平成23年3月15日
G8外相は、3月14日及び15日にパリで会合を開催した。外相は、日本政府及び日本の人々に同情と哀悼の意を表明した。G8各国は災害の影響を乗り越えるためにあらゆる支援を日本に提供する用意がある。外相は、最新の状況に関する松本剛明日本国外務大臣の詳細な説明に感謝した。外相は、この危機を解決するための日本政府の能力に完全なる信頼を示し、日本の人々が示した勇気と威厳に敬意を表した。G8各国は引き続き状況を緊密に注視し、IAEAを通じたものを含めて、引き続き日本を支援するために行動する用意がある。
外相は中東及び北アフリカにおいて起こっている大きな変動について議論した。
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外相は、リビアの人々による民主主義及び繁栄の未来に対する正当な熱意を支持した。リビアの人々は、すべての人々と同様に、開かれたかつ民主的な形で指導者を選出する権利を有する。外相は、新たなるリビアを国際社会における完全なパートナーとして迎え入れ互恵的な関係を構築することを期待した。
外相は、カダフィ革命指導者に対し、リビアの人々による基本的権利、表現の自由、代表性を有する政府に関する正当な主張を尊重するように求めた。外相は、それがなされなければ深刻な結果をもたらし得ると警告した。外相は、国連安全保障理事会決議第1970号の全会一致での採択、リビアの国連人権理事会理事国資格を停止するとの国連総会の全会一致での決定及び国連事務総長特使の任命を賞賛した。外相は、すべての人道に対する罪を捜査するとの国際刑事裁判所(ICC)の決定を歓迎した。
外相は、国連安保理が、カダフィ革命指導者の軍事力による攻撃からリビアの人々を守ることを確保するための様々な措置について、喫緊の課題として検討していることを歓迎した。この関連で、外相は、リビアの人々を守り支援するための様々な措置を呼びかける最近のアラブ連盟の宣言を歓迎した。外相は、そのような如何なる努力においても地域の参加が重要であることを強調し、アラブ連盟との間で早急にフォローアップを行うことで一致した。外相は、カダフィ革命指導者が退くために、国連安保理が、経済的措置によるものを含めて圧力を強めるべきであることについても一致した。外相はまた、アフリカ連合(AU)による決定、湾岸協力会議(GCC)及びイスラム諸国会議機構(OIC)による宣言を想起し、地域機関と緊密に協調することを決定した。外相は、3月11日に欧州特別理事会により採択された宣言を歓迎した。
外相は、国連人権理事会における決議S-15/1の採択、とりわけリビアにおける全ての国際人権法規違反の疑いを調査するため独立国際調査委員会を緊急に派遣するとの決定を賞賛した。
外相は、リビア及びその近隣諸国に対して人道支援を提供するために既に実施されている全ての努力を歓迎した。外相は、この点でUNHCR及び世界食糧計画(WFP)の行動を賞賛した。外相は、更なる人道的措置を支持する用意がある。
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外相は、人々は民主主義への正統な熱意を有し、自らの生活に影響を与える決定に関与し自国の進展と繁栄に貢献したいと願っていることを認識した。外相は、平和的で民主的な移行を支援し、地域諸国との協力を再活性化する用意があることを表明した。外相は、民主主義は平和、安定、繁栄及び共有された成長への最善の道筋であり、それによって失われるものは何もないと深く確信している。
外相は、声を上げ変化を起こすためにこの地域の人々による勇気ある決然とした行動を賞賛した。これは世界の政治情景を変容させる可能性を有する、まさに歴史的重要性を帯びた運動である。全ての責任ある政府がこの機会を捉えるべきである。G8各国は、この機会を逃さないことを決意している。
特に、エジプト及びチュニジアが望むのであれば、G8各国は、民主主義への円滑で平和的な移行のために必要となる透明で民主的かつ公平な選挙プロセスの迅速な構築とその監視を含む民主主義への移行について支援を行い、彼らが地域の経済的・社会的課題に取り組むことを支援する用意がある。G8各国は、雇用を創出し国家財政を安定させ輸出市場をさらに開放するための緊急の社会的経済的及び財政的措置を支援するために、地域及び国際機関を動員する。
外相は、G8・拡大中東・北アフリカ(BMENA)構想「前進と共通する未来のためのパートナーシップ」の価値を確認し、地域の市民の熱意に応える政治的、経済的、社会的改革を支えるための政府、市民社会及びビジネスの間の協議と協力のメカニズムとしてのG8-BMENAプロセスに対するコミットメントを改めて表明した。
