平和維持・平和構築
研修員の声
令和3年度研修員 今村恭介さんの声
プロフィール
大学卒業後、青年海外協力隊に参加しホンジュラスで学校教員の指導力向上に従事。その後、国際NGOでミャンマーおよびウガンダにおいて、国内避難民や難民支援活動のプロジェクトマネジメントに従事。NGOでの業務の合間に英UCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)Institute of Educationに留学し教育と国際開発の修士号を取得。2023年5月に、UNICEFパプアニューギニア事務所にAdolescent Development Officerとして派遣され、青少年のエンパワーメント、アドボカシー、社会参加、メンタルヘルスに関する事業などに従事。派遣期間終了後、JICA在外事務所で企画調査員として勤務中。
平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に応募した理由を教えてください。
これまで国際NGOで仕事をしてきました。NGOは現場の裨益者に近く、非常にやりがいのある仕事でしたが、その限界も感じるようになりました。例えば、難民支援や国内避難民、無国籍者への支援といった事業に従事してきましたが、これらの活動によって困難な状況に置かれている人たちへの直接支援ができるものの、その状況をつくりだしている根本原因の解決には至らないと感じました。そこで、根本原因にアプローチするために国際機関での仕事をしたいと考え、その入り口としてこの事業に応募しました。また、過去の本事業修了生が国際機関での仕事を継続できている点を見て、事業に魅力を感じて応募しました。
国内研修に参加した感想は?
濃密な5週間でした。残念ながら新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、海外からの研修員はオンラインでの参加となりましたが、非常に充実した研修でした。国連といっても、人道支援から開発支援まで各機関が行っている業務は幅広く、毎週、特定の分野に関して理論と演習の内容で研修が組まれ、非常に有意義でした。また、実際に国際機関で勤務されている方々が講師として広島に来ていたため、直接お話を聞く機会が得られ大変参考になりました。特に、NGOで仕事をしている際にも現地には各国連機関が活動しており、UNHCRの委託事業もマネジメントしていたため、国連やNGOの組織間の会議に参加したり、現場レベルで国連が何をしているのかは理解していました。しかし、国レベルや地域レベルといったもっと広いレベルで国連機関がどのように動いているかは理解していなかったため、勉強になりました。
業務内容について教えてください。
UNICEFパプアニューギニア事務所で、Adolescent Development Officerとして、青少年に関する様々な業務を担当しました。主に、非感染症疾患の予防、U-Report(UNICEFが開発したSMSを基盤とした青少年の参加と啓発活動を促進するオンラインツール)、MHPSS(Mental Health and Psychosocial Support、精神保健・心理社会的支援)の3つの事業に従事しました。非感染症疾患予防は、青少年への教育や社会参加を通じて、不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒等の状況を改善し、がん・糖尿病・循環器疾患・呼吸器疾患・メンタルヘルスなどの非感染症疾患予防を促す事業で、このプログラムは、複数の国で実施される5年間のグローバルプログラムでした。すでに他国のUNICEF事務所で事業が先行実施されており、パプアニューギニアは全体プログラムの2年目から参加しました。赴任直後の事業立ち上げ段階で、本部担当者との意見交換を通じて、活動計画書、予算計画、活動報告書など作成を通じて事業に従事しました。事業の主な活動内容としては、パプアニューギニアの青少年からYoung Ambassador(青少年代表)という活動の核となるメンバーを選び、彼らを通して非感染症疾患予防を他の青少年や地域コミュニティ、行政に広げる内容でした。本部や地域事務所のアドバイザーと協議した上で、Young Ambassadorの選定基準や青少年グループの役割を定め、事業を開始しました。また、活動の一部は政府機関やNGOと共同で実施することとなり、そのために実施を依頼するNGOの選定、政府機関と候補NGOとの調整、委託団体との契約締結などの調整業務も担当しました。
U-Reportについては、プラットフォーム管理会社との契約問題や、SMS配信を担当していた電話会社との契約関係のため、任期中の大部分を通じてツールが使用不可能な状況でした。しかし、パプアニューギニアでのU-Report登録者数を増やし、その普及を図るための計画案を策定したり、プロモーション業者の選定や世界子どもの日イベントなどでのツール紹介を行いました。また、MHPSS関連の利用や非感染症疾患予防事業における調査利用など、担当する他の事業でU-Reportを活用する計画を立案しました。契約上の問題から最終的にU-Reportのプラットフォーム管理会社を変更することとなり、新たな管理会社とのコミュニケーションを担当しました。しかし、その内容は技術的なものが多く、事務所内に技術対応が可能な職員が不在だったため、専門外である私が対応を行うこととなりました。素人ながら、先方のエンジニアと一つ一つ技術的な点を確認しながら業務を進め、プラットフォームの移行を無事に完了させることができました。
MHPSS(精神保健・心理社会的支援)については、UNICEFパプアニューギニア事務所がWHOと共同でプログラムを立ち上げることになり、UNICEF側の担当者の一人として調整業務を担当しました。このプログラムは、WHOとの調整だけでなく、UNICEF内部では子どもの保護、健康、教育といった各プログラムセクションが共同で事業を進行することとなり、それらのセクション間の調整をする必要がありました。WHO及びUNICEF各セクションの意見を取りまとめ、精神保健・心理社会的支援における行政システムの強化、人材育成、そして保健省、教育省、コミュニティ開発・宗教・青年省などの関連省庁との連携を主な活動とすることを決定し、プロポーザルと事業で雇用するコンサルタントの委託事項をドラフトしました。さらに、事業を開始するにあたり、UNICEF、WHO、保健省と共同で分析したパプアニューギニアにおけるMHPSS状況に関するレポートの発表会議を、関係省庁、ドナー、その他の関係者を招待して開催することになり、その調整業務も担当しました。
MHPSS(精神保健・心理社会的支援)分析レポートの発表会
セクションメンバーとの集合写真
海外派遣での感想は?一番印象に残っていることは?
