平成18年6月29日
本年のG8外相会合は、6月29日(木曜日)、ロシア(モスクワ、外務省別館)において開催され、G8各国から外務大臣が出席した。(我が国からは、麻生外務大臣が出席。)
会合後、議長声明を発出(骨子仮訳、ポイント)。
イランの核問題につき、EU3+3よりイランに対して提示された包括的提案に対し、イランが公式に回答していないことに対する失望が多くの国から表明されるとともに、今後1週間が重要であるとの意見が表明された。また、7月5日に予定されているソラナEU共通外交安全保障上級代表とラリジャニ・イラン国家安全保障最高評議会書記との協議において、明確かつ実質的なイランの回答があることを期待することで一致するとともに、G8サミット前の7月中旬に本件に関する評価を行うことが必要とされた。麻生大臣からは、今後1週間が重要であるとの認識及びG8サミットまでにレビューを行うことが重要との認識にも賛意を示すとともに、自分(麻生大臣)はモッタキ外相と2回直接会ったが、ラリジャニ・イラン国家安全保障最高評議会書記に対する働きかけは重要と述べた。
麻生大臣より、北朝鮮の最近のミサイル発射に向けた活動を強く懸念しており、G8で緊密に連携しつつ、北朝鮮に対し自制を働きかけることが重要であると述べ、また、北朝鮮の問題はイランの核問題にも繋がる話であると指摘した。また、六者会合の場での協議再開が重要である旨述べた。同時に、CNN等で報じられているとおり、拉致を含む北朝鮮の人権状況を大いに懸念している旨述べ、拉致被害は我が国のみならず韓国、タイやレバノン等、国際的な広がりを持つ問題であり、その解決には国際的連携が必要であると指摘した。その上で、外相会合だけでなく首脳会合でも、成果文書の中に拉致問題の解決を求める明確なメッセージを盛り込むべきと主張した。これに対し、他の外相より我が国の発言を支持するとの意見が表明され、議長声明には拉致を含む北朝鮮の安全保障・人道上の問題に対する国際社会の懸念に北朝鮮が対応するとともに、既存の安全保障上のコミットメントを尊重するよう強く求める旨のメッセージが盛り込まれた。
パレスチナ武装勢力によるイスラエル兵士誘拐及び右を受けたイスラエルによるパレスチナ暫定自治政府閣僚等の拘束、ガザへの武力行使といった危機的な情勢への憂慮が各国より表明された。これを受け、G8としてパレスチナに対し、テロの暴力を終結させ、誘拐したイスラエル兵士を解放するよう求めるべきとの見解で一致するとともに、イスラエルに対しては、今回の危機に対し自制を求めるとともに、選挙で選ばれたパレスチナ政府閣僚や国会議員のイスラエルによる拘束に懸念を表明することで一致した。麻生大臣からは、イスラエル・パレスチナ双方の自制の必要性や犠牲となっている市民のために人道支援を続けることの重要性を強調した。
5月20日に発足した新政府の下、イラク人自身のオーナーシップと国際社会による一致団結した支援の必要性について議論が行われ、国連を中心とする国際社会が、イラク政府による国際的な「イラク・コンパクト」提案に応えることを含め、広範な支援を行っていくよう呼びかけることで一致した。また、イラクの地方における治安権限の委譲が行われたが、日本は前向きな貢献をしたとの発言もあった。麻生大臣より、「イラク・コンパクト」の考え方を支持し、日本として、今後、プロセスに積極的にかかわっていく用意があることを表明した。また、イラクにおいてロシア大使館員が殺害された事件に対し、各国より、これを強く非難するとともに、犯人の逮捕及び処罰の必要性につき発言があった。
最近の治安情勢の悪化に対する懸念が表明され、アフガニスタン政府による取り組みに対する期待が表明されるとともに、近隣国による建設的な役割への期待が表明された。また、6月26日~28日にモスクワで開催された「アフガニスタンからの麻薬ルートに関する会合」をはじめとして麻薬問題への取り組み、7月に東京で開催される非合法武装集団(DIAG)に関する「アフガニスタンの平和の定着に関する第2回東京会議」の重要性も指摘された。
麻生大臣から、4月末以降の急激な情勢の悪化を憂慮しており、今後、民主的プロセスを通じ、法に則り、混乱した同国の情勢が再び安定することへの期待を表明した。また、国際社会の支援が引き続き必要であり、国連緊急アピールへの対応の必要性を訴えた。さらに、国連の関与については、東チモール国民の自主性を尊重した形で進めるような関与が必要であるとして、G8各国のこの問題に対する注意を喚起した。
不拡散、テロ及び麻薬対策、拡大中東・北アフリカ構想、アフリカにおける平和維持能力開発、安定化と復興イニシアティブ、ナゴルノ・カラバフ、西バルカン、スーダン/ダルフール、北ウガンダ、ハイチ、小型武器の違法な空輸、グルジア、モルドバ及びベラルーシについて議論が行われた。