外相は、レバノンの統一性、主権、独立性に対する彼らの継続的なコミットメントを想起した。外相は、国連安保理決議第1757号によって設立された、独立した裁判所としてのレバノン特別法廷(STL)に対するコミットメントを再確認した。レバノン特別法廷は、妨害を受けることなく、レバノン政府と協力しながら、任務を継続しなければならない。外相は、その財源とするためのさらなる自発的な拠出を奨励した。
外相は、イランにおける民主的進展に対する継続的な抑圧、特にイランの反体制指導者であるミール・フセイン・ムサビ氏及びメフディ・カルビ氏並びに両名の妻の拘束と、平和的な抗議への抑圧に対して、深刻な懸念を表明した。外相は、両指導者及び自らの意見が聞かれることを求めたために逮捕された人々を釈放することをイラン当局に求めた。
外相は、この地域の出来事は質的に新しいパートナーシップに向けた機会を提供していると確信している。G8は、他とは異なり、政治及び経済的課題の両方に対処することに適している。我々は、万人のための平和的変革、共有された成長及び繁栄の拡大を支援するための具体的な措置を提供することに加わるよう他の国々にも呼びかける。互恵的で協調的な発展の観点から、G8各国は、個別にまたは関連する枠組みにおいて共同して、この地域との貿易や人的・経済的交流の迅速な再開のため努力する。外相は、この点において、欧州連合(EU)が欧州近隣国政策及び地中海のための連合といった枠組みの下で実施している努力、ならびに、調整的役割を果たし国際的努力を支えるとの申し出を歓迎した。
外相は、自由なメディアの発展、非政府機関の能力強化、職業訓練及び社会的に責任を果たすビジネスの発達などを促進するため、地域における市民社会との対話を拡大することを決定した。外相は、クウェートで開催される2011年のBMENA閣僚級会合を、そのために活用することで一致した。
外相は、エジプトとチュニジアにおいて、確証されたニーズに基づく短期的な財政支援及び関連機関と連携して行われる食料や基礎的必需品の救援のための更なる支援を含め、現在の情勢による経済的悪影響を緩和するための短期的な措置を検討する用意があることを表明した。外相は、国際機関や地域開発銀行とともに、この問題をさらに検討していく。
外相は、この地域における現下の歴史的展開により、イスラエル・パレスチナ間の紛争の交渉による解決及びイスラエルの地域の環境への更なる統合がより重要になっていると確信している。
外相は、現在の中東和平プロセスの行き詰まり状態に対し深刻な懸念を表明した。
従来のカルテット声明を踏まえて、外相は、2011年9月までに全ての最終的な地位に関する交渉に基づく枠組み合意を締結することに引き続きコミットしている。外相はまた、イスラエルと平和共存する、独立した、主権国家としてのパレスチナを国連の新たな加盟国として迎えることに繋がる合意を得ることができるというオバマ米国大統領が表明した希望を共有している。二国家解決に代わり得る策は存在しない。
外相は、この紛争の長期的な解決は交渉によってのみ達成されることを考慮した。外相は、両者に対し、実質的な直接交渉に復帰するよう要請した。
外相は、法の支配に基づき、イスラエルと平和で安全に共存する、民主的で平和な国家を運営する能力を向上するためのパレスチナ自治政府による努力を賞賛した。外相は、このような国家建設への努力に対する支援を政治的に及び資金的に継続することの必要性を強調した。外相は、6月にパリにおいて第二回支援国会議をフランスが主催することを歓迎した。
外相は、当事者に対し、一方的な行動を控え、平和に資する環境を構築するよう求めた。外相は、いずれの当事者による一方的な行動も、交渉の結果を予断することはできず、国際社会によって認められることはないことを強く再確認した。外相は、ガザからのロケット砲撃の停止を求め、双方の人々のための安寧と安全の必要性を強調した。1967年に占領された土地への入植活動は平和への主要な障害であり停止されなければならない。
外相は、中東における和平は包括的なものでなければならず、イスラエル・シリア間及びイスラエル・レバノン間の交渉の重要性を強調した。
外相は、この地域における平和的な環境を創出するため、2010年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議において合意された中東非大量破壊兵器地帯に関する2012年の会議の開催に引き続きコミットしている。
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外相は以下の地域情勢に関しても議論を行った。
