解決するため,「最小不幸社会」の理念を踏まえ,「途上国支援」,「地球環境」,「核軍縮・不拡散」,「平和維持・平和構築」における具体的貢献への意思を以下のとおり表明した。また,国連改革の重要性に言及した。
- (ア)途上国支援
MDGs達成の鍵となる保健及び教育分野で発表した新たな貢献(「菅コミットメント」)に触れつつ,人間の安全保障の考え方に沿って,MDGs達成に向けた取組を主導するとともに,TICADプロセスを通じた対アフリカ支援の継続・強化を表明した。
- (イ)地球環境
気候変動枠組み条約第16回締約国会合(COP16)の成功に向け,公平かつ実効的な国際枠組みを構築すべく,国際交渉を主導するとともに,気候変動対策に取り組む途上国への支援を着実に実施する旨述べた。また,生物多様性の損失を止めるためCOP10の成功が必要として,議長国として役割を果たすと述べた。
- (ウ)核軍縮・不拡散
唯一の被爆国として,「核兵器のない世界」の実現に向けて行動する決意を示すとともに,「非核大使」を任命し,核兵器使用の悲惨さ,平和の大切さを世界に発信する意思を表明した。また,外相会合を開催して新グループを立ち上げるなど,議論を深め,核軍縮についての国際的な支持を拡大していく考えを示した。北朝鮮の核及びミサイル開発については,国際社会全体にとって脅威である旨述べ,イランの核問題については,イランが国際社会の疑念を払拭する努力を払うよう粘り強く働きかける旨述べた。
- (エ)平和維持・平和構築
人間の安全保障の考え方に立って,平和維持の初期から平和構築を並行して取組む意思を表明した。国連PKOや災害救援活動に積極的に参加(ハイチ,パキスタン,東ティモール)している実績に触れつつ,平和への投資,PKO訓練センターへの支援,人材育成についても具体的な取組を推進する考えを示した。また,アフガニスタンについては,治安,再統合支援,開発の三分野で包括的・統合的に支援する旨述べた。
- (オ)国連改革
グローバルな課題に適切に対応するため,実効的・効率的な国連の実現が重要である旨述べ,安全保障理事会が国際社会を反映した正統性を持ち,実効性を備えるため,改革が不可欠との考えを示した。また,日本は常任理事国として一層の責任を果たしたいとの決意を表明した。
2.日程
9月22日(水曜日)
- 午後
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羽田発 ニューヨーク着
ミレニアム開発目標(MDGs)国連首脳会合全体会合
日・タジキスタン首脳会談
9月23日(木曜日)
- 午前
- ダイス第65回国連総会議長との会談
- 昼
- 潘基文国連事務総長主催昼食会
- 午後
- 安保理首脳会合
日米首脳会談
国連邦人職員との懇談
9月24日(木曜日)
- 午前
- 小島嶼国開発ハイレベル会合開会式
日・モンゴル首脳会談 - 昼
- 潘基文国連事務総長との会談
- 午後
- 一般討論演説
ニューヨーク発 羽田着