G7 / G8

ドーヴィル・パートナーシップ外務大臣コミュニケ
(2011年9月20日,於:ニューヨーク)
(仮訳)

2011年9月20日

骨子英語(PDF)

  1. 我々ドーヴィル・パートナーシップの外務大臣は,2011年9月20日にニューヨークにて会合を開催した。この変革の時期に,我々は,地域の安定と平和にとって共に鍵となる要素である民主主義という価値及び持続的で包含的な経済発展に対する完全なコミットメントを再確認した。
  2. 今日,アラブの春は大いなる希望の源泉である。これは,さらなる自由,正義,及び人間としての尊厳への地域の人々の願望に由来する。これは,政治的かつ経済的挑戦であり,即時かつ協調した行動が求められる。本年5月に,チュニジア及びエジプトと共に立ち上げられたドーヴィル・パートナーシップは,中東・北アフリカ(MENA)における歴史的な出来事へのG8及びパートナー国の対応である。ドーヴィルで,G8はアラブの春に関する宣言を採択し,民主的移行にコミットする諸国との長期的な協力関係に合意した。
  3. このパートナーシップは,体制変革または漸進的プロセスを通して,自由で民主的かつ寛容な社会への具体的かつ信頼に足る移行に従事するMENA諸国を対象とする。このパートナーシップは,国家の主権を尊重すべきである。
  4. このパートナーシップは,段階的アプローチを採用する。各国の要請に基づくこのパートナーシップは,開放的かつ包含的なものである。現時点で,5カ国に焦点を当てている。すなわち,チュニジア,エジプト,モロッコ,ヨルダン,そして今我々は,国際社会の強い支援を受けて,民生段階に入った新生リビアを歓迎する。地域における非G8諸国はこのプロセスを支援し,ドーヴィル・パートナーシップの経済的側面に参加する。
  5. 国際機関及び金融機関は,各々のマンデートに基づき,ドーヴィル・パートナーシップの政治的及び経済的側面に参加する。我々は,国連(UN),アラブ連盟,地中海連合(UfM),MENAイニシアティブに取り組む経済協力開発機構(OECD),国際通貨基金(IMF)及び世界銀行(WB)が,このパートナーシップの経済面の柱を支援するマルセイユ共同宣言に署名したその他国際・地域金融機関(注)と協力し,このパートナーシップに参加することを歓迎する。
  6. パートナーである我々は,政治的及び経済的な側面のいずれにおいても,真に長期的な影響のある具体的な成果をもたらすパートナーシップを実施することを望む。
  7. このパートナーシップの政治面の要素は,特に法の支配,人権,腐敗対策,市民社会の支援,若年層及び女性の能力強化といったガバナンス改革の促進を通して,各国が民主主義の基盤を確立していくにあたり,これら各国の要請に応えるものである。
  8. このパートナーシップの経済面の要素は,一連の行動と広汎な国際金融機関の前例のない動員という形をとっている。これは,経済・社会統合を指向する幅広くかつ持続的な成長モデル,経済の近代化及び地域・グローバル経済への統合を促進することによって,改革中の政府が国民の願望に応えることを手助けする。我々は,これらの改革が,改革中の国々における最も貧しく脆弱な人々に裨益するものとなり,地域における経済成長及び統合を促進すると強く信じている。

これらの目標を達成するため,パートナーシップは,関連の分野の進捗を支援する:

