
2010年12月の国連安全保障理事会の主な動き(議長国:米国)
イラク
- 15日,バイデン米国副大統領が議長を務め,安保理イラク・ハイレベル会合(閣僚級会合)が開催され,日本からは徳永政務官が出席した。同会合では,イラク開発基金の枠組み(2003年戦争後のイラク復興の資金管理の枠組み)を2011年6月30日に終了させること等を内容とする決議第1956号,及び決議第687号及び同第707号(いずれも1991年採択)における大量破壊兵器,ミサイル,民生の原子力関連の措置を終了させることを内容とする決議第1957号を,それぞれ全会一致で採択した。また,事務総長に対し,オイル・フォー・フード計画(OFFP)の全ての残余活動を終了させるために必要な行動をとるよう要請する内容の決議第1958号を,賛成14カ国,反対0,棄権1カ国(仏)で採択した。また,これらの決議採択にあたっての安保理の認識と国連イラク支援ミッション(UNAMI)への支持を表明する議長声明(S/PRST/2010/27)を発出した。
- 17日,イラク・クウェート間の行方不明者・逸失財産問題を担当するタラソフ調整官のブリーフィングを受け,同調整官の活動の経費支出を更に6ヶ月間継続するとの事務総長の勧告を支持する内容のプレス・ステートメントを発出した。
- 21日,イラクにおける新政権の樹立を歓迎するプレス・ステートメントを発出した。
ゴラン高原
- 22日,ゴラン高原に展開する国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)のマンデートを6カ月間,
延長する決議第1965号を全会一致で採択した。同時に,包括的和平が達成されない限り現地の緊張状態が続くとの認識を示す議長声明(S/PRST/2010/30)を発出した。
キプロス
- 14日,国連キプロス平和維持隊(UNFICYP)のマンデートを2011年6月15日まで6カ月間延長すること等を決定する決議第1953号を,賛成14カ国,反対1カ国(トルコ),棄権0で採択した。
コートジボワール
- 2日,コートジボワール大統領選挙決戦投票が実施されたことを受けプレス・ステートメントを発出。7日には,国連コートジボワール活動(UNOCI)のチョイ事務総長特別代表(SRSG)より,決戦投票の実施状況等につきブリーフを受け,選挙結果やその認証に関する自身の取組についてブリーフィングが行われた後,同SRSGの役割を支持し,ウワタラ氏を当選者と認めたアフリカ連合(AU),西アフリカ経済共同体(ECOWAS)の決定を踏まえ,暫定選挙委員会が発表した国民の意思を尊重するよう求めるプレス・ステートメントを発出した。16日には,現地の暴力事態の発生を懸念するプレス・ステートメントを発出した。
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20日,UNOCIのマンデートを2011年6月30日まで延長することを決定する等の内容の決議第1962号を,全会一致で採択した。また決議採択後,UNOCIや文民への攻撃に深い懸念を表明し,責任者が処罰されるであろう旨警告するプレス・ステートメントを発出した。
ソマリア
- 22日,アフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)の展開を2011年9月30日まで維持することを決定し,アフリカ連合(AU)加盟国に対し,AMISOMの兵力を8千名から1万2千名に増加することを要請すること等を内容とした決議第1964号を全会一致で採択した。
ブルンジ
- 16日,国連ブルンジ事務所(BNUB)を2011年1月1日から12カ月のマンデートをもって設立する決議第1959号を,全会一致で採択した。同事務所は,これまでブルンジで活動していた「国連ブルンジ統合事務所(BINUB)」を縮小・改名したもの。9日には,退任するペトリー事務総長執行代表(ERSG)よりこの間の現地情勢につきブリーフィングが行われた。
中央アフリカ
- 14日,国連中央アフリカ平和構築統合事務所(BINUCA)のマンデートを1年延長する議長声明(S/PRST/2010/26)を発出した。8日には,ゼウデSRSGよりこの間の現地情勢につきブリーフィングが行われた。
チャド・中央アフリカ
- 14日,国連中央アフリカ・チャド・ミッション(MINURCAT)のマムードSRSGより,MINURCATの終了にあたってのブリーフィングが行われ,20日,同ミッションの成果とチャドによる努力を歓迎・奨励し,チャド及び中央アフリカへの支援を呼び掛ける議長声明(S/PRST/2010/29)を発出した。
リベリア
- 17日,リベリアに対する制裁措置及び制裁委専門家パネルのマンデートを12ヵ月間延長すること等を内容とする決議第1961号を,全会一致で採択した。
