平成21年9月28日
岡田外務大臣は、9月21日から25日まで、第64回国連総会及び各種国際会議出席のためニューヨークを訪問した。大臣は、日・EUトロイカ外相協議、第4回日米豪閣僚級戦略対話、ミャンマー問題に関する「国連事務総長のフレンズ・グループ」ハイレベル会合、G8外相会合、日・中南米諸国外相昼食会、UNRWA60周年ハイレベル会合、パキスタン・フレンズ首脳会合、第6回CTBT発効促進会議等に出席したほか、クリントン米国務長官、スミス豪外相、ミリバンド英外相、ヨー・シンガポール外相、モッタキ・イラン外相、クレーシ・パキスタン外相、アモリン・ブラジル外相、キエム・ベトナム副首相兼外相、スパンタ・アフガニスタン外相との会談を行ったところ、主要点は以下の通り。
気候変動について、EU側より、25%削減に関する鳩山総理の発言を歓迎しており、日本とはCOP15に向け協力していきたい旨述べたのに対し、岡田大臣より、気候変動問題は極めて重要であり、EUと緊密に協力していきたい旨述べた、 北朝鮮に関して、岡田大臣より核、ミサイル、拉致問題に関して懸念を表明し、ビルト・スウェーデン外相(EU議長国)からは、北朝鮮の人権状況について憂慮するとともに日本を支持する旨述べた他、イラン、アフガニスタン、パキスタン、スリランカ等についても意見交換を行った。
3ヵ国は、アフガニスタン及びパキスタンについて、両国の安定と復興に向けた国際社会の支援の重要性について一致した他、北朝鮮については、国連安保理決議第1874号の完全実施も含め、非核化に向けた国際社会の団結が重要であるとの点で一致し、米豪両国より、拉致問題に関し、日本の立場を引き続き支持する旨の発言があった他、イラン、ミャンマー等についても意見交換を行った。
クリントン長官より、日米同盟は米国外交の礎であり、アジア太平洋地域の平和と繁栄の基礎である、歴史的に強固な日米関係の幅を広げ、更に深いものとしていきたい、色々な問題についてはパートナーシップの精神に基づいて考えていきたい旨述べた。岡田大臣より、今後、30年、50年以上先に持続可能な、より深い日米関係を作っていきたい、そのために目の前にある様々な課題についてお互いに議論しながら解決していきたい旨応答した。
岡田大臣より、当面、今後100日間に力を入れて取り組んでいく課題として、自分は大臣就任の際に、12月のCOP15に向けた気候変動問題、アフガニスタンとパキスタンへの復興支援、及び沖縄の基地や在日米軍再編といった日米同盟の問題の3つを挙げた旨説明した。
沖縄をはじめとする日米安保をめぐる問題については、岡田大臣より、今後具体的な対応につき日本政府内で検討していくので、両国で緊密に協力して取組んでいきたいと述べ、今後話し合っていくこととなった。
北朝鮮に関しては、検証可能かつ完全な非核化を達成する必要があること、核・ミサイル・拉致問題の包括的な解決を目指して、日米・日米韓の連携を一層強化していくことで一致した。クリントン長官からは、拉致問題は心を痛める出来事であり、個人的にも関心を有している旨の発言があり、岡田大臣からは、核・ミサイル・拉致の解決ができなければ国交正常化は考えられない、政権が代わっても根本は変わらないと述べた。
アフガニスタン・パキスタンについて、岡田大臣より、日本自らの問題として、民生分野などで復興支援に積極的な役割を果たしていきたい旨述べたところ、クリントン長官よりは、日本の指導力と強い立場に感謝する旨述べた。 その他、気候変動、イラン情勢についても意見交換を行った。
両国外相は、日豪関係は貿易・投資等の経済関係のみならず、戦略的・安全保障関係を含む包括的な関係を有しているとの認識で一致。スミス外相より、FTA/EPAを進めることにより、両国の緊密な関係を一層強化したい旨述べたのに対し、岡田大臣より、困難な問題はあるが、双方で現実的かつ建設的に努力していきたい旨述べた。
北朝鮮問題に関し、スミス大臣より、核問題と拉致問題に関し、日本の立場を引き続き支持する旨の発言があった。また、両国外相は日豪共同イニシアティブによる「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」が良い報告書を発出することを期待し、核軍縮・不拡散に引き続き積極的に取り組んでいくことで一致。この他、国連安保理改革、捕鯨問題等についても意見交換を行った。
ミリバンド外相より、日本が多くの国際的課題に貢献する重要なパートナーであることを高く評価する旨述べ、北朝鮮問題についても、日本の立場を強く支持し、今後も緊密に連携したい旨の発言及び日本によるインド洋における給油支援が非常に重要である旨の発言があった他、両国外相はイラン、アフガニスタン支援、ミャンマー問題、気候変動問題、国連改革、途上国支援等についても意見交換を行い、今後も日英間で様々な国際的な課題への対応で緊密に協力していくことで一致した。
