国連

鳩山総理の第64回国連総会出席(概要)

平成21年9月29日

  • 鳩山総理は、総理就任5日後の9月21日から24日まで、第64回国連総会出席のためニューヨークを訪問した。滞在中、総理は一般討論演説を行ったほか、国連気候変動首脳会合開会式及び首脳夕食会、核不拡散・核軍縮に関する安保理首脳会合に出席し、演説を全て英語で行った。また、オバマ米大統領、胡錦濤中国国家主席、李明博韓国大統領、メドヴェージェフ露大統領、ブラウン英首相、ラッド豪首相、チエット・ベトナム国家主席、潘基文国連事務総長との会談等を行った。
  • 今回、政権交代直後に鳩山総理が国連総会に出席し、各国首脳等が出席する場で3回の演説を行ったことで、気候変動、核軍縮・核不拡散をはじめとする新政権の外交政策を、世界に向けて力強く発信した。また、各国首脳等が一堂に会する国連総会の機会を利用して、鳩山総理は主要国との首脳会談を精力的に行い、個人的信頼関係を深めるとともに、今後の外交を展開する基盤を築くことができた。

1.主要行事の概要

(1)一般討論演説

 冒頭、日本が国連に加盟した1956年当時の総理が祖父の鳩山一郎総理であったことを紹介し、重光葵外相(当時)の国連総会演説にある「架け橋」という考え方は、鳩山一郎が唱道した「友愛」思想と共鳴するものであることに言及しつつ、新しい日本が、「友愛」精神に基づいて、東西、先進国・途上国、文明間など、世界の「架け橋」としての役割を果たしていくとの決意を表明した。

 そして日本が「架け橋」となって挑むべき以下の五つの挑戦を掲げた。

 第一に世界的な経済危機への対処として、経済政策の見直しにより日本経済を復活させるとともに、グローバリゼーションへの対処における共通のルール作りに向けて「架け橋」の役割を果たすこと。

 第二に気候変動の分野で、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築及び意欲的な目標の合意を「前提」に、1990年比で2020年までに25%削減という高い目標を掲げ、COP15に向けて利害関係の異なる国々の「架け橋」となること。

 第三に核軍縮・不拡散の分野で核保有国と非核保有国の「架け橋」となり、核軍縮を促進すること。

 第四に平和構築・開発・貧困の分野でも「架け橋」となり、国際機関やNGOとも連携し、途上国支援を質と量の双方で強化すること。また、アフリカ開発、人間の安全保障の推進、アフガニスタン支援に取り組みこと。

 第五に東アジア共同体の構築に向けて、「開かれた地域主義」の原則に立ち、歴史を乗り越えてアジアの国々の「架け橋」となること。

 最後に、国連こそがまさに「架け橋」の外交の表現の場であるとし、日本は国連、中でも安保理で、様々な国の間の「架け橋」としてより大きな役割を果たせるとして、安保理常任理事国入りを目指すことを表明した。

(2)国連気候変動首脳会合

 22日に行われた本件首脳会合には、約90ヵ国の首脳等が出席した。

 開会式では、潘基文国連事務総長の開会挨拶の後、鳩山総理他数名の首脳が演説を行った。鳩山総理は、我が国の新たな中期目標として、すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意を前提に、1990年比で言えば2020年までに25%削減をめざすと表明するとともに、途上国支援についての「鳩山イニシアティブ」を提案し、これを具体化する中でCOP15の成功のために尽力していく旨述べた。

 また、鳩山総理は、同日行われた潘基文国連事務総長主催の夕食会にも参加し、COP15の成功に向けて各国首脳と意見交換を行った。

(3)核不拡散・核軍縮に関する安保理首脳会合

 オバマ米大統領が議長を務め、理事国14カ国首脳(リビアは国連常駐代表が代理出席)と国連事務総長、IAEA事務局長が参加した。会議の冒頭に、核関連のあらゆる分野(核軍縮・核不拡散、原子力の平和的利用、核セキュリティ)を包括的にカバーする安保理決議第1887号が採択された。

