
2010年5月の国連安全保障理事会の主な動き(議長国:レバノン)
ネパール
- 12日、国連ネパール政治ミッション(UNMIN)のマンデートを2010年9月15日まで延長すること等を内容とする決議第1921号を全会一致で採択した。同ミッションは、右期限まで、ネパール政府とマオイストとの間の包括和平合意に基づく武器及び兵士の管理の監視等への支援を継続する。
- 5日には、ラングレン事務総長代表(RSG)より、最新情勢のブリーフを受けた。
チャド・中央アフリカ
- 25日、国連中央アフリカ・チャド・ミッション(MINURCAT)のマンデートを2010年12月31日まで延長しつつ、7月15日までにチャド東部の軍事要員を(現行の実員3300人から)1900人まで縮小し、右を含めた全要員を10月15日以降、年内に撤退する内容の決議第1923号を全会一致で採択した。本決議以降、これまでMINURCATが担ってきた文民保護任務は、チャド政府が行うこととなっている。(なお、5月15日となっていたMINURCATのマンデート期限は、決議第1922号により、5月26日まで技術的に延長されていた。)
コートジボワール
- 27日、国連コートジボワール・ミッション(UNOCI) のマンデート及び同国に駐留する仏軍に対して与えられている権限承認を2010年6月30日まで延長する決議第1924号を全会一致で採択した。
コンゴ(民)
- 28日、国連コンゴ(民)ミッション(MONUC)のマンデートを2010年6月30日まで延長し、且つ7月1日以降、同ミッションを国連コンゴ(民)安定化ミッション(MONUSCO)と改称し、2011年6月30日までの展開を承認する決議第1925号を全会一致で採択した。
- これに先立つ19日には、今月13日から16日にかけてコンゴ(民)を訪問してカビラ大統領等と協議を行った安保理ミッションの結果につきリード国(仏)から報告を受けた。
中東情勢
- 31日、イスラエル沖公海上で、パレスチナ支援船団とイスラエルとの間で衝突が起き、多数の死傷者が発生。本事案を受け、同日(日本時間6月1日)、安保理は緊急の公開会合を開催。引き続き断続的な非公式協議を開催した後、6月1日未明に公式会合を開催し、少なくとも文民10名の死者と多数の負傷者が出る結果となった行動を非難し、迅速で中立的な国際的基準にしたがった調査を要請すること等を内容とする議長声明(S/PRST/2010/9)を発出した(6月1日付となったため議長国メキシコの下で発出)。
ブルンジ
- 10日、国連ブルンジ統合事務所(BINUB)のペトリー事務総長執行代表(ERSG)より、ブリーフィングが行われ、同国の選挙プロセスは順調に進展していること、1.7百万ドルの選挙資金ギャップがあること(日本の支援にも言及)、選挙後も同国の経済社会的課題は残ること、新政権発足後の同国における国連プレゼンスの在り方につき協議を始めたこと等を説明。安保理は、同国の選挙実施に向けた進展を評価し、当事者に対し暴力の予防に努めるよう呼びかけるプレスステートメントを発出した。
スーダン
- 20日、ダルフール国連AU合同ミッション(UNAMID)のガンバリ国連・AU共同代表よりブリーフィングを受け、現在局地的ながらダルフール3州にて武装勢力とスーダン国軍との衝突が発生していること、UNAMID要員や人道支援関係者に対する攻撃や誘拐に対して、UNAMIDはより力強く対応すること、マンデート履行に際しての4つの重点分野(文民保護、和平プロセス支援、チャド・スーダン関係の維持、早期復興・開発促進)等につき説明した。
- 7日には、南ダルフール州でUNAMID護衛隊に対する武装グループによる襲撃により、UNAMID要員2名死亡・3名が重傷を負った事件を強く非難するプレスステートメントを発出した。
ソマリア
- 12日、討論が行われ、アブダラ事務総長特別代表(SRSG)からは、イスタンブールにおけるソマリア復興開発会合の重要性、ソマリア治安機関及びアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)の現状、ソマリア暫定政府(TFG)の今後の課題、人道支援阻害が容認できないこと、等を説明した。また、イブラヒム・ソマリア「第一副首相」兼漁業・海洋資産「大臣」及びラマムラAU平和安全保障委員からの説明が行われるとともに、各国からソマリアの現状について発言がなされた。
コソボ
- 17日、討論が行われ、国連コソボ暫定行政ミッション(UNMIK)のザニエSRSGより、国際会議をめぐるコソボの地位問題、北部地域の政治・治安状況、難民帰還状況(ザチェにおける投石事件を含む)及びコソボの政治機構の近況(北部自治機構と中央の関係や3月の内閣改造)に関する詳細な報告を行った。理事国の他、イェレミッチ・セルビア外相とヒセニ・コソボ外相が発言した。
アフリカにおける平和と安全(ジブチ)
- 19日、ゲレ・ジブチ大統領の出席を得て、ブリーフィングが行われ、同大統領より、アフリカの角地域について、特にソマリア情勢、エリトリアの行動等の不安定化要因があることを説明した。理事国各国は、この地域の安定に向けたジブチの取り組みや、ソマリア沖海賊対策における同国の役割等を評価する発言を行った。
ボスニア・ヘルツェゴビナ(BH)
- 24日、討論が行われ、インツコ上級代表より、金融危機による経済の低迷による影響に懸念を示した他、スルプスカ共和国の対応をデイトン合意に背くものとして批判、また10月の総選挙が成功裡に進められる重要性等のブリーフィングが行われた。他にシライジッチBH大統領評議会議長を含む安保理理事国代表とクロアチア、セルビア、EUが発言した。
イラク
- 25日、国連イラク支援ミッション(UNAMI)のメルケルトSRSGよりブリーフを受け、3月に行われた議会選挙を含む最近のイラク情勢やUNAMIの活動状況につき説明が行われた。
国連と地域機関の協力
- 4日、アシュトンEU外交・安全保障政策担当上級代表よりブリーフが行われ、同代表は、EUの国連重視の姿勢と資金的・政治的貢献の実績を紹介し、EUが国連のなかで効果的な活動をできるよう、加盟国に対して協力を求めつつ、1)安全を促進し、脆弱な人々を保護し、安全で尊厳のある生活を支援するために国連と活動すること、2)EUと国連の連携は現場で実際の付加価値を示す形で進展、3)リスボン条約によりEUの潜在性は向上する旨の3点を強調した。
テロ関係3委員会の合同ブリーフィング
- 11日、決議1267(アル・カーイダ・タリバーン制裁)委員会、CTC(テロ対策委員会)及び決議1540委員会(核不拡散委員会)各議長(オーストリア、トルコ、メキシコ)からの合同ブリーフと討論が行われた。
平和と安全のための文化間対話
- 26日、ハリーリ・レバノン首相を議長として、本件議題に関するブリーフィングが行われ、潘基文事務総長も出席のもと、異なる文化間の対話が、紛争予防、紛争解決及び平和構築に果たし得る役割の重要性について、各国が意見を表明した。