UNICEFの資金調達能力に驚きました。新型コロナ対策のための資金を多く含んでいたことは確かですが、それを差し引いても資金調達能力は豊かだと感じました。NGOで働いていたとき、他の国連機関と委託契約を結び事業を実施した経験がありますが、他の国連機関と比べても、UNICEFのブランド力やマンデートからくるドナーからの資金調達は容易だと感じました。また、ドナーからの信頼や活動国の政府からの信頼により、活動内容の変更や関係者との会議の設定が容易であるため、事業が進行しやすい環境にあると感じました。
また、青少年分野がきちんとUNICEFとして体系化されていると感じました。青少年への活動は教育、保健、子どもの保護など、UNICEFが取り組んでいる活動全般に関わる分野で、その活動フレームワークはしっかりと理論化されていると感じました。内部のオンラインワークショップの過去の動画から、この分野でUNICEFがグローバルに取り組んでいることやプログラムのフレームワークを理解できたことも、有意義な経験でした。
一方、具体的な活動の実施管理については、NGOなどに比べて改善の余地があると感じました。NGOでの事業では、予算を適切に使いつつプロジェクトの期限内にアウトプットを達成し、事業を完了させることが求められていましたが、UNICEFではその辺りがあいまいでした。UNICEFへの信頼からドナーとの交渉で事業期限が延長しやすいことや、Covid-19の影響で事業が計画通り進まない等の説明がしやすい部分もあったのかもしれませんが、各活動の実施管理には改善が必要だと感じました。特に、ドナーへ提出するプロポーザルや予算書は、詳細計画が資金確認後に立案できるという点は時間効率が良い一面もある一方で、その計画作りの段階になると予算に対する活動内容や目標に無理が生じる可能性もあるという印象も持ちました。
さらに、仕事をする上で上司の意向が非常に大きいと感じました。上司の指示に従い、民間財団へ提出する新規事業のプロポーザルと予算書のドラフトを作成したことがありました。しかし、私のドラフトを基に申請書を完成させる予定だった上司が他の業務で多忙となり、申請締切までに完成させられず、結局作成したドラフトが無駄になることもありました。また、任期の終盤に直属の上司がストレッチアサインメント(業務応援)で他国に赴いたため、副所長の指示の下で業務を進めることになり、その結果活動方針が大きく変更されたプログラムもありました。業務を円滑に進めるためには、他の組織で働く以上に上司とのコミュニケーションが重要であると感じました。
今後のキャリア・プランを教えてください。
UNICEFパプアニューギニア事務所での勤務の終了後、現在はJICAの在外事務所にて企画調査員として勤務し、各種プロジェクトの業務調整に従事しています。担当している事業の裨益者には青少年を含むため、UNICEFで青少年の活動に従事できたことは、現在の仕事にも活かされていると感じます。自分が仕事を探しているタイミングと空席公募がでるタイミングが合うかどうかもありますが、今後も国際機関や二国間援助機関等で国際協力に従事していきたいと考えています。
事業への参加を考えている方にメッセージをお願いします。
国際機関での勤務を含め、国際協力に従事することを希望する方には、プライマリー・コースへの参加は非常におすすめです。国内研修では経験豊富な講師陣から、人道支援から開発支援に至るまで幅広い分野に関する内容を体系的に学ぶことができます。海外研修では、国連ボランティアとして実際に業務に従事することができます。国連ボランティアといっても、実際に行う仕事は正規職員と同じ業務を実施するため、国際機関の環境や仕事の進め方に適応する良い機会になります。海外研修後に国際機関で仕事をしなくても、二国間援助機関、国際NGO、開発コンサルタントなど、どこで働くにせよ、国際機関がどのように動いているかを理解することは非常に有意義だと思います。