法の支配の強化

  1. 対象国の要請に応えるため,我々は,特に法の下の平等に基づく法の支配の強化,権力分立,自由で公正な選挙プロセス及び司法制度の独立につながると我々が信じる,必要な憲法・制度改革に対する支援を提供する用意がある。この支援には,選挙支援及び行政能力開発支援も含まれ得る。我々はまた,地方分権及びよりバランスの取れた地方開発に向けた,地方による進行中のイニシアティブを支援する。
  2. 我々は,透明性,開放性及び一連のプロセスへの有意義な国民参加,及び腐敗対策に関する改革を実現するために支援を提供する用意がある。そのため,国連腐敗防止条約(UNCAC),国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約及びその他の政府の高潔性及び透明性に関連する制度等,腐敗対策に関する国際的な制度への加盟及びその履行も意味がある。我々は,盗難資産の返還を確保するための国際的コミットメントを履行するとともに,断固たる適切な二国間の行動をとること,及び世銀と国連による盗難資産回復イニシアティブを促進することを通して,チュニジア及びエジプトがこれらの資産を回復することを支援する。
  3. 我々は,移行期にある諸国において,意見・表現・結社・集会の自由及び安全かつ安心して信教の自由を行使する権利を含む基本的自由の擁護に向けた改革に対する支援を強化する用意がある。報道及びメディアの自由は,移行期にあるパートナーシップ諸国において現在取り組まれている改革の鍵となる要素である。

市民社会の支援

  1. 我々は,政府と市民社会の間で進行中の対話を支援し,市民社会の間の対話の促進を支援していく。その際には,特に,11月21~22日にクウェートで,閣僚レベルの会合がある「未来のためのフォーラム」の過去の及び進行中の作業も踏まえて進める。地域における最近の変化に応え,これを反映し,パートナーシップのメンバーの間の対話を促進することを支援するために,我々は,本年開催された3つの市民社会のワークショップの取組を歓迎し,市民社会がフォーラムに提出する勧告に期待している。
  2. 我々はまた,「文明の同盟」イニシアティブへの貢献を含む,地域内においてアンナ・リンド基金が進めているイニシアティブを歓迎する。この地域における能力開発への要請が取り上げられる。移行プロセスにおける,女性の役割と地位に特別な注意が払われる。

教育及び職業訓練の発展

  1. 教育と職業訓練は,パートナーシップによる取組の鍵となる。地域経済の近代化を促進する有能な労働力を確保するため,我々は教育の質を向上し,若年層の非識字と失業に対処し,民間部門の協力を得て労働市場指向の職業訓練を行うために支援を提供する用意がある。我々は,経済協力開発機構(OECD)の生徒の学習到達度調査(PISA)等のプログラムにより教育に関する政策改革の必要性を特定し,支援するOECD及び世界銀行が共同で行っている教育レビュー等の指標を設定する取組を奨励する。
  2. 我々パートナーは,我々の間での学生の移動を奨励し,教育・研究面の大学間の連携を強化することを追求する。2011~2012学年度に追加的に学生が選抜されたEUエラスムス・ムンドゥス及びテンプス・プログラム,ならびに地中海青年事務局(MYO)を含む二国間及び多国間のプログラムは,この政策の手段として追求される。職業訓練を含む失業者の技能を高めるプログラムについてのベスト・プラクティスの交換が奨励される。

経済発展の強化

  1. 我々は9月10日のマルセイユのドーヴィル・パートナーシップ財務大臣会合のコミュニケを歓迎する。我々は,この機に採択された,改革及び支援の経済・金融面のアジェンダの履行を支持することにコミットする。我々は,チュニジア,エジプト,モロッコ及びヨルダンにより共有された,各国の状況に合わせた計画を歓迎し,支持する。我々は特に,これらの計画の進展を通して,幅広い,多様な関係者の関与を確保するための協議プロセスの重要性を強調する。
  2. 我々は,国際通貨基金(IMF)によって得られる資金に加えて,パートナーシップを支援する拡大された国際・地域金融機関が,適切な改革努力を支持するため,2011~2013年に総額380億米ドルの支援をチュニジア,エジプト,モロッコ及びヨルダンにもたらすことができることに留意する。我々はまた,マルセイユの共同宣言に述べられているように,国際・地域金融機関の間の調整のためのプラットフォームを歓迎する。
  3. 我々は,凍結解除された資産をリビア国民の利益のために透明かつ責任を持って利用されることを確保するためのリビア当局の取組を完全に支持し,国連安保理決議及びその他関連する決定に基づいてリビアの資産凍結を解除することに強くコミットする。
  4. 我々は,2011年7月27日の理事会で提案された欧州復興開発銀行(EBRD)の地理的なマンデートの拡大を歓迎し,地域における移行を支援するにあたって同銀行の貴重な経験を確保することが不可欠であることにかんがみ,その迅速かつ効果的な実施を確保することを決意する。
  5. 移行プロセスにあるパートナー国を支援するため,二国間支援もまた活性化され強化されるべきである。我々は,既に発表されたパートナー国に対する二国間支援を歓迎し,時宜にかなった支援の実施にコミットする。各国が有する手段の範囲に差異があることを認識し,我々は二国間支援の提供者に対し,国別行動計画に述べられている国家戦略及び優先事項に併せた支援を行うことを求める。

