平和維持・平和構築
研修員の声
令和4年度研修員 山田優志さんの声
プロフィール
東京工業大学環境・社会理工学院で工学学士及び修士号を取得。外資系企業のVeolia社にて、日本初の上工下水一体官民連携運営事業を落札
し、宮城県で事業の立上げに従事。これと並行して、NPOでプロジェクトマネージャーとしてインドネシアのバリ島の村で給水プロジェクトを展開。2023年に日本水大賞の国際貢献賞
を受賞。日本とインドネシアにて水事業に4年間従事した後、2023年3月からUNICEF(英語)
エチオピア事務所で水・衛生担当官(WASH Officer)として勤務。提案書の作成、太陽光システム導入による経済的・環境的影響に関するレポートの作成、エチオピア全土の水衛生の工事状況の可視化、工事後の水衛生施設の状況のデータ化等を行う。UNV任期終了後、P2として契約を更新し、引き続きUNICEFエチオピア事務所で活動中。
平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に応募した理由を教えてください。
水衛生分野の知識や経験を国際開発の場で生かしたいと思い、UNVとして派遣される本制度に応募しました。
国内研修に参加した感想は?
国内研修を通じて、様々な収穫がありましたがその中でも主な三点を紹介したいと思います。
国連の環境を体験できたこと
私はこれまで主に民間企業で働いており、国連のような国際機関で働いたことはありませんでした。研修では、国連の理念や歴史、組織構造、活動内容などについて幅広く学ぶことができました。また、実際に国連職員の方々から話を聞くことや、グループワークやディスカッションを通じて国連の仕事に携わる人々の熱意や情熱を肌で感じることができました。
交渉のシミュレーション
ディスカッション結果の発表
戦地からの生の声を聴けたこと
研修に参加していた外国人研修生の中には、ウクライナ、南スーダン、コンゴ民主共和国など、現在も紛争が続いている地域から参加している人がいました。彼らから、紛争の悲惨さや人々の苦しみ、そして平和への強い願いを直接聞くことで、平和構築の重要性をより深く理解することができました。
紛争地から参加の研修生
同志を作ることできたこと
研修期間は約5週間と短期間でしたが、様々なバックグラウンドを持つ参加者と寝食を共にしながら学び、議論することで、深い信頼関係を築くことができました。国連は他の業種にない特殊な環境であるため、孤独にキャリアを築いていくことが多いと思っています。海外派遣を経て、今では、定期的に同期会を開催し、目下直面している悩みを共有しています。これは、今後のキャリアにおいても大きな支えになると感じています。
東京探訪
赴任後のオンライン同期会
業務内容について教えてください。
UNICEFエチオピア事務所は、全ての子供たちに対し安全な水供給と衛生環境を提供することを目指し、国内の水供給設備の建設、トイレなどの衛生環境の整備、政府との政策立案等に努めています。
私は、主要な業務に加えて、随時発生する業務にも対応しています。エチオピアのオフィスでは、データ管理が弱点であるため、それを主要な業務とし、提案書の作成や追加の資金調達のためのレポート作成など、様々な業務に取り組んできました。
主要な業務
エチオピア全土の水供給設備の建設状況の可視化
これまでの建設は各地域事務所が管理しており、遅延などが発生した場合、国事務所がそれを把握することができず、提案の期限を守ることができない事例が多くありました。そこで、全ての建設現場を地域事務所と協力してリスト化し、ダッシュボードを作成して一元管理できるようにしました。データの不足や、同僚が使い慣れていないという問題は依然としてありますが、ダッシュボードの活用により、全ての建設現場の進行状況を可視化することができました。将来的には、建設現場で問題が発生した場合、国事務所がすぐにそれを把握し、ドナーとの交渉を迅速に行う体制を整えることができるようになると考えています。
工事の様子
掘削完了後
建設後の水供給設備の運用状況のデータ化
途上国では水事業の設備・施設の建設に重点が置かれていましたが、経済発展に伴い、徐々に施設の運用管理にシフトしています。そのような状況の中、エチオピアでは依然として建設ラッシュが続いており、施設の運用管理に注力することが難しいのが現状です。例外なく、UNICEFも建設に注力しており、責任範囲は建設までとなっています。その後の水供給設備の管理と運営はその地域に委ねられています。そのため、UNICEFとしては水供給設備の運用管理データを管理しておらず、どの水供給設備が故障していて、問題を抱えているかを把握することができませんでした。そこで、アプリを用いて全国の水供給設備の運用管理状況をデータ化することにしました。まず、UNICEFがこれまで関与してきた施設をリスト化し、各州でUNICEFが建設した施設を管理するマネージャーを招集し、アプリの使い方のトレーニングを行いました。エチオピアの12の州と2つの自治区全ての約180人の関係者に対して、全国各地で計8回のトレーニングを行いました。データの収集や収集したデータの質には依然問題がありますが、政府が指定している運用管理の指標を可視化することができました。今後はこのシステムを政府の方々と共有し、どのように水供給設備の運用管理をモニタリングしていくのか議論していきます。
地元の水道局の人へのプレゼン
トレーニング後の集合写真
随時発生する業務
提案書の作成
UNICEFエチオピア事務所は大規模な事務所であるため、資金提供元からのプロジェクトの提案が次々と入ってきます。そのため、同僚は多くの提案書を作成することになりますが、細部まで手が回らないことが多いです。そこで、日本やインドネシアでの経験を活かし、WASHとしての最終的な仕上げを行っています。ドイツ復興金融公庫(KfW)からの3,500万ユーロや1,200万ユーロの提案書、日本政府からの100万ドルの提案書の作成を支援しました。夜遅くまで同僚と提案書を仕上げるのは一種の祭りのようで、とても良い思い出になりました。その結果、全ての提案書でしっかりと資金を獲得することができ、その資金で現在のプロジェクトが進行しています。
太陽光システム導入による経済と環境に対する影響に関するレポートの作成
エチオピアでは地下水をくみ上げる動力として全土に数十か所の太陽光発電システムを導入しています。その中でもデータが存在した40か所の太陽光発電システムの実績を分析し、導入することで生じるコストカットと、二酸化炭素削減効果をレポートにまとめました。このレポートを用いて、今後のエチオピアでの太陽光発電のさらなる導入をドナーに啓発していきます。
太陽光サイトでの意見交換
ガンベラでの太陽光サイト
海外派遣での感想は?一番印象に残っていることは?
