平和維持・平和構築
研修員の声
令和5年度研修員 吉川剛史さんの声
プロフィール
高校生の時に出会った1冊の本をきっかけに、国際協力に携わりたいと志す。大学では社会学を中心に幅広く学び、民間企業での勤務を経て、NGO職員となる。NGOの駐在員として約6年間現場で勤務した後、人道支援について学びを深めるべく大学院に進む。
2024年に開催されたプライマリー・コースに参加し、同年3月より国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)トルコのアダナ事務所にて准保護官(Associate Community-Based Protection Officer)として勤務している。
平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に応募した理由を教えてください。
本事業に応募した理由として最も大きなものは、国連機関で正規職員として働くために求められる国連システムへの理解や保護分野における技術的な知識などを、実務を通じて身に付けたいと考えたためです。
約6年間のNGOでの勤務を通じて実施した事業では、実施地域や対象者に対して良好な成果をあげ、やりがいを感じていました。一方で、1つの団体が担える範囲には限界があり、得られたグッド・プラクティスを広く共有したり、他団体との相互学習を体系的に行ったりすることの難しさを実感していました。
こうした経験を踏まえ、グローバル人材育成事業への参加を通じ、国連機関での勤務につなげ、自身の経験をより広く還元できる立場で国際的に貢献していきたいという考えに基づき応募しました。
国内研修に参加した感想は?
研修では、国連機関での勤務に必要な実践的知識と技能を体系的に学ぶことができました。国連内部のシステム等に関する講義に始まり、派遣先での安全管理や交渉等のグループワークを含む模擬実践まで幅広くカバーされていた点が特に有意義でした。実際の業務ではざっくばらんに議論することが難しい場合もあるため、特にグループワークなどで多様なバックグラウンドを持つ方々と率直に議論できたことも貴重な経験でした。
また5週間に及ぶ対面研修のおかげで、講師や参加者の方々と深い繋がりを持つことができました。ある講師の方には今でもメンターのように助言を継続的にいただいており、別の講師の方には赴任地であるトルコの国連機関で働いているご友人の方を紹介していただくなど、研修が終わってからもご支援を頂いています。研修員の方々とは国内研修期間中に夜遅くまで意見交換を重ね、その後も連絡を取りつつ、時には国連への応募書類をレビューし合うなど、貴重で有意義な関係が築けました。
業務内容について教えてください。
私の主な業務は、トルコのアダナ県にあるUNHCRの現地事務所にて、同機関の各種ガイドラインに則り、地域に根ざした保護活動(Community-Based Protection、以下CBP)を現地スタッフと共に支援・実施していくことです。
派遣中は以下のような業務に従事しました。
- 現地スタッフへのCBPに関する技術的な助言の提供
- 難民の方々の声を聞き取る参加型アセスメントの年間計画策定
- 地方政府やNGO向けのCBPに関する能力強化研修の実施(難民主導の委員会の設立等について)
- 現地スタッフが活動を実施していく際に参照する標準業務手順書(Standard Operating Procedures (SOP))の作成等。
またNGOで6年間勤務していた時の経験を活かし、現行プロジェクトのモニタリングや新規事業の立案等も主導しました。特に、後者では現地スタッフの能力強化も行う一方、彼らの知見やコネクションを活かし、潜在的な事業実施組織からの提案を受けることで、より実現可能性が高く、裨益者のニーズに即したプロジェクトを策定しました。加えて、現地事務所として提出する重要な報告書の作成やレビューを担当し、管理用のフォーマットを効率化するなど、事務所長が円滑に事務所を運営するための補助業務等も担いました。
事務所からの風景。毎日モスクからアザーン(礼拝時間の呼びかけ)が大音量で響きわたる度に中東文化圏で勤務していることを実感する。
海外派遣での感想は?一番印象に残っていることは?
本事業での海外派遣は貴重な経験となりました。NGOに勤務していた際には、国連機関と直接やりとりをしたり、またそのパートナー団体として事業を実施したこともあったため、ある程度は国連のことを理解しているつもりでした。しかし、実際に国連組織の一員として働くことで、外から見ただけでは分からない多くの学びを得ました。特に組織のシステムや文化(物事の進め方やスピード感)などは、派遣前に想定していたものと異なっていた部分もあり、それらを学べたことは今後の国際機関でのキャリア構築に大いに役立っていると思います。
そして、2024年12月以降の事務所体制の流動的な変更等が一番印象に残っています。トルコ共和国が受け入れている難民の大部分がシリア・アラブ共和国出身なのですが、同年12月8日に同国の政治体制に大幅な変化があり、私が働いているアダナ事務所も影響を受けました。特にこの変化を受け、UNHCRが長年実施してきた国境地帯でのモニタリング活動が非常に重要となり、私自身は言語の問題等により国境地帯には行けませんでしたが、報告書のとりまとめ等を通じて長期的な観点からプログラムを運営しているUNHCRとしての優先順位や視点について学ぶ機会となりました。
2025年3月末時点でも、国連等に対する資金が例年どおりに拠出されておらず、国連の財政状況は不透明な状況が続いています。事業内容や実施体制が今後どのように変わっていくのか、そしてその中で自分がどのように貢献できるかという点については、職員として少し不安も感じる反面、楽しみな点でもあります。
勤務終了後に、目利きの同僚に手伝ってもらって苺を購入した時の様子。事前準備等も必要であり少々業務が大変な一日であったが、苺の甘さが疲れを癒してくれた。
今後のキャリア・プランを教えてください。
国連ボランティア(United Nations Volunteers、以下UNV)としての契約が延長されたので、1年目より更に高い成果を出せるように引き続き尽力していきます。また同時にJPOや内部公募等を通じてUNHCRや、その他国連機関でのキャリアを構築し続けていきたいと考えています。
事業への参加を考えている方にメッセージをお願いします。
国連機関での勤務にご関心のある方には本事業を是非お勧めしたいです。実践的な研修とネットワーク構築に始まり、UNVとしての1年間の海外派遣は、他に中々見られない充実したプログラムだと思います。
もちろん応募に関する時間をかける必要はありますが、その点を除けば応募することに大きなデメリットはありません。私自身、以前本事業へ応募した際、不合格となりましたが、2度目の挑戦で合格しました。
また日本人研修員も、政策機関関係者やNGO等の現場で働かれていた方々、民間企業ご出身の方々等、多様な経歴をお持ちでした。したがってご自身の経歴が国際協力そのものに関係していなくても本事業に参加することは可能であり、意義もあります。
国連機関でキャリアを築きたいとお考えなのであれば、まずは応募してみてはいかがでしょうか。