地域統合及びグローバルな統合の支援

  1. 地域統合及びグローバルな統合の促進は,我々のパートナーシップのもう一つの重要な側面である。これは地域及びグローバルなレベルの政治,経済,貿易,文化及び協力という相互補完的な二形態からなる。
  2. 政治レベルにおいては,アラブの春に関するG8ドーヴィル宣言で述べられたように,我々は既存の議員間フォーラムの再活性化,及び市民と市民との間の具体的な結びつきを構築する手段として,地方当局間の地域における協力の発展を支援する。
  3. 我々は,特に民間部門の発展を含むパートナー国の経済発展において,地域統合及びグローバル統合が重要であることを強調する。これは,地域内においても,また域外のパートナーとの間でも行動を必要とする。この観点から,我々は貿易及び投資における障壁の削減を含む各々の二国間及び多国間イニシアティブを促進し,補完することにコミットする。我々は,進行中の貿易交渉及びパートナー国におけるさらなる地域統合及びグローバルな統合に向けた取組の促進を支援する。

    グローバルな取組:

    • EUは,民主主義及び共有された繁栄のためのパートナーシップの下で,より幅広い相互市場アクセスの機会及びEUとの経済統合をもたらし,長期的には共通の経済環境を作り出すために,関心を有する地中海南側の諸国との間で貿易及び投資を深化させるイニシアティヴをとっている。これは,短期的には現行の貿易交渉の加速,汎欧州・地中海特恵原産地規則の早急な改正,投資の促進,及び深化した包括的自由貿易協定の立ち上げを目指すEUによる提供を含み,中長期的には,相互の利益となる諸分野において,南部の近隣国の経済のEU単一市場との漸進的な統合を目的とする。同時に,EU加盟国はMENA諸国との貿易及び投資を積極的に促進している。地中海連合は,具体的なプロジェクトを通して地域統合に貢献する。
    • 米国は,包括的な貿易投資パートナーシップ・イニシアティヴをこの地域に立ち上げることにより,既存の協定(チュニジア及びリビアとの貿易投資枠組協定,エジプトとの戦略的経済パートナーシップ,チュニジア,エジプト及びヨルダンとの間での二国間投資協定,モロッコ及びヨルダンとの自由貿易協定等)を基盤として,域内貿易をさらに促進し,米国市場との統合を促進し,高水準の改革と貿易自由化を採用する国々に対する地域貿易協定を構築への扉を開く。
    • 日本は,特に日本・アラブ経済フォーラムを通じて,中東・北アフリカ諸国と共同で貿易及び投資を促進している。さらに,日本はインフラ,産業多角化等の分野においてMENAパートナー諸国と共に取組を継続する。
    • ロシアは,2007年の資本投資の相互促進及び保護に関する協定に基づくヨルダンとの貿易投資協力の促進,並びに貿易,経済,産業,科学及び技術的協力促進のための長期計画に基づくエジプトとの貿易及び投資協力の促進に向け,積極的な措置を取っている。ロシアは,地域協力及び社会開発のプロジェクトを模索するため,アラブ連盟との協定を活用する。
    • カナダ・ヨルダン自由貿易協定は,承認のために議会で審議中であり,モロッコとの二国間自由貿易協定のための議論が,最近開始された。また,カナダとチュニジアは対外投資促進・保護協定に向けた交渉開始に合意した。
    • トルコは,自由貿易及び査証簡素化に関するものを含む既存の二国間協定または合意する予定の協定の文脈の中で,貿易,投資,エネルギー,観光,交通,通信,キャパシティ・ビルディング,教育,及び文化の分野における協力の強化を通じて,MENA諸国との関係を深化させ多様化させる取組を強化している。

