
2010年6月の国連安全保障理事会の主な動き(議長国:メキシコ)
不拡散/イラン
- 9日、公式会合において、イランによる累次の安保理決議違反等を受けた同国への追加的な制裁措置を含む決議第1929号を採択した(賛成12カ国(含む日本)、反対2カ国(ブラジル、トルコ)、棄権1カ国(レバノン))。今回の決議は、イランに対する追加的な措置として、武器禁輸の拡大、弾道ミサイル開発の規制、資産凍結・渡航制限対象の拡大、金融・商業分野、銀行に対する規制の強化、貨物検査等、包括的な制裁措置を含む内容となっている。これに先立つ7日及び8日には本件に関する非公式協議、8日には非公開の公式会合が開催された。
- 28日には、決議1737(イラン制裁)委員会議長(我が方高須大使)より、安保理に対する90日毎の定期報告が行われた。
不拡散/北朝鮮
- 7日、決議第1874号の要請により事務総長が設置した決議1718(北朝鮮制裁)委員会専門家パネルのマンデートを2011年6月12日まで1年間延長する決議第1928号を全会一致で採択した。
ハイチ
- 4日、国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)の警察要員を更に680人増員し、全体規模を軍事要員8,940人(注:従来通り)、警察要員4,391人(注:680人増)とする内容の決議第1927号を全会一致で採択した。
キプロス
- 15日、国連キプロス平和維持隊(UNFICYP)のマンデートを2010年12月15日まで6カ月間延長すること等を決定する決議第1930号を採択した(賛成14カ国、反対1カ国(トルコ))。
コートジボワール
- 30日、国連コートジボワール活動(UNOCI)のマンデートとUNOCIを支援する仏軍部隊への権限承認を本年12月31日まで延長するとともに、右期限までにこれを見直し、UNOCIに関する事務総長報告(S/2010/245)に記載されたすべてのオプションを検討する用意があることを表明する決議第1933号を全会一致で採択した。
ゴラン高原
- 30日、ゴラン高原に展開する国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)のマンデートを2010年12月31日まで延長する決議第1934号を全会一致で採択した。同時に、包括的和平が達成されない限り現地の緊張状態が続くことを認識する議長声明(S/PRST/2010/12)を発出した。
旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)/ルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)
- 29日、旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)の裁判官任期延長等に関する決議第1931号、及びルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)の裁判官任期延長等に関する決議第1932号をそれぞれ全会一致で採択した。
- 18日には討論が行われ、ロビンソンICTY所長及びバイロンICTR所長より、裁判官の任期延長の必要性をはじめ、それぞれの裁判所の完了戦略の現状と残る課題等につき説明が行われた。
国際司法裁判所(ICJ)
- 29日、史久鏞(Shi Jiuyong)判事の辞任に伴う補欠選挙が行われ、薛捍勤(Xue Hanqin)候補が安保理、総会それぞれで絶対多数を獲得した結果、判事に選出された。
- 2日には、バーゲンソール判事が2010年9月6日を以て辞任することに伴い生じる空席を補充するための補欠選挙を、2010年9月9日に安保理会合並びに第64総会会期中の総会会合において行うことを決定する決議1926号を無投票で採択した。
中東情勢
- 5月31日、イスラエル沖公海上で、パレスチナ支援船団とイスラエルとの間で衝突が起き、多数の死傷者が発生したことを受け、同日、安保理は緊急の公開会合を開催。引き続き断続的な非公式協議を開催した後、6月1日未明に公式会合を開催し、少なくとも文民10名の死者と多数の負傷者が出る結果となった行動を非難し、迅速で中立的な国際的基準にしたがった調査を要請すること等を内容とする議長声明(S/PRST/2010/9)を発出した。
- 15日、セリー特別調整官より安保理理事国に対しブリーフィングが行われた。同ブリーフィングでは、上記ガザ船団事件に関する調査につき、事務総長は国際的な調査団を構成して調査を行うとの考えをトルコ及びイスラエルに提示した点、イスラエルが発表した調査に留意しており、国内的な調査と事務総長提案調査は補完的であるとの考えの下、事務総長の提案は引き続き有効である旨説明があった。
児童と武力紛争
- 16日、エスピノサ・メキシコ外相を議長として公開討論が行われ、武力紛争下における児童の徴兵・殺傷・強姦その他の虐待行為を強く非難し、事務総長に対し監視報告メカニズムの強化等を呼びかける議長声明(S/PRST/2010/10)を発出した。
正義と法の支配
- 29日、公開討論が行われ、正義と法の支配に関するこれまでの安保理の取組を再確認する議長声明(S/PRST/2010/11)を発出した。
スーダン
- 11日、決議第1593号に基づく国際刑事裁判所(ICC)首席検察官の定期報告を受け、ハルーン・クシャイブ事件につきICCがスーダン政府の協力の欠如を認定し、安保理に通報を行った事などが報告された。
- 14日、ムベキ・アフリカ連合(AU)ハイレベルパネル議長、メンケリオス国連スーダン・ミッション(UNMIS)事務総長特別代表(SRSG)、ガンバリ・ダルフール国連AU合同ミッション(UNAMID)SRSG、バソレ国連AU合同調停官の出席を得てブリーフィングが行われた。
- 22日、21日に発生したUNAMIDへの攻撃でルワンダ要員3人が死亡、1人が負傷した事件を強く非難するプレス・ステートメントを発出した。
中央アフリカ
- 28日、ゼウデSRSGから過去半年の現地情勢及び国連中央アフリカ共和国統合平和事務所(BINUCA)の活動状況につきブリーフィングを受け、先般の選挙の延期について留意した上で、中ア政府に対して早期に新たな選挙日程及び選挙予算の採択を行うことを呼びかけるプレス・ステートメントを発出した。
アフガニスタン
- 30日、公開会合においてデ・ミストゥーラSRSGから、UNAMAの活動として、9月の下院議会選挙への支援の状況、対話の推進、地域対話、支援の整合性をはじめとするUNAMAの活動状況につき説明が行われた。これに続き、各国の間で、6月21~24日の安保理ミッションの内容に加え、同ミッションでアフガニスタン側から高い関心が示された、1267委員会(タリバーン・アル・カーイダ制裁委員会)からの対象者削除問題等が話し合われた。
イラク
- 3日、イラク連邦高等裁判所による、3月7日に行われた国会選挙結果の承認を受け、これを歓迎し、イラクのすべての政治団体に対し、選挙結果を尊重し、イラクの政治指導者が出来るだけ早期に政府樹立に向けた政治プロセスに関与するよう要請する内容のプレス・ステートメントを発出した。
- 15日、イラク・クウェート間の行方不明者・逸失財産問題に関するタラソフ調整官のブリーフィングを受け、同調整官の活動経費負担を2010年12月15日まで延長することに合意した旨表明するプレス・ステートメントを発出した。
ジブチ・エリトリア
- 11日、ジブチ・エリトリア間の国境紛争に関し、非公式協議にてゼリフーン政務局次長よりブリーフィングを受けた後、同紛争に関するカタールの仲介努力を歓迎・支持するプレス・ステートメントを発出した。
ブルンジ
- 23日、5月に行われた地方選挙に多くの国民が参加したことを評価し、全てのブルンジ関係者が、選挙プロセス、特に7月23日・28日に行われる下院・上院選挙に参加するよう慫慂するプレス・ステートメントを発出した。