 鳩山総理は演説で、唯一の被爆国としての道義的責任として我が国は非核の道を歩み、核軍拡の連鎖を断ち切る道を選んだと述べた。また、日本が核廃絶に向けて先頭に立つことを表明するとともに、核保有国による核軍縮や、CTBTの早期発効、カットオフ条約の早期交渉開始等を強く訴えた。

(4)パキスタン・フレンズ首脳会合

 ザルダリ・パキスタン大統領、オバマ米大統領、ブラウン英首相の共同議長の下で開催され、岡田大臣は、国連総会一般討論演説中の鳩山総理大臣に代わり出席した。会合では、テロとの闘いの決意を改めて表明し、パキスタン政府の武装勢力対策を評価し、同国のテロ対策及び経済支援等の取組を引き続き支援していくこと等を主な内容とする鳩山総理のメッセージが席上配布された。

(5)日米首脳会談

 鳩山総理より、日米同盟を日本外交の基軸として重視していく考えを伝達し、両首脳は日米関係の強化で一致した。地域の課題やグローバルな課題についても、建設的で未来志向の日米関係を築き、従来にも増して協力の幅を広げていくことを確認した。日米安保に関し、鳩山総理より、日米安保体制はアジア太平洋地域の平和と安定の礎であり、日米安保を巡るいかなる問題も日米同盟の基盤を強化するかたちで、緊密に協力したいと述べ、引き続き緊密に協議していくこととなった。金融・世界経済に関し、両首脳は世界経済の回復を確実なものとし、またその持続可能な成長を実現するため、緊密に協力していくことで一致した。オバマ大統領より、11月の訪日を大変楽しみにしており、その機会を含め、今後何度も総理と会談を行っていきたい旨述べた。また、北朝鮮、インドネシアを含むアジア太平洋地域情勢及び気候変動、アフガニスタン・パキスタン、核軍縮・不拡散を含むグローバルな課題についての意見交換も行った。

(6)日中首脳会談

 初めての首脳会談として、首脳間の信頼関係を確認し、戦略的互恵関係を推進していくことで一致した。アジア外交について、鳩山総理から、友愛の精神に基づき進めたく、長期的には東アジア共同体の構築が重要と指摘した。東シナ海の資源開発について、鳩山総理より、日中両国がこの問題で協力を進めていく必要がある旨述べ、また、最近の白樺ガス油田における中国側の動きは真意を理解しかねると指摘したのに対し、胡主席は昨年の合意は重要な進展であり、中国側としても東シナ海を「平和、友好、協力の海」にしたい、近い将来に実務レベルの接触を行いたい旨述べた。歴史認識では胡主席から慎重かつ適切に対処して欲しい旨述べたのに対し、鳩山総理より1995年の内閣総理大臣談話を踏襲する旨表明した。また、台湾問題、チベット問題、日中韓協力、北朝鮮問題、気候変動問題、国連安保理改革についても意見交換が行われた。

(7)日韓首脳会談

 鳩山総理から、未来志向の日韓関係を築いていくために、李明博大統領と共に協力し、更なる関係強化を図りたい旨述べ、両首脳は、今後とも日韓で北朝鮮問題を始めとして様々な問題について緊密に連携をとっていくことで一致した。また、両首脳は、グローバルな課題においても日韓協力を推進していくことで一致した。気候変動問題について、李明博大統領から、日本がアジア、ひいては世界の中で果たす役割を非常に高く評価している旨述べ、日本はG20サミットの韓国開催支持を表明した。日韓交流おまつりのような国民レベルの交流の促進、日韓EPA交渉再開への努力、次回日韓首脳会談の開催についても一致した。

(8)日露首脳会談

 両首脳は、アジア太平洋地域において新たな日露関係を切り拓くための意思を確認した。また、メドヴェージェフ大統領は、領土問題を含め日露関係に新たな道筋をつけるよう努力したいとの立場を表明した。鳩山総理から、政治と経済を含む諸問題を「車の両輪」のように進めていくことの必要性を述べたのに対し、大統領も同意し、あらゆる分野で前進を図ることが重要と発言した。鳩山総理から、我々の世代で領土問題を最終的に解決し、平和条約が締結されるよう大統領のリーダーシップに期待する旨述べたのに対し、大統領は、平和条約交渉を一層精力的に行いたい、独創的なアプローチを発揮する用意もあり、法的な範囲の中で議論を行うことも重要と発言した。両首脳は次回会談をAPEC首脳会議の際に行う方向で調整することで一致した。