G8とアフリカは、原則と価値の共有、共通の利益及び相互の説明責任に基づく長年のパートナーである。外相は、平和維持の能力向上の努力を含め、アフリカとのパートナーシップとAUの平和安全保障アーキテクチャーに対する支援を新たにすることを約した。この観点において外相は、強固な成長を遂げ、より多くの外国直接投資を呼び込むアフリカにおける多くの肯定的な進展に勇気づけられた。このような背景を踏まえつつ、外相はいくつかの現存する課題について議論を行った。
外相は、すべてのコートジボワールの当事者と関係者に対し、国民の意思及びウワタラ大統領の信用に足る選出という結果を尊重することを求めた。外相は、AU平和安全保障理事会の決定に対する支持を強調し、それが全ての当事者に拘束力を有していることを強調した。暴力の激化は、コートジボワール及びその周辺地域における平和と安全を阻害し得る。外相は、コートジボワールの正統性を有する当局への封鎖を解除し、任務遂行中の国連職員を脅迫、攻撃、妨害しないよう、その責任を有する者達に求めた。外相は、最近の平和的なデモ参加者の殺害を非難し、あらゆる暴力を止めるよう求めた。外相は、解決を探る努力へのいかなる脅威、国連コートジボワール活動(UNOCI)及びその他の国際的な関係者の作業へのいかなる妨害、いかなる人権侵害及び国際人道法違反も、国連安保理決議第1946号に示されているとおり、対象を特定した制裁措置の適用に帰結するであろうと改めて述べた。
外相は、包括的平和協定(CPA)の当事者及びスーダンの国民に対し住民投票が成功裡に実施されたことに祝意を表した。外相は、依然として継続している暴力への懸念を表明し、アビエを含む全ての未解決の問題について、喫緊の課題として合意を達成するよう当事者に求めた。外相は、ダルフールにおいて続く暴力及び不安定についても留意し、和平合意の締結を視野に関与するようすべての関係者に求めた。外相は、ハルツームとジュバの当局に対し、債務救済の可能性を含むさらなる支援を提供する用意があること、及び、全てのスーダンの人々を全面的に支援する用意があることを表明した。
外相は、ソマリアの人々が20年来の紛争の影響に苦しみ続けていることを引き続き深刻に懸念している。ソマリアの不安定性により、ソマリアの人々の苦痛が増加し、テロ、海賊、不法取引の防止に向けた国際的な取組が阻害され、アフリカの角が一層不安定化する危険がある。外相は、暫定連邦「議会」の一方的な三年間延長に遺憾の意を表明し、すべての暫定連邦機構が建設的に協働し政治改革を加速することを要請した。外相はさらに、暫定期間のマンデートが本年8月に失効することを踏まえ、国際的な協調が重要であることを強調した。外相は、すべての当事者に、紛争解決の手段として、包括的かつソマリア主導のプロセスを支援するよう求めた。彼らは、AUとそのミッションであるAMISOMの活動を賞賛し、ソマリア問題担当国連事務総長特別代表の活動への全面的な支持を表明した。
外相は、ソマリアを発生源とする海賊がもたらす深刻な脅威に対する継続的な強い懸念を表明した。海賊はソマリアの不安定性の産物であり、より広い地域、船員の安全、地域経済、航行の自由及び国際貿易にリスクをもたらしている。外相は、ソマリア沖海賊対策コンタクト・グループを含め、協調のとれた海上の措置及び地域の長期的な能力向上のニーズへの取組を通じて、この脅威に引き続き断固として立ち向かうG8各国の決意を強調した。同時に、外相は 効果的な訴追と収監のためさらなる支援が必要であることで一致した。外相は、海賊に関する国連事務総長特別顧問による報告書を温かく歓迎した。外相は、この問題に関し国連安保理で更なる作業が行われることを期待した。
外相は、大湖地域全体における平和と安全を強化する努力を支援するという決意を示し、この地域の長期的な平和と安定のために、コンゴ民主共和国における2011年の自由で公平な選挙の重要性を強調した。
外相は、国外からの干渉、テロ、過激派による暴力、不法な薬物生産及び取引から自由であり、自国の安全保障、統治及び開発について完全なるオーナーシップを有する、安定し平和な主権国家としてのアフガニスタンへのコミットメントを再確認した。この目標に向けて、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の継続的な努力との緊密な協調のもと、G8各国は、ロンドン会議、カブール会議及びNATOリスボン首脳会合においてアフガニスタン及び国際社会により是認された権限委譲プロセスを引き続き支援していく。G8各国は、新たなアフガニスタン議会の発足を歓迎し、アフガニスタンの民主主義を強化するための努力を引き続き支援する。外相は、暴力を放棄し、アルカーイダとの関係を断ち、テロを糾弾し、アフガニスタン憲法を受け入れる全ての者との和解を進める政治プロセスを開始するというアフガニスタン政府の取組を歓迎した。外相は、アフガニスタン主導で進められるべきこの過程を支援するために適切な方策をとる用意があることを確認した。外相は、地域内の政治的及び経済的協調が、アフガニスタン更には周辺地域における安定、平和、及び繁栄のために重要であることを強調した。この点で、外相は、鉄道、水、エネルギー、人的資源に関する国境を越えた協力が増加する見込みであることを歓迎した。
