科学技術
イーター(ITER)事業
令和4年7月20日
1.概要
環境への負荷が少なく持続可能なエネルギー源の一つとされる核融合の科学的,技術的な実証を目的として,実験炉を建設・運用する国際共同プロジェクト。多国間の国際約束であるイーター国際核融合エネルギー機構設立協定により独自の法人格を有する国際機関であるイーター機構が設立され,同機構が国際熱核融合実験炉「イーター」を建設,運転することとなった。現在,フランス・サン・ポール・レ・デュランスにイーターを建設中。
2.参加極
日本, EU,米国,韓国,中国,ロシア,インド
3.スケジュール
運転開始:2025年(予定),核融合反応:2035年(予定)
4.経緯
- (1)2001年11月,日,EU,露,加の4極により,イーター機構設立協定の締結及び,サイト選定等に向けた政府間協議を開始。2003年2月,米国がイーター交渉に再参加すると共に,中国が新規に参加した。その後,韓国(2003年6月),インド(2005年12月)が新規参加し,カナダが交渉から撤退した(2003年12月)。
- (2)イーター本体の建設地に関しては,日本(青森県六ヶ所村)と,EU(南仏サン・ポール・レ・デュランス)の2カ所の候補地の間で誘致交渉が行われたが,最終的には,2005年6月にモスクワで開催された6極閣僚級会合においてサン・ポール・レ・デュランスに建設することが決定した。
(年表)
1985年11月 | 米ソ首脳会談(レーガン・ゴルバチョフ)の共同声明が発端 |
1988年~2001年7月 | 概念設計活動及び工学設計活動を実施(米は1999年に計画から脱退。) |
2001年11月 | 政府間協議開始 |
2003年2月 | 米,中国が政府間協議に参加 |
2003年6月 | 韓国が政府間協議に参加 |
2003年12月 | カナダが交渉から脱退 |
2003年12月 | 第1回6極閣僚級会合(ワシントン)。イーター建設地に関する合意にいたらず。 |
2005年6月 | 第2回6極閣僚級会合(モスクワ)において,フランス・サン・ポール・レ・デュランスにイーターが建設されることが決定。 |
2005年11月 | 池田要駐クロアチア大使(当時)をイーター機構長予定者として選出 |
2005年12月 | インドが政府間協議に参加 |
2006年11月 | ITER機構設立協定,イーター特権免除協定署名。第1回暫定イーター理事会(パリ)。 |
2007年7月 | 第2回暫定イーター理事会(東京) |
2007年10月24日 | イーター協定発効 |
2007年11月 | 第1回イーター理事会(仏・サン・ポール・レ・デュランス),同理事会において池田要ITER機構長予定者を正式に機構長に任命。 |
2010年7月 | 臨時イーター理事会(仏・サン・ポール・レ・デュランス),スケジュール等について記したベースライン文書を承認,本島修氏を新機構長に任命。 |
2013年9月 | 閣僚級イーター理事会(仏・サン・ポール・レ・デュランス) |
2015年3月 | 臨時イーター理事会(仏・サン・ポール・レ・デュランス),ベルナール・ビゴ氏が機構長に就任。 |
2016年11月 | 第19回イーター理事会(仏・サン・ポール・レ・デュランス),スケジュール等について記したベースライン文書を暫定承認。 |
5.イーター事業実施の法的枠組み
2006年11月にパリにおいてイーター機構設立協定及びイーター特権免除協定が署名された。これらは,すべての署名者が,締結に向けた国内手続きを経て,国際原子力機関事務局長に批准書また受諾書等の寄託を行った後,30日後に発効することとなる。
我が国は,第166回国会の承認を得て,2007年5月にITER機構設立協定及びITER機構特権免除協定の受諾書の寄託を行った。
2007年9月,全ての参加極が寄託書をIAEAに寄託,10月にイーター設立協定は発効した。
6.イーター(ITER)の名前の由来
イーター(ITER)とは,当初,国際熱核融合実験炉(International Thermonuclear Experimental Reactor)の英語の頭文字をとった略語であったが,政府間交渉においては,(略語ではなく)イーター事業のために仏・サン・ポール・レ・デュランスに建設される国際熱核融合実験炉を意味する固有名詞として扱われることとなった。