
米国の留保についての政府の考え方
国際組織犯罪防止条約に関し,「米国は一部の州では極めて限定された共謀罪の法制しかないことを理由に留保を付して条約を批准している」との報道がなされたことがあります。
この米国の留保についての政府の考え方は,以下の通りです。
- (1)米国は連邦制をとっており,条約締結に当たり,憲法上の連邦と州との間の権限関係と整合性をもたせるとの観点から,留保・宣言を行っています。
(2)米国政府より,本条約で犯罪化が求められている行為について,連邦法によっても州法によっても犯罪とされていない部分はほとんどないという回答を得ています。
(3)このようなことから,米国の留保は本条約の趣旨,目的に反するものではないと理解しています。
- これに対し,「重大な犯罪」を限定する旨の留保や「国際性」の要件を付す旨の留保は,「重大な犯罪」の定義を定める条約第2条や,国際性を要件としてはならないと定める条約第34条2の規定に明らかに反するものです。
これは,上記1.のような,米国が憲法上の連邦と州との間の権限関係と整合性をもたせるとの観点から行った留保とは性格が全く異なります。
「重大な犯罪」を限定する旨の留保や「国際性」の要件を付す旨の留保を付すことは本条約の趣旨,目的に反するため許されないことは,これまで政府が繰り返し答弁してきたとおりです。