    域内での取組:

    • MENA地域における経済統合の増大は,経済の発展と人々の福祉に貢献する。我々は,国際的な基準に従って統合の水準を高めるための関係国の試みを支援する。
    • 二つの準地域的機構が既に地域統合を促進している:アラブ・マグレブ連合(AMU)及び最近ヨルダン及びモロッコとの統合を深化するための計画を発表した湾岸協力会議(GCC)である。また,地域統合を強化するため,例えばエジプト,ヨルダン,モロッコ及びチュニジアの間のアガディール協定や大アラブ自由貿易協定(GAFTA)等も締結された。
    • MENA地域全体では,アラブ連盟及びその新たな事務総長は,各々のマンデートに基づき,この問題に対応することを決定した。
  4. 我々は,マルセイユの財務大臣会合が地中海統合センターに対し,世界銀行の知見を活用し,イスラム開発銀行とのパートナーシップの下で,2012年早期までに分析レポートを作成すること及び貿易・対外直接投資推進のための適切な枠組の早期構築に向けた短期・中期勧告を提出することを委託したことを歓迎する。全ての関係者の間で協議が行われる。

実施及びフォロー・アップ・プロセス

  1. 我々外務大臣は,共に移行を支援し,政治的,経済的及び社会的改革の成功を確保するための関連イニシアティブに対する取組を継続する。我々は,特にドーヴィル・パートナーシップの実施に関する対話を通じて,進展をフォローする。そのため,我々は相互協力の精神に基づき,パートナーシップの下でフォローアップを行い,進捗につき毎年アップデートする。外務高級実務者は適宜フォローアップを行う。チュニジア,エジプト,モロッコ,ヨルダン及びリビアは,ドーヴィル・パートナーシップの実施をフォローするため,パートナー国の大使及び代表との会合を定期的にかつ適宜主催する。
  2. この点,ドーヴィル・パートナーシップの政治的・経済的構成要素の継続性及び一貫性は必要不可欠である。外務大臣及び財務大臣はMENA諸国の改革プロセスを支援し,同パートナーシップの重要な機運を維持するため,互いに緊密に協力する。また,外務大臣及び財務大臣は,「未来のためのフォーラム」における取組を活用する。定期的なアップデートがドーヴィル・パートナーシップのメンバー国首脳に提供される。
  3. 我々は,マルセイユで署名された国際・地域金融機関による共同宣言を補完する,ガバナンス改革及び地域統合を強化するための取組に向けた,さらなる協力及び連携のための国連,アラブ連盟,及び経済協力開発機構(OECD)による,各機関のマンデートに基づく共同行動宣言を歓迎する。パートナー国の同意に基づき,共同行動宣言は他の機関にも開放されうる。また,我々はこれらの機関による貢献に期待する。我々は,共通の取組を支援するために創設されたこれらの二つの基盤が,共通の利益に関する分野で適宜相互に作用することを保証する。
  4. 我々は,米国の議長の下で,2012年に再びパートナーシップ会合を開催する。

(注)アフリカ開発銀行(AfDB),アラブ経済社会開発基金(AFESDC),アラブ通過基金(AMF),欧州復興開発銀行(EBRD),欧州地中海都市パートナーシップ制度(FEMIP),イスラム開発銀行,国際通貨基金(IMF),OPEC国際開発基金(OFID),及び世銀,国際金融公社(IFC),多数国間投資機関(MIGA)を含む世界銀行グループ。


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玄葉外務大臣のG8外相会合(ドーヴィル・パートナーシップに関する閣僚級フォローアップ会合)出席 | 目次へ戻る