(9)日英首脳会談

 G20サミットについて、ブラウン首相より、持続的成長を確保するための協調体制を確保する必要がある旨述べ、鳩山総理より、内需を刺激する政策をとりたい旨述べた。両首脳はアフガンの安定が重要である点で一致し、日英が引き続き協力してアフガン問題に取り組むことを確認した。気候変動について、ブラウン首相は鳩山総理の25%削減の中期目標を賞賛し、1000億ドルの資金支援を提案したので各国ともすり合わせたい旨述べたのに対し、鳩山総理より、「鳩山イニシアティブ」を提示したところであり検討したい旨述べた。ミャンマー、日本企業の貢献についても話し合われた。また、ブラウン首相より、鳩山総理に対し訪英が招請された。

(10)日豪首脳会談

 両首脳は、経済のみならず政治・安全保障面での日豪協力の強化、日米豪三か国による安全保障協力の強化の重要性につき一致した。北朝鮮を巡る問題の解決に向けて、両首脳は、国連安保理決議第1874号の着実な実施を含め、引き続き緊密に連携していくことで一致した。核軍縮・核不拡散については、日豪イニシアティブの「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」が本年末までに発出する報告書の内容を踏まえつつ、NPT運用検討会議の成功に向けて協力していくことで一致した。更に、G20サミットで引き続き連携していくほか、共同体構想を含むアジア太平洋地域の将来についての議論がなされた。

(11)日ベトナム首脳会談

 両首脳は、戦略的パートナーとして両国の関係を更に強化していくことで一致した。経済協力について、鳩山総理よりベトナムの更なる発展のため協力したいと述べ、チエット国家主席からは日本の経験を引き続き学んでいきたい旨述べた。国連安保理について、チエット国家主席より日本の国連安保理常任理事国入りを引き続き支持していく旨述べた。また、チエット国家主席より鳩山総理のベトナム訪問招請があった。

(12)潘基文国連事務総長との会談

 鳩山総理より、新政権はこれまで以上に国連を重視している旨述べ、潘基文国連事務総長からは、日本の国連への支援に深く感謝している旨述べた。気候変動について、潘事務総長より、今般の25%の削減表明は加盟国から大変好意的に受けとめられている旨述べ、鳩山総理より、高い目標だが強い決意を持っており、科学技術面で世界をリードしたい旨述べた。紛争予防・平和維持・平和構築については、鳩山総理より、また平和維持活動における我が国の人的貢献は十分ではないが、今以上に努力しなければならない分野である旨述べた。その他、北朝鮮問題、核軍縮についても意見交換が行われた。

(13)その他

 鳩山総理夫妻は国連邦人職員との懇談会に出席し、総理は挨拶の中で、今まで以上に国連邦人職員の活動を重視していきたい、国連邦人職員の活躍は日本の誇りである旨述べた。鳩山総理夫妻はジャパン・ソサエティ主催昼食会、オバマ大統領夫妻主催レセプションにも出席した。

2.日程

日付 内容
9月21日(月曜日) 夜 羽田発 ニューヨーク着、日中首相会談
9月22日(火曜日) 午前 国連気候変動首脳会合開会式
昼  潘基文国連事務総長との会談
午後 ワシントン・ポスト紙インタビュー
夜  国連邦人職員との懇談会、国連事務総長主催気候変動首脳夕食会、日英首脳会談
9月23日(水曜日) 午前 日米首脳会談
昼  日露首脳会談、ジャパン・ソサエティ主催昼食会
午後 日豪首脳会談、日韓首脳会談
夜  オバマ大統領夫妻主催レセプション
9月24日(木曜日) 午前 日ベトナム首脳会談、核不拡散・核軍縮に関する安保理首脳会合
昼  一般討論演説
午後 ニューヨーク発(ピッツバーグへ)
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