平和維持・平和構築
研修員の声
令和2年度研修員 梶田友理さんの声
プロフィール
国際基督教大学・大学院卒。日本での民間企業勤務後、クウェート大学にアラビア語留学。留学後にクウェートでの民間企業、大学院、在パキスタン日本大使館・専門調査員、在ジンバブエ日本大使館・草の根委嘱員を経て本事業に参加。本事業ではUNFPAスーダン事務所に派遣され、Peacebuilding Programme/GBV (Gender-based violence) Specialistとして勤務。任期終了後、契約を延長し引き続き同事務所にて勤務中。
平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に応募した理由を教えてください。
クウェート大学でのアラビア語留学を含め計4年間、イスラムの戒律が厳しいとされるクウェートで暮らしました。その際、日本では経験したことのない女性差別を経験したことがきっかけで、女性であるという理由で不当な扱いを受けている少女・女性の一助になりたいと思うようになりました。大学院でジェンダーや女性の安全保障について体系的に学び、その後は、専門調査員及び草の根委嘱員として在外公館に勤務し、ジェンダー関連の調査やプロジェクトの案件形成・管理などの経験を積みました。次のステップである国連へのエントリーポイントを模索する中で、以前から本事業のOB・OGの国連職員の方々とお話させて頂く機会があり、自然と本事業を、国連で勤務するための足掛かり・登竜門として活用することを認識するようになりました。また、自力で国連ポストを獲得できるだけの経験やスキルを有していなかったので、UNVとして一年間派遣してもらえる本事業は、国連で女性の保護とエンパワーメントに携わりたいと願っていた私にとって、とても魅力的でした。
国内研修に参加した感想は?
国連での勤務経験がない私にとって、経験豊富な現役国連職員講師の方々から伺う実体験は、非常に貴重なものでした。これまで開発分野での勤務経験が在外公館に限られていた私にとって、国連での仕事の仕組みや流れ、国連独特の文化を事前に知ることのできる良い機会となりました。この研修があるのとないのとでは、実際にUNVに派遣された後の充実度が大きく異なるのではないかと思います。国連の良い部分のみならず、課題や問題点も知ることができるので、過度な期待をすることもなく、着任後の職場環境にもスムーズに適応できました。
研修自体は、大学院の講義の延長のような部分(理論)と、自ら考えて形づくっていく実践編の二つで構成されていました。最も印象的だったのは、クラスター会議のロールプレイを行ったことです。研修員が3-4人のグループに分かれ、それぞれUNHCR、NGOs、その他UN機関、政府機関等の役割が決められており、私は突如としてクラスター会議の議長を務める役回りとなりました。与えられた30分間で資料を読み、保護を必要としている人数や必要な物資、国の情勢などの概要を把握し、立場の違う各参加者の意見をまとめて結論を導き出さなくてはいけません。もちろん、相手は同じ研修員で、あくまでロールプレイではありますが、急遽与えられた大役と任務に対するプレッシャーや緊張感は今でも鮮明に覚えています。実際に国連で働いてみて感じたのは、このロールプレイと類似の状況に直面することが多々あるということです。やるしかないという状況に追い込まれ、限られた時間の中で必死に業務をこなしている上司や同僚の姿を日常的に目にしている今、このトレーニングは国連での実務に即していたのだと納得です。
業務内容について教えてください。
平和構築とGBV(Gender-Based Violence/ジェンダーに基づく暴力)の二つの分野を担当しています。当初の予定では平和構築のみの担当でしたが、2021年10月に起きた軍によるクーデターにより、平和構築分野への予算が一時的に削減されたため、よりニーズの高いGBVの業務を同時並行で行うこととなりました。
