
核不拡散・核軍縮に関する安保理首脳会合(概要と評価)
平成21年9月25日
1.概要
- 安保理首脳会合(以下統一)が開催されるのは6回目。核軍縮・不拡散をテーマとするのは初めて。今回の安保理サミットは、オバマ米大統領のイニシアティブで開催され、同大統領が議長を務めた(9月の議長国は米国)。
- 常任理事国5か国及び非常任理事国10か国中9か国(リビアのカダフィ指導者は欠席し、国連常駐代表が代理出席)の首脳に加え、潘基文国連事務総長とエルバラダイIAEA事務局長が出席。
- 鳩山総理が英語でスピーチ(日本語版
・英語版
)(首相官邸ホームページへリンク)を行った。
- 会合の冒頭、核軍縮・不拡散に関する安保理決議を全会一致で採択(決議第1887号)。
2.各国代表による発言のポイント
- オバマ大統領のイニシアティブによる、時宜を得た安保理サミット開催を歓迎する発言が相次いだ。核軍縮・不拡散に国際社会として取り組んでいく機運を高める上で有意義な会合となった。
- 採択された安保理決議(以下4.参照)の内容を評価し、「核兵器のない世界」に対するコミットメントを確認するとともに、核保有国による軍縮の進展等具体的な行動につなげていく必要を強調する発言が多く見られた。また、核軍縮・不拡散とともに、原子力平和利用の権利を尊重すべしとの発言も多数あった。
- 米露首脳からは、STARTⅠ後継条約への言及があり、メドヴェージェフ露大統領からは、本年12月までに署名したいとの意向が表明された。
- 胡錦濤中国国家主席は、米露の核軍縮を要請したほか、無条件の先制不使用と消極的安全保証政策を強調した。
- ブラウン英首相は、核搭載潜水艦数を4から3に減らすことを表明。また、最小限の核抑止力を保持すると述べた。
- 北朝鮮及びイランの核問題に対する懸念が多数表明されるとともに、これら両国による関連安保理決議の遵守・履行を呼びかける発言が相次いだ。
3.鳩山総理の発言
- 非核三原則を堅持。日本は核廃絶に向けて先頭に立つ。
- 核保有国による核軍縮を求める。
- CTBTの早期発効、カットオフ条約の早期交渉開始を強く訴える。
- 日本自身が核軍縮・不拡散を主導する積極外交を展開する。
- 新たな核拡散の動きに積極的に対応する。
- 原子力平和利用に当たり、保障措置・核セキュリティ・原子力安全(3S)について最高水準の遵守が必要。
採択された安保理決議第1887号は、以下のとおり、核軍縮、核不拡散、原子力平和利用、核セキュリティといった主要分野を広くカバーした、バランスの取れた内容となっている。
- 「核兵器のない世界」に向けた条件を構築することを決意。
- NPTの重要性を再確認。NPT非締約国に対して、非核兵器国としての加入を要請。
- 市民社会がNPTの目的を推進する上で行っている貢献に留意。2010年NPT運用検討会議でNPT体制を成功裏に強化できるよう協力することを呼びかけ。
- すべての国が核実験を行わず、CTBTを署名・批准し、早期発効することを要請。
- カットオフ条約の早期交渉を要請。
- 北朝鮮及びイランに関する安保理決議を再確認(具体的な国・地域名には言及せず)。
- IAEAの重要性を強調。追加議定書への署名・批准・実施を要請。
- 保障措置・核セキュリティ・原子力安全の各項目について最高レベルの規準を遵守しつつ原子力平和利用を推進することを奨励。
- 核テロへの懸念を表明。機微物質や技術の移転管理、金融・輸送面などですべての国が具体的措置を講じていくことを呼びかけ。