平和構築

国際平和協力セミナー
~平和の定着における様々な支援主体の役割、日本型支援の将来像~
(概要)

平成18年2月27日

(写真)国際平和協力セミナー~平和の定着における様々な支援主体の役割、日本型支援の将来像~

 2月17日、外務省・大阪大学大学院国際公共政策研究科(OSIPP)共催で国際平和協力セミナーを大阪(於:グランキューブ大阪)において大阪府の後援を得て開催した。

【シンポジウムの目的】

 国際平和協力活動において現在どのような課題があるのかを俯瞰した上で、開発・人道支援や平和構築への文民による貢献とはいかなるものか、発表・パネルディスカッション及び質疑応答を通じて考察。平和構築支援のための必要条件は何か、活動する文民にどのような資質が必要なのか、日本や国際社会の国際平和協力はどうあるべきなのかについて展望した。

【講演・パネリスト】

 ブラヒミ元国連事務総長特別顧問、キャロン在京カナダ大使、アルベロート・フォルケ・ベルナドットアカデミー(スウェーデン)副所長、デリック・ハワイ災害管理・人道支援センター訓練アドバイザー、モリス国連アチェ復興調整官、玉村WFP日本事務所代表、長ジャパン・プラットフォーム評議会アドバイザー、弓削UNDP駐日代表、ウィリアムズ在日米陸軍基地管理本部司令官(大佐)、星野大阪大学大学院教授(共催者)、横田中央大学大学院教授

【シンポジウムの概要】

(1)基調講演

(イ)ブラヒミ元顧問より、平和活動において重要となる三点を指摘:1)達成可能な目標の設定(現地の期待値の高まりを考慮。司法制度の確立は最優先、法の支配を確立し腐敗を防ぐべし)、2)アクター間の協力(現地のアクターとの協力は人間の安全保障の観点からも重要)、3)国際社会が行うよりよい活動(国際社会の関与の出口戦略とされる選挙は、「適当な時期」に行われるべき)と指摘。

(ロ)キャロン在京加大使より、近年の紛争や緊急事態への対処は統合アプローチを必要とし、軍と民が一貫した作戦計画の下で活動する必要があること、複合的な緊急事態に対し、国際社会は迅速に効果的な介入を行い危機に対処すべきで、カナダとしては「保護する責任」を引き続き推進すると述べた。

(ハ)外務省からは、山中政務官が今次セミナーのために用意した講演テキストを席上配布した。

(2)発表・パネルディスカッション

(イ)復興支援の鍵は「現地」。カブールをパリやNYにするのではなく元のカブールに戻すこと。移行期の司法制度には適用すべき国内法がないため、国際法を借用するが、今後どのような法を導入するかは、現地住民が決定すべき。選挙を知らない現地で選挙を実施するためには啓発活動が必要。

(ロ)平和構築の三つの重要課題は、1)法の支配(平和構築の基本的要素で必要十分条件)、2)難民や国内避難民の強制移住問題、3)移行期問題(国連システムでの一貫性確保、被災支援において起因を区別する必要なし)。

(ハ)復興段階の軍の役割について。紛争後の社会において、戦闘の終焉を迎えても、そこに力の空白が生じ、外部からの軍による国内治安維持が必要。また犯罪の対処においても、警察への不信感があるため、まずは軍が代替し、その後国連が引き継ぎ、現地警察の再建に繋がる。

(ニ)NGOは地雷除去を兵器の問題として認識することを避けてきたが、昨今は根本原因をなくすために政治問題として認識し、対人地雷の廃絶に実質的に寄与する活動に従事。現在は貯蔵地雷の廃棄に取り組む。

(ホ)文民育成の観点からは、訓練コースへの参加、NGOや政府機関でインターン経験を経て英語能力・レポート力・安全等の技術の修得を推奨。インターネット等でポストを探し徐々に経験を積む際、最初から望むポストにつくことは困難且つ適材適所も難しいが、探すことが重要。

(ヘ)このほか、国際平和協力に携わる上で求められる資質としては、1)高い専門性、専門分野・知識の獲得、2)確実な語学力に基づく交渉力、プレゼン能力、ライティング能力、3)計画・企画能力、4)マネジメント能力、5)精神的強靱さ、6)協調性、7)適応力と柔軟性。

(ト)紛争予防のメインストリーム化が重要。“Culture of reaction”(「反応の文化」)から“Culture of prevention”(「予防の文化」)へ。

(チ)弱者個々人もコミュニティーとしてみることで、大きな影響力を持つ。こうしたセミナーが弱者やそのコミュニティーに向けて発信されるべき。

(リ)日本自身が戦後復興を体験するのみならず、阪神淡路大震災からの復興を経験しており、日本が平和構築において他国の復興を支援することは意義がある。

(3)会場よりは、以下を含む数多くの質問が寄せられた。

1)効果的な平和構築・復興活動に携わる支援主体間の調整・協力にはいかなる課題があるか、国連平和構築委員会はどこまで有効な活動を行いローカル・オーナーシップを実現するのか、またそこでの日本の役割は何か。

2)平和構築においては警察力や司法組織の強化といった法の支配が重要になる一方で、和平プロセスにおける和解といった、法の支配との矛盾もありうると思うがこの問題をどう考えるか。

3)日本のNGOは総体的に欧米のNGOより劣って見えるがなぜか、資金力か、また政府/NGOの側にどんな問題があるか。

【総括】

(1)今回のセミナーは、世界的には関心が高く活発に議論されながら、我が国ではまだ新しい野心的な内容を取り上げた。幅広い層の実務者・有識者の参加を得て活発な議論を行ったことは、国際的課題の現状分析にとどまらず、この分野における我が国の貢献を検討する上で、有意義かつ時宜を得た試みであった。

(2)国際平和協力セミナーは毎年開催しているが、今回初めて地方(関西)での開催である。一般聴衆の参加がほぼ満席となるなど、関心の高さが伺えた。聴衆へのアンケートでも、国際平和協力の最前線で活躍するパネリスト陣から、普段では聞けないような、現場の困難な実情や多面的な視点が提供されたとの指摘のほか、パネリストとの対話を希望する声も多く寄せられていた。シンポジウムの開催がこうした若い学生の参加を集めたことは、今後の国際平和協力を担う人材育成の観点からも、高い意義が認められる。

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