日本での勤務経験と比較すると、エチオピア研修は精神的にも身体的にも非常に厳しい環境でした。本研修を通じて多くの学びを得ましたが、中でも特に重要な三点について以下に述べます。
命の尊さと健康の大切さを再認識したこと
最も印象に残っている出来事は、同僚の突然の死です。勤務中の出来事ではなく、心臓発作による突然死ではありましたが、昨日まで共に働いていた同僚が突然亡くなったことで、命の尊さや儚さを改めて強く感じました。
また、仕事の性質上、エチオピア全土への出張を経験しました。エチオピアは地域によって気候が大きく異なり、暑い地域では40度近くになることもあります。出張中に何度も熱中症を経験し、健康が仕事に取り組む上での基盤であることを痛感しました。
チーフの視点からチームの弱点を分析し改善したこと
研修当初は、業務内容や周囲の状況が全く分からず、何をすれば良いのか分からない期間が続きました。業務に慣れていく中で、WASH部門におけるデータマネジメント体制の脆弱性が顕著であることに気付きました。チーフも必要なデータの所在を把握できない状況でした。そこで、必要なデータを洗い出し、格納ルールを定め、WASH部門に必要なデータがすぐに閲覧できるようダッシュボードを作成しました。このダッシュボードはドナーへのデータ提供にも活用されており、レポート作成にかかる時間を大幅に削減すると共に、プロジェクトの透明性の向上にも貢献しました。
同僚からの協力を得るための関係構築
データ収集や提案書作成においては、同僚からの情報提供が不可欠です。日本での勤務経験では、メールで依頼すれば必要な情報を得ることができましたが、エチオピア事務所ではメールを読んでもらえないことが多く、期限までに必要な情報が手に入らないことが頻繁に発生しました。そこで、関係者と積極的に対面でコミュニケーションを取ることを心掛け、可能であれば食事を共にしながら関係を構築しました。その結果、依頼事項の優先順位を上げてもらうことに成功しました。現在でもデータ収集には多くの労力を要しますが、研修当初と比べると明らかにデータ収集速度が向上しています。
仕事後のディナー
出張先で地域事務所の同僚たちと
今後のキャリア・プランを教えてください。
任期終了後は、P2として契約を更新し、引き続きUNICEFエチオピア事務所で水衛生環境の改善に取り組む予定です。エチオピアの水衛生環境の改善に貢献するため、一つのプロジェクトで何十億円もの資金を動かすダイナミックな仕事に取り組むことは非常にやりがいがあります。周りにはUNICEFでの経験が長い先輩ばかりであるため、彼らの知識と経験を積極的に吸収しながら、また、自分が得意な領域(データマネジメントや給水施設の運営等)ではチームをリードし、他のUNICEF事務所でも十分な戦力となる人材を目指したいと考えています。
UNICEFエチオピア事務所のWASHチームでの集合写真
事業への参加を考えている方にメッセージをお願いします。
国連にてキャリアを積むことに対し、少なからず興味を抱いていらっしゃる方々(この文章を読まれているということは、皆様がそのような興味をお持ちであると推察します)に対し、何も躊躇せず、本事業に応募されることを強く推奨します。私が以前の職を退職する際、優秀な先輩から「僕もかつては国連でのキャリアを志向していたのだけど、今となってはチャレンジもできないんだよ。山田さんが羨ましいよ。」との言葉を頂いたことを鮮明に記憶しています。いかに能力が高くとも、家庭の事情、年齢、仕事の状況等を考慮すると、国連というリスクを伴う世界に挑戦することを躊躇する方々が存在することを痛感しました。
また、自己評価が低いが故の躊躇も必要ありません。インターネットで国連職員のなり方を検索すると、IELTSのスコアが最低でも○○点必要だとか、海外の大学院出身者が有利だとか、士気を下げるような情報が散見されます(私自身もその一人でした)。限られた条件を満たした優秀な人々が国際機関に集まっていると思っていましたが、実際に国際機関で働いてみると、日本で当然とされているミーティングに遅刻しないことや、期日までに確実に資料を提出するといったことも大きな強みであると気付かされました。私の英語力は他の方々に比べれば未熟であり、何を話しているのか理解できないこともまだまだありますが、それでも任期が終了してP2として雇用されたのは、日本で培った仕事のスタイルも評価された一因であると考えています。
本記事を読まれたことも、何かの縁と考えています。是非、本事業に応募されてみてください。国際機関を一度内側から見ることで、自分自身が本当に国連でキャリアを積み上げていきたいのかを考えることができると思います。人生の方針と合致しない場合は、他の職を探すことも可能ですし、国連でのキャリアを続けたいと思われるなら、それを支援する体制が整っています。私も来年や再来年にどこでどのようなキャリアを続けているかは未定ですが、どこかの国で皆さんとお会いできることを楽しみにしております。
マラソン大会で同僚たちと
UNICFEのチームビルディング