スーダン
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16日,ルロワPKO局長とムカパ国連監視・評価パネル議長によるブリーフィングが行われ,1月9日予定の南部スーダン住民投票の有権者登録が無事終了したことを歓迎するとともに,議長声明(S/PRST/2010/28)を発出した。
- 9日,決議第1593号に基づくオカンポ国際刑事裁判所(ICC)首席検察官からの定期報告が行われた。
国連西アフリカ事務所(UNOWA)
- 17日,国連西アフリカ事務所(UNOWA)のジニットSRSGより,過去6か月間のUNOWAの活動につきブリーフィングが行われた。
北朝鮮
- 朝鮮半島における緊張の高まりを受け,19日,安保理緊急会合として非公式協議及び非公開会合が断続的に開催された。非公開会合には,韓国及び北朝鮮の代表も出席した。
イラン
- 10日,決議1737(イラン制裁)委員会議長である日本の西田国連大使が制裁委員会の活動に関する90日毎の定期報告を行った。更に,西田大使より,過去2年間の議長の所見として,(1)過去2年間で最も大きな動きは決議第1929号採択であり,同決議に基づき発足した専門家パネルが活発に活動するための環境整備が重要である点,(2)決議上の加盟国の義務やパネルの果たす役割についての認識を共有することが重要である点,(3)委員会の活動を対外的に示し,加盟国の強い支持を得るためにも,各種の公開ブリーフィングを積極的に開催することが重要である点等を述べた。
中東情勢
- 14日,セリー特別調整官よりブリーフィングを行い,パレスチナ・イスラエル両者間の直接交渉が再開されない現状に対する懸念を示しつつ,イスラエルによる東エルサレムの住宅建設許可等の情勢を説明の上で,両者が協議を進展させる重要性等につき述べた。
アフガニスタン
- 22日,国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)のデ・ミストゥーラSRSGより,アフガニスタン情勢とUNAMAの活動につきブリーフィングが行われた。この中で,特に,9月の下院議会選挙に関し,日本を含む各国が選挙結果の認定の公表を歓迎した点に言及した上で,カルザイ大統領による来年1月末までの議会招集の意図表明を歓迎すると述べた。各国からは,NATO首脳会議の結果についての肯定的評価,2014年以降の国際社会の関与の継続の提起,和解・再統合のための支援の継続の必要性についての発言があった。
会合後,下院議会選挙の最終結果発表を歓迎しつつ,アフガンのすべての機関が法と憲法に従って権限の範囲で活動を継続することを期待する旨のプレス・ステートメントを発出した。
ハイチ
- 10日,選挙後における暴力行為の発生に懸念を表明するプレス・ステートメントを発出した。
旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)・ルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)
- 6日,旧ユーゴ及びルワンダ国際刑事裁判所(ICTY・ICTR)の完了戦略の実施状況等について,両裁判所の所長及び首席検察官からのブリーフィングと,それに基づく討論が行われた。
- 14日,ICTYの判事2名及びICTRの判事3名が,その任期終了後も,現在担当中の事件が終了するまで任務を継続することを承認する決議第1954号及び第1955号を採択した。
- 22日,両裁判所がその活動を2014年までに完了すること,および,完了後に残すべき機能を請け負うための残余メカニズムを設置し,ICTRのための支部は2012年7月,ICTYのための支部は2013年7月にそれぞれ機能を開始することを決定する決議第1966号を,賛成14,反対0,棄権1(露)で採択した。
テロ
- 20日,テロ対策委員会事務局(CTED)の活動期間を2013年12月31日まで延長する決議第1963号を全会一致で採択した。
女性・平和・安全
- 16日と17日にわたって公開討論が行われ,16日,紛争下の女性に対する暴力の防止・取り締まり・監視を求める事等を内容とする決議第1960号を全会一致で採択した。
下部機関の報告
- 20日,2010年で任期を終える安保理非常任理事国が議長を務める安保理下部機関の活動について,各議長から報告が行われた。
ホルブルック元大使の逝去
- 14日,米国のホルブルック元国連大使(米国のアフガニスタン・パキスタン特別代表)の逝去に弔意を示すプレス・ステートメントを発出した。
若者との対話
- 21日,安保理の公式の行事ではないが,議長国米国のイニシアチブに基づき,ビデオメッセージ等を利用した安保理と世界の若者との対話が行われた。