岡田大臣より、「鳩山政権になってより積極的にアジアに関与していく。将来的には東アジア共同体を達成したい。そのためには中韓インドとの関係はもちろん、ASEAN諸国との関係をしっかりしたものとなるようにしたい。」等述べた。ヨー外相よりは、「日シンガポールは重要な問題においてほとんど同じ戦略を抱いており、協力することができる。本年11月のAPECでは、鳩山総理、岡田大臣をお迎えするのを楽しみにしている」等の発言があった。
岡田大臣から、イランの原子力の平和利用の権利は認めるが、国際社会の信頼確保は不可欠、米国・欧州諸国との間で、核活動に関する国際社会の懸念の払拭に向けた対話を行うべきであると述べた。これに対し、モッタキ外相から、核兵器開発の意図はなく、その必要もないとし、イランはIAEA との協力を続けていると述べる一方、自らの権利については交渉しないと述べた。
その他、イランの対米関係、アフガニスタン復興支援やパキスタン問題における日・イラン間の協力につき、意見交換を行った。
冒頭、主催国のスティーブン・ナウル共和国大統領より、日本の太平洋島嶼国への支援に対する謝意が示された他、岡田大臣は、太平洋島嶼国の他の関係者と会話を交わし、我が国として引き続き太平洋島嶼国との関係を強化していく考えを伝えた。
岡田大臣から、1)民主主義、市場経済といった価値を共有するパートナーとして国際社会における連携を強化すること、2)近年成長が著しい中南米との経済関係を更に促進すること、3)中南米の安定的発展に向けた支援(特に三角協力)を行うこと等を通じて、更に我が国と中南米との関係を促進していきたいと述べた。また、岡田大臣から、来年1月に東京での開催を調整しているFEALAC第4回外相会合について協力を要請したところ、いずれの外相とも、自ら参加することを約束した。その他、環境・気候変動、ハイチ情勢に関して意見交換を行った。
岡田外相より、パキスタンの経済改革やテロ対策を評価し、これまで以上にパキスタン・アフガニスタンへの支援を強化していく方針であり、自らパキスタンをできる限り早期に訪問したい旨述べた。これに対し、クレーシ外相より、正式にパキスタンへ御招待したい、貴国はパキスタンにとって重要なパートナーであり、貴大臣がパキスタン支援の重要性を挙げられたことに勇気付けられた旨述べた。また、クレーシ外相より、貴国がパキスタンの海軍に燃料や飲料水を供給してくれていることに感謝し、同支援の継続を希望する旨の発言があった。
本会合は潘国連事務総長主催で、我が国及び米、英、仏、豪、タイ、シンガポール、インドネシア等10か国の外務大臣等が出席した。岡田大臣からは、国連の周旋努力に対するこれまでの我が国の支持に言及し、8月にアウン・サン・スー・チー女史に対し禁固刑判決が下されたことは極めて残念であり現在の状況は極めて遺憾である旨、更に、我が国政府として今後とも引き続きミャンマー政府に対し働きかけを行っていくとともに、ミャンマー政府による前向きな動きに対しては国際社会として前向きに反応していくことが重要であると考える旨及び、人道的見地からミャンマー国民への支援を引き続き強化していくことが必要であるとの考えを述べた。
両外相は、日伯関係はこれまでも非常に良好であり、今後も、さらに関係を強化していくことにつき一致した。アモリン外相から、デジタルテレビ日伯方式の普及、エタノール燃料の生産・普及、アフリカにおける食料増産等における両国の協力につき言及があり、これに対し、岡田大臣から、ブラジルにおける高速鉄道建設計画についても、日本の新幹線の高い技術が導入されることを期待している旨述べた。また、両外相は、在日ブラジル人の問題、国連安保理改革、気候変動等について意見交換を行った。
本会合は、6月のG8外相会合、7月のG8首脳会合の政治問題の議論のフォローアップとして行われ、主にイラン、アフガニスタンについて議論が行われた。イランの核問題をめぐる状況は、今後数ヶ月間が正念場であり、10月1日にEU3+3とイランとの間で行われる協議では、核問題に焦点を当てなければならないとの認識で一致。岡田大臣より、協議を通じてイランの姿勢を判断していく必要があるが、仮にイランが国際社会の懸念に真剣に応えない場合は、厳しい対応も考える必要がある旨述べた。また、北朝鮮の核開発問題についても包括的に取り組む必要があるとの意見が表明され、岡田大臣より、北朝鮮に対し、六者会合に速やかに復帰するとともに、六者会合の共同声明の完全実施へのコミットメントと前向きかつ具体的な対応を求めていくことが重要である旨述べた。
アフガニスタンについては、国際社会としては一貫性をもって、支援を継続していく必要があること、アフガニスタン政府が自らの課題を明確に示し、着実に進める決意に対し、国際社会が支援を行っていくことが重要であるとの認識で一致した。岡田大臣より、鳩山政権としては、アフガニスタンの再建を従来以上に重視していく、元タリバーン兵士が生活できるための食料生産、雇用の創出、職に就くための訓練等、様々な分野での支援パッケージを真剣に検討している旨述べた。