ハイチを襲った悲惨な地震から一年が経過し、完全な正統性を有する当局によって実行される必要のある復興が、非常に大きな課題として残っている。この点で、外相は、3月20日に開催される大統領選挙及び議会選挙の第二回投票の重要性を強調し、平和的で秩序立った実施を呼びかけた。外相は、完全な復興に向けたハイチの人々の努力を支援することを改めて表明した。外相はまた、ハイチにおける法の支配と良い統治を強化するため、すべての関係者がより協調的な努力を行わなければならないことを強調した。
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外相は不拡散及び軍縮についても議論した。外相は、拡散との闘いへの努力を惜しまず、また2010年NPT運用検討会議での決定をフォローアップするためにあらゆる適切な国家的措置を講じるとともに、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効及び普遍化、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)に関する合意され包括的でバランスのとれた作業計画を伴うジュネーブ軍縮会議(CD)における実質的な交渉の開始、並びに原子力の平和的利用へのアクセスを拡大する国際原子力機関(IAEA)の努力の一環としての核燃料サイクルに係る多国間アプローチのさらなる発展を、推進することを改めて表明した。
外相は、北朝鮮が最近明らかにした、国連安保理決議第1718号及び第1874号に違反するウラン濃縮活動を非難した。外相は、北朝鮮に対し、国際的な義務と約束を遵守し、拉致問題といった国際社会の人道上の懸念に速やかに対応することを要請した。
イランが6本の国連安保理決議及び10本のIAEA理事会決議における義務に一貫して従っていないことは、最大の懸念の原因となっている。外相は、国連安保理決議第1929号の措置の採択後、イランが中国、フランス、ドイツ、ロシア、イギリス、アメリカ及びEUと二度会合することを最終的に受け入れた一方で、同国の核計画に関する国際社会の懸念を解消するための建設的な対話にイランが未だ応じていないことに遺憾の意を示した。外相は、NPTの下での原子力の専ら平和的な利用に関するイランの権利を認めるが、かかる権利は国際的な義務を遵守するというイランの責任を伴うものであることを想起した。
外相は、世界的な不拡散の取組を支援する手段としてのG8グローバル・パートナーシップの価値のある役割を再確認した。
外相は、テロの脅威が進化するに伴い、より多面的で協調のとれたパートナーシップが必要とされていることに留意した。外相は、テロとの闘いにおける結束と、この面での協調のとれた努力をムスコカにおいて定義された優先事項に沿って強化する決意を強調した。外相は、ローマ・リヨン・グループに対して、G8ドーヴィル首脳会合までに現状報告を用意することを求めた。
外相は、特にアフリカにおいて、多くの国々がテロとの闘いに参加していることに勇気づけられた。G8全体及びG8各国は、テロという共通の課題に取り組む上でアフリカ各国及び関連地域機関との協力を深化する用意がある。外相は、国連がテロに対する共同の闘いにおいて中心的な役割を果たし続けるべきであることを強調し、21世紀のテロに対処するために必要な国際的なアーキテクチャーを強化するテロ対策フォーラムを形成すべく、すべての地域のパートナーと協働する必要があることを認識した。外相は、現在EUによって進められているサヘル及びアフリカの角における包括的な安全保障・開発戦略及び他のG8各国のイニシアチブに期待している。
外相は、不法薬物の流通を阻止するための国際的な協調を強化する機会として、5月10日に開催される大西洋を越えたコカインの不正取引対策に関する閣僚会合に期待する。外相は、ロシアとフランスがアフガニスタン産アヘン取引に関するパリ協定の第3回閣僚会合を、2011年に開催することを提案したことに留意する。G8各国はお互いに合意可能な構想と議題案を作成するために協働する。