
第9回国連改革に関するパブリックフォーラム(概要)
平成23年2月18日
2月18日,JICA地球ひろばにおいて,外務省と「国連改革を考えるNGO連絡会」との共催により,第9回国連改革に関するパブリックフォーラムが開催され,NGO関係者,政府関係者,学術関係者,一般市民を含む約80名が参加し,「グローバルな国連・教育プログラムの課題と可能性」と題し,「国連持続可能な開発のための10年」に触れつつ,人権教育や軍縮教育に焦点を当て議論を行ったところ,概要は以下の通り。(プログラム及び主な発表者・参加者(PDF)
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開会挨拶
冒頭,徳永久志外務大臣政務官は,自身が政務官として各地を訪問し肌身を持って感じるのは,日本や日本人が敬意や親近感を持って迎えられているということであり,右はNGOを始めとする様々な力の結集の成果であること,また,国連をはじめ世界が抱える地球規模の課題の解決は,一人一人の力でなし得るものではなく,すべての英知を結集することが必要である等述べた。(開会挨拶)
上村英明氏(国連改革パブリックフォーラムNGO連絡会・市民外交センター)は,2005年の第1回フォーラムの開催経緯を説明の上,本フォーラムは市民と政府が話し合うユニークな場である,本日の議論では教育プログラムの位置付け,教育プログラム間の連携,その効果的運用・制度のあり方が議論されることを期待すると述べた。
セッション1「開発と人権教育」
「国連持続可能な開発のための教育の10年」(ESD)に触れつつ,人権教育につき意見交
換が行われた。議論の概要は以下の通り。
- 冒頭,国連の教育プログラムについては,プログラムの部分と実施の部分の整合が課題であ
るとの説明があった。
- ESDの10年については,第57回国連総会決議により決定され,持続可能な開発の原則,価値観,実践を教育と学習のあらゆる側面に組み入れることを目的していることが説明され,政府としては,内閣府に関係省庁連絡会議を設置して,国内実施計画を策定するなどの取り組みを行っていること,また国際協力の面でも,途上国における人づくりなどの取組が実施されている現状の説明があった。
- 関係省庁連絡会議の設置は評価できるが,残り少ない数年間で成果をあげるためには,より市民に開かれた参加,地域づくりへの反映,学校での取り組み,環境教育のあり方等様々な課題が残されているとの問題提起があり,万人のための教育(EFA)や国連ミレニアム開発目標(MDGs)との連携,プロセスを市民にもオープンにすること,地域や学校への支援などの提案がなされた。
- 人権教育については,国連での議論が着々と進んでいるとし,例としては,人権教育のための国連の10年,国連人権世界計画,国連人権教育・研修宣言案等があげられた。また,国内においても,内閣府を中心に様々な取組が実施されているとの説明がなされた。
- 日本の人権教育の現状として,人権の権利性を避けて教える,社会倫理規範,道徳と人権
の区別がない,教師の知識不足,経験不足,人権教育を避けようとするなどの問題提起がなされた。また,人が人として尊ばれる社会を築いていくことが重要であるとの主張がなされた。
- 第一セッションのまとめとして,ESDと人権教育は相互に密接に関連しており,またそれを私たち一人一人の生活とのつながりを意識しつつ,フォーマルな教育の場だけでなく日常の中に取り入れ,自ら参加し,行動することが必要であることが述べられ,また運用のあり方については,なお,課題が山積しているとの現状が認識された。
セッション2「軍縮教育」
2002年の国連軍縮専門家パネル報告書を背景に,軍縮教育のための日本政府の取り組みの紹介の後,日本各地で実際に行われている軍縮教育の実践例を踏まえて,今後の課題について討論が行われた。概要は以下の通り。
- 冒頭,軍縮教育と平和教育をどう関連づけるのか,また,第1セッションでの議論をどう生かすのかを念頭に置きつつ議論を進めたいとの説明があった。
- 政府の取組として,非核特使や国連軍縮会議の他,来月外務省と国連大学の共催で実施される軍縮不拡散教育グローバル・フォーラムにつき紹介され,右フォーラムでは,簡潔ながら力強いメッセージを追求したいと述べられた。
- 軍縮不拡散教育の基本は「知る」ことと「考える」ことであるが,2002年の国連事務総長報告にもあるように,何を考えるのかではなく,どのように考えるのかが重要であることが強調された。その際,国際安全保障の現状にも絡めて考える必要があることが述べられた。
- 軍縮不拡散教育の対象及び担い手については,政府や教師のみでなく,多種多様なアクターであるべきであり,国連大学はそのアクター間の架け橋としての役割を果たしていきたいと述べられた。
- 軍縮教育の目的の設定が重要であるとの意見が出された。これに関連して,「軍縮」という概念について,とりわけ核兵器については,縮小ではなく,核を撤廃するためのプロセスとしてとらえるべきとの意見が出された。
- 原爆や核の問題を考える際に,日本の戦争体験を活用することの重要性,教育関係者と被爆者とのチャンネルの構築,平和博物館の活用といった手法が提示された。
- 被爆者団体,学生グループや宗教団体からの報告とコメントがあった。被爆者団体からは,被爆体験の実相普及を支援していくことを政府の大きな方針として掲げ,外務省に限らず他省庁とも連携して施策を進めてほしいとの要望が出された。
- また,軍縮を進め核のない世界を実現するための手法や政策についても考えることが不可欠で,そのためには現状の政策についての批判的な思考も必要であるとの指摘があった。
- 第2セッションのまとめとして,各議論の共通点を述べつつ,どのようにこの問題を身近な問題として取り入れるのか,人間の顔を持たせるのかが重要であり,これは開発教育や人権教育と共通の課題であると述べられた。
セッション3「全体会」
- 第9回目を迎えたこのフォーラムを,今回単発のものとしてとらえるのではなく,第1回目からの流れでとらえてみると,当初から脈々と流れている人間の安全保障といった精神が引き継がれていることがくみ取れる,また,フォーラムでは,様々な問題提起がなされているが,NGOの努力や政府の外交政策面でのリーダーシップが確実に成果も生んできていることに自信を持ち,外務省,NGO・市民,国連の関係者らの間で建設的な議論が行われるこのようなフォーラムを是非継続していってほしいとの評価がなされた。一方,政府と市民が一緒になって,更に発展させていってほしいとの期待も表明された。
- 本日のテーマは教育プログラムということもあり,多くの学生が参加し,地球規模の課題を念頭においた観点を持って活動していることが分かり心強かった。また,このフォーラムが始まった契機となった当時のアナン事務総長が掲げた国連が取り組む優先事項については,現事務総長のもとでも引き継がれていることが述べられた。
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