ザルダリ・パキスタン大統領、オバマ米大統領、ブラウン英首相の共同議長の下で開催され、岡田大臣は、国連総会一般討論演説中の鳩山総理大臣に代わり出席した。会合では、テロとの闘いの決意を改めて表明し、パキスタン政府の武装勢力対策を評価し、同国のテロ対策及び経済支援等の取組を引き続き支援していくこと等を主な内容とする鳩山総理のメッセージが席上配布された。
本会合は、UNRWA創設60周年を記念し、国際社会との連携を強化する目的でストーレ・ノルウェー外相の議長の下で開催された。岡田大臣は、アジアグループを代表して演説を行い、UNRWAの60年間にわたる活動に敬意を表するとともに、UNRWAを通じた我が国のこれまでのパレスチナ難民支援等に言及しつつ、今後もイスラエル・パレスチナ双方への働きかけ、対パレスチナ支援、信頼醸成支援の3本の柱を中心に中東和平実現に向けた努力を続ける旨を表明した。
今次会議には、計104か国が参加し、本会議に10年ぶりに復帰した米国からはクリントン国務長官が参加した。岡田外務大臣の代表演説においては、米国によるCTBT批准に向けた前向きな姿勢を歓迎しつつ、すべての未批准国にCTBT早期批准を呼びかけるとともに、本年5月の北朝鮮による核実験を改めて強く非難し、安保理決議第1874号に北朝鮮によるCTBT早期批准の重要性が指摘されていることを想起。また、「CTBT発効促進イニシアティブ」を発表し、未署名・未批准の発効要件国への働きかけの強化及び包括的な検証体制整備のための協力強化を表明した。
岡田大臣は、ズマ大統領を始め、ヌコアナ=マシャバネ南アフリカ国際関係・協力大臣やモシシリ・レソト首相、エウズ・ベナン外務・アフリカ統合・仏語圏・在外ベナン人大臣、ハウシク・ナミビア外務大臣、ティニ・サントメ・プリンシペ外務・協力共同体大臣等アフリカ各国の首脳や閣僚等と会話を交わし、我が国として引き続きアフリカ問題にしっかり取り組んでいくこと等をアフリカ側関係者に伝えた。
岡田大臣より、ベトナムは日本にとり重要な国であり両国間の交流を深めていきたい旨述べ、キエム副首相兼外相より、両国は地域と世界の平和と繁栄のために戦略的パートナーとして関係を強化していくことで合意している、日本によるベトナムの国造りのためのこれまでの協力にも感謝している等述べた。岡田大臣より、昨年来の金融・経済危機の影響に対処するため、今般ベトナムに対し5億ドル相当の緊急財政支援を供与することを決定した旨述べたのに対し、キエム副首相兼外務大臣より、日本政府の決定を大変嬉しく思う、感謝したい旨述べた。
岡田大臣から、アフガニスタン及びパキスタンに対する復興支援は、外務大臣として当面取り組まねばならない3つの重要課題のうちの1つと位置づけている等述べたところ、スパンタ外相から、日本は過去8年、アフガニスタンに対する主要な支援国の一つであり、日本の支援に感謝する、日本が、過去数年の困難にも関わらず、インド洋における補給支援活動によりアフガニスタンの同盟国を支援していることは非常に大きな貢献であり、アフガニスタン国民を代表して感謝申し上げる。この問題について日本の選挙戦で難しい議論があったことは承知しており、また、これは日本が独自に決定すべき問題ではあるが、アフガニスタンの同盟国がアル・カーイダと闘うための支援として、インド洋での補給支援活動を継続していただけるのであれば大変感謝する旨述べた。
岡田大臣からは、日本のアフガニスタンに対する20億ドルの支援は、日本国民の税金で実施している支援であるということを認識して欲しい、インド洋での補給支援活動の問題については、日本の国内の問題として、これから検討していきたい、アフガニスタン人自身の手により大統領選挙が行われたことは、民主主義の大きな一歩である、この選挙をきっかけに強い政府が作られることを期待する旨述べた。
日付 | 内容 |
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9月21日 | 午前 成田発 ニューヨーク着 午後 日・EUトロイカ外相協議 第4回日米豪閣僚級戦略対話 日米外相会談 日中首脳会談(同席) |
9月22日 | 午前 国連気候変動首脳会合(同席) 日豪外相会談 午後 日英外相会談 日・シンガポール外相会談 日・イラン外相会談 |
9月23日 |
午前 日米首脳会談(同席) 日露首脳会談(同席) 昼 日・中南米諸国外相昼食会 午後 日パキスタン外相会談 ミャンマー問題に関する「国連事務総長のフレンズ・グループ」ハイレベル会合 日ブラジル外相会談 夜 G8外相会合 |
9月24日 | 午前 核軍縮・不拡散に関する安保理首脳会合(同席) UNRWA(パレスチナ難民救済事業機関)60周年ハイレベル会合 午後 パキスタン・フレンズ首脳会合 ズマ南アフリカ大統領主催レセプション 第6回包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議 日ベトナム外相会談 |
9月25日 | 午前 日アフガニスタン外相会談 午後 ニューヨーク発 |
9月26日 | 午後 成田着 |