平和維持・平和構築
研修員の声
令和3年度研修員 小松崎義久さんの声
プロフィール
英国バーミンガム大学院国際開発学修士号(Governance and State-Building)取得。
外務省経済局、外資系会計事務所、国際協力機構(JICA)アフリカ部、JICAジンバブエ支所を経て、本事業参加。本事業では、Joint UNDP-DPPA Programme(注)を通じて、ジンバブエ国連常駐調整官事務所(Resident Coordinator’s Office (RCO))に「Peace and Development Analyst」として派遣。任期終了後、契約を延長し同事務所にて勤務中。
平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に応募した理由を教えてください。
一番の理由は、実際に国連機関で勤務する経験を積みたかったことです。長期的なキャリア目標として、国連機関で勤務することを目指しておりましたが、空席公募では競争が激しいことから、日本人にとってのエントリーポイントとして、同事業には以前から関心がありました。主に3つの理由としてあげられるのは、(1)平和構築分野の業務経験、知識およびスキル向上、(2)国連で求められるコンピテンシー(業務遂行能力)を伸ばすこと、(3)国連機関のシステムや文化を理解すること、です。
国内研修に参加した感想は?
経験豊富な講師陣やバックグラウンドが多様な同期のおかげで、実践的な講義・グループワークを経験することができました。CVや面接対策は、希望者に特別セッションとして設けられて大変に良かったです。外国人研修員については、コロナの影響で、残念ながらリモート参加となってしまいましたが、みなさん優秀かつ積極的に研修に参加されており、日々触発をされながらの研修でした。定期的に同期や講師の方とは情報共有や相談等をさせていただいており、人的ネットワークを構築できたことが財産と感じております。
業務内容について教えてください。
UNRCOは、国連事務総長の代理である常駐調整官の指揮のもと、国連全体の開発5か年計画、各分野における情報収集・分析、政府や市民団体との対話など多岐に及びます。私自身は主に平和構築と紛争予防を目的とした、情報収集・政治分析、政府や市民団体の能力強化ならびに利害関係者との連携強化を補佐する役割を担っています。
ジンバブエでは、2018年の大統領選挙後に数多くの暴力や人権侵害が起きたことが報告されています。2023年の大統領選挙にむけて、政治的暴力や社会の分断を事前に予防するため、国連全体として様々な支援を展開しています。例えば、UNDPが作成した、リスク分析のためのデータ収集・視覚化ツールのCrisis Risk Dashboardを活用し、各国連機関の協力のもと、定期的に暴動や治安に関わる社会経済の様々なデータの収集、分析、共有を行いながら、紛争に配慮したプログラム形成を実施する準備をしています。その一環として、私は、同ツールを発展させるため、データ収集の為に各国連機関や市民団体等との連携や、収集したデータの分析・共有を実施し、国連機関や市民団体が集うワークショップにおいて、同ツールの説明や議論を行いました。また、紛争予防や社会的結束を促進するためには、市民団体等様々な利害関係者との連携促進をしていくことが重要であることから、紛争・暴力の予防におけるニーズ調査を自ら企画し、市民団体、シンクタンク、大学、メディア等にインタビューを含む情報収集およびネットワーク構築を実施しております。
上記活動の結果、いくつかの市民団体と事業連携の相談やデータの提供等に繋げることができました。現在、課題を分析し、国連としてどのような支援が可能であるかについて報告書をまとめています。RCOの業務では、ハイレベルな意思決定に貢献できることや、一国の政治プロセスを平和裏に進めるために国連全体をまとめていくことにやりがいを感じています。その一方で、平和構築支援は、平事から有事を想定した取り組みや心構えが不可欠であり、多くの利害関係者の協力が必要になるため、日頃からの十分な連携・相互理解が重要であると実感しています。
海外派遣での感想は?一番印象に残っていることは?
Joint UNDP-DPPA Programme主催のグローバル研修会(Global Retreat)に参加したことです。同研修会は、1週間程度ヨルダンにて開催され、上司であるPeace and Development Adviser (PDA)とともに参加しました。主な目的は、世界各国に派遣されているPDAチームとのpeer-to-peer learningや、現在の開発・平和構築にかかる諸課題や各種ツール等の共有・意見交換、さらにはJoint UNDP-DPPA Programme本部からの必要な支援等について議論を行うことです。参加者は、国連からはPDAチーム、Joint UNDP-DPPA Programme、UNDP Crisis Bureau, DPPA、Development Coordination Office (DCO)(注)等、外部からは欧米ドナーが数組織参加し、計100人程度が参加しました。初めて参加する研修会でしたので、会場に到着するまでは少し緊張気味でしたが、初めて参加する方も三分の一程度いたため、事前の3日程度のオリエンテーションで打ち解け、交流を深めることもできました。この研修会を通じて、世界各地で、同じポストで働いている仲間と、同じような悩みや課題を共有し合い、さらにはグループワークを通じて実際に想定される状況に対して、どのように克服していくべきかなど、実践的かつモチベーションも向上する内容でした。同研修会終了後も、定期的なオンライン会議で地域の課題や近況を共有し合う取り組みもあり、非常に中身の濃い、ネットワーク構築にも有益な海外出張となりました。
今後のキャリア・プランを教えてください。
本事業の契約が満了した後、UNVとして契約を延長し現在も同事務所で勤務しています。今後も国連でのキャリア形成を目指しながら、引き続き平和構築・ガバナンス分野の専門家として、フィールド経験を積みながら専門性を高めて参りたいと考えています。
事業への参加を考えている方にメッセージをお願いします。
私は本事業に関心を抱きながらも、実際に応募するまでには、様々な要因が重なり、6年程度経過していました。今振り返ってみれば、もっと早く応募しておけばという気持ちもあります。一方で、1年という短い派遣期間でもあり、家庭やキャリア形成の事情等も踏まえると、人それぞれの適したタイミングがあると思いますので、結果的には自身にとって良かったと思っております。長いキャリア形成の中で、特に本事業に参加される年代の方は、家族の都合を考慮して勤務先を選択する場面が増えてくるかと思います。こういった、ワーク(キャリア)・ライフ・バランスについても、本事業では、経験豊富な講師や先輩に相談できます。国際協力分野でキャリア形成を目指している方で、本事業にチャレンジするか思いとどまっている方こそ、思い切って応募されてみてはいかがでしょうか。
注:以下、組織名の概要。
- UNDP Crisis Bureau(国連開発計画危機局)とは、紛争等の危機予防や対応の組織。
- DPPA(国連政治・平和構築局)とは、世界の紛争を予防し解決に寄与する組織。
- The Joint UN Development Programme (UNDP) - UN Department of Political and Peacebuilding Affairs (DPPA) Programme on Building National Capacities for Conflict Prevention(略称:Joint UNDP-DPPA Programmme)とは、UNDPとDPPAの紛争予防の為の国家能力強化を行う共同プログラム。
- DCO(開発調整室)とは、各国のRCOや国連チームを支援する組織。
- Peace and Development Adviser (PDA)チームとは、Joint UNDP-DPPA Programmmeによって、各国に派遣されるPDAおよびそのチームのこと。
UN主催のレジリエンスに関するワークショップにて参加者の集合写真(筆者2列目左から4番目)
(写真提供:UNRCO)
UN主催のレジリエンスに関するワークショップにて筆者が Crisis Risk Dashboardの説明をしている様子
(写真提供:筆者)