GBV分野では、UNFPAがリード機関を務めるGBVサブセクターを統括するGBVサブセクターコーディネーターの業務補助を行っています。コーディネーターは、GBV予防と対処(prevention and response)が滞りなく実施されるよう、NGOや政府機関などのパートナーや他国連機関と支援の調整を行います。また、パートナーの能力強化、支援計画全体の目標や方針の策定、アドボカシー、情報管理などを一手に引き受けます。私の具体的な業務としては、2021年10月に発生した軍事クーデター後の非常事態宣言下において、GBVサービスの提供及びサービスへのアクセス状況、被害者発生の有無、治安情勢などを5つのフィールド事務所(ダルフール及び東部地域)から聴取し、取りまとめを行ったり、ハルツーム州の200以上の医療機関とサービスプロバイダーに電話をかけ、リファラル(医療機関等への患者照会システム)を更新し、GBVサービスへのアクセス向上に貢献するなどしました。また、パートナーの能力強化のためのトレーニングやワークショップの運営支援も重要な業務のひとつでした。
更に、平和構築のフォーカルポイントとして、UNITAMS(国連スーダン統合移行支援ミッション)が主導する平和構築評価ミッションに参加しました。ミッションでは、女性の国内避難民や南スーダンからの帰還民、女性活動家等からのヒアリング・協議を行い、平和構築における女性特有のニーズの把握に努めました。また、平和構築関連のグッドプラクティスやドナーブリーフなどの対外向け資料作成などのナレッジマネージメントや、UNFPAが実施するプログラムの文書レビューを行い、UNFPAプログラムにおける平和構築の主流化の促進に努めています。
ブルーナイル州にてIDPと
ブルーナイル州にてローカルNGO職員らと
ブルーナイル州にて女性帰還民と
UNFPAが支援する女性センターにて
GBV Sub-sectorリトリートにて
海外派遣での感想は?一番印象に残っていることは?
ずばりクーデターを経験したことです。着任から4か月ほど経った頃、軍の一部が首相を軟禁、暫定政権が崩壊し、軍部が全権を掌握するという事態となりました。未明の出来事だったため、出勤する段階ではまだ情報は入ってきておらず、事務所のグループチャットで自宅待機の指示が出されているだけでした。その後すぐに携帯電話のインターネット回線や通話が遮断され、連絡手段もなく、何が起きているのかわかりませんでした。幸い、自宅から徒歩1分のところに事務所があったので、出勤していた現地職員と一緒に、事務所のネット回線とテレビを使い、現状を把握することができました。そのうち、街のあちこちから黒煙が上がり、断続的な銃声が聞こえてきました。催涙弾が自宅の門まで飛んできたり、治安部隊から逃げ惑う市民の様子を目の当たりにしました。流れ弾が怖いので、買い物も近所の商店で済ませました。幸いにも十分な量の水と食料はストックしてあったので特に問題はありませんでしたが、インターネットの遮断がその後も数週間続いたのは辛かったです。
今後のキャリア・プランを教えてください。
5月末に本事業の契約が満了した後、UNVとして契約を延長していただき、同事務所で勤務しています。また、来年からはJPOとしてUNFPAの他事務所にてGBV担当官として勤務する予定です。GBVの専門性を高めながら、引き続き女性の保護とエンパワーメントに携わる仕事に就きたいと考えています。
事業への参加を考えている方にメッセージをお願いします。
私がこの研修に参加して得た最大の収穫は、同期やOB/OG、講師陣とのつながり(ネットワーク)です。同期は、最良の理解者で相談相手であり、UNV派遣中には頻繁に連絡をとり、励まし合い、大きな助けとなってくれました。また、HPCの縦のつながりも貴重なものです。スーダンには本事業のOGの方々がおり、赴任前から生活情報を教えてもらったり、キャリア相談に乗ってもらったり、面接の練習をしてもらったりと、プライベートでもとても仲良くさせていただき、本事業のネットワークの有難みを、身をもって実感しました。
一方で、参加者の年齢層は、キャリアと人生で悩む年代だと思います。海外勤務がマストである開発業界で、男性はもちろんですが、特に女性はキャリアと結婚・出産の両立に悩むことが多くなる年齢です。私自身、家庭の事情で数年前に本事業への応募を諦めた経緯があります。しかし、国連には働く女性の多様なロールモデルがあります。ゼロ歳の子供をシッターさんに預けて出張に行くというワンオペママさんもいました。特に私の職場は女性職員が多く、学校が休みの時には、子供4人を連れて出勤している女性職員もいました。これが、国連は女性が働きやすいと言われる所以だと実感しています。なので、国連で働きたい強い意志があるけれど、迷っているという方がいらっしゃれば、ぜひ思い切って挑戦していただきたいと思います。自ずと道は拓けてくると思います。
