平和維持・平和構築
研修員の声
令和5年度研修員 林大貴さんの声
プロフィール
フィリピン大学で地域開発の学士号を取得。同学在学中、フィリピンの科学技術省及び労働教育・研究ネットワーク(Labour Education and Research Network)にてコミュニティ・オーガナイザーとして勤務し、地域社会・市民社会組織の能力強化に携わる。その後、教育・IT分野の民間企業での勤務を経て、英国ニューカッスル大学で教育学の修士号を取得。さらに、コンサルタント企業にてスリランカ政府の能力強化支援に従事。本事業では、国連開発計画(以下、UNDP)ジョージアにて危機予防・回復ポートフォリオのプログラム・オフィサーとして活動。現在はJPOとしてUNDPスリランカに勤務している。
平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に応募した理由を教えてください。
これまで国際協力やコミュニティ開発に携わる中で、紛争影響地域における支援のあり方について、より深く学びたいと考えていました。また、本事業の修了生が多くの国際機関で活躍していること、異なる分野で豊富な経験を持つ修了生や講師から学べること、そして多様な背景を持つ他の研修員と交流し学び合えることに魅力を感じ、応募しました。
国内研修に参加した感想は?
国内研修には、海外からの研修員も国内からの研修員も、それぞれが異なる国・地域・分野での経験を持っていて、大変興味深いものでした。私は開発分野において東南アジア及び南アジアでの経験がありましたが、それでも自身の経験がまだ狭い範囲にとどまっていることを実感しました。一方で、アフリカや中東における人道支援の現実、日本の研究機関や経営コンサルティング会社の先進的な取組み等、他の研修員との意見交換を通じて、視野が大きく広がりました。
また、私には国際機関で働く知人が特にいなかったため、国連で活躍する本事業修了生や講師陣から、具体的な業務内容やキャリアパスについて現実的な情報を得ることができた点も非常に有益でした。
業務内容について教えてください。
主な業務は、プロジェクト管理補佐、成果の記録及び文書化、市民社会団体(Civil Society Organizatin、以下CSO)の能力強化支援、環境分野での協働活動など多岐にわたりました。
プロジェクト管理の分野では、複数のプロジェクトの管理における業務の効率化と透明性向上を目的に、マイクロソフト・シェアポイントを活用した情報管理システムの整備を推進しました。これにより、各プロジェクトの書類や報告書の整理が可能となり、職員や関係者が必要な情報に迅速にアクセスできる環境を整えることができました。
CSOとの協働では、特に女性、若者、障害者、国内避難民等の社会的に脆弱なグループを対象としたワークショップやイベントを企画・実施しました。これらの活動を通じて、CSOの活動能力を高め、地域の課題に対する住民の意識向上に貢献しました。「世界青年スキルデー」や「世界クリーンアップデー」等、国際的な記念日に合わせたイベントも開催し、地域との繋がりを強化しました。
また、ズグディディ市内での電子廃棄物管理プロジェクトにも携わり、学校、図書館、電化製品店、公営住宅等に電子廃棄物ボックスを設置しました。設置後は、回収状況のモニタリングや啓発活動を通じて、住民の行動変容と環境意識の向上を促しました。
これらの業務を通じて、地域に根ざした平和構築と持続可能な開発に、実務的な観点から貢献することができました。
海外派遣での感想は?一番印象に残っていることは?
ジョージアでの派遣期間は、まさに政治的に激動の一年となりました。外国の代理人法案の可決に端を発する大規模な抗議デモ、CSOの活動停止、既存ドナーの撤退等が相次ぎ、ジョージア事務所内でも対応に追われる日々が続きました。
私は、アブハジア自治共和国とジョージア・トビリシ管区の境界に位置するズグディディ市のUNDP現地事務所に勤務し、現地出身の同僚2名とともに活動していました。特にこの地域では、政治的に極めて繊細な対応が求められました。同じプロジェクトであっても、アブハジア側とトビリシ管区側で事務所が分かれ、スタッフ間でも歴史的・政治的背景や価値観に大きな違いがあるため、業務の実施にあたっては常に細心の注意を払う必要がありました。
英語で作成する文書の中にも、固有名詞の綴りや言葉の選び方によって、どちらか一方に偏っていると捉えられる可能性がありました。そのため、文書の政治的中立性を確認し、プロジェクト内であっても情報共有にも慎重を期すなど、配慮と調整の重要性を改めて実感しました。
一方で、困難な状況の中でも地域社会との繋がりが心の支えとなりました。週末には地元の図書館で日本語教室を開き、複数の青少年団体からも招待を受けて地域活動に参加しました。外国人の少ない地域において、地元の若者たちは非常に学ぶ意欲が高く、社会への関心も強く、その姿にジョージアの未来への希望を感じることができました。
世界青年の日を記念して、UNDPジョージアがズグディディ中央図書館でチェス大会を開催した際の様子。
(©UNDP/Irakli Dzneladze/2024)
「世界清掃の日」を記念して、UNDPは町内の40人の若者たちと海岸の清掃活動を行った。
(©UNDP/Irakli Dzneladze/2024)
ボランティアリズムの精神を促進するため、6か月間毎週末、ズグディディ中央図書館でグルジアの若者たちと文化交流会を行った。
(©Zugdidi Central Library/Irma Kvirkvia/2024)
ボランティアリズムの精神を促進するため、ズグディディ中央図書館でにて青少年・子どもたちと文化交流会を行った。
(©Zugdidi Central Library/Irma Kvirkvia/2024)
今後のキャリア・プランを教えてください。
UNDPジョージアでの経験を活かし、現在はUNDPスリランカにてプログラムアナリスト(JPO)として勤務しています。現地事務所全体の運営を副所長の下で支えながら、主に経済ガバナンス分野の案件に深く関わっています。JPOプログラム修了後は、国連機関、国際金融機関、NGO、民間企業等、特定の機関や手法にこだわらず、自分の知識と経験を最大限に活かせる場で、社会的に脆弱な人々のために実質的に貢献できる仕事に就きたいと考えています。
事業への参加を考えている方にメッセージをお願いします。
国際機関で働きたいという思いがありながらも、どうやってその一歩を踏み出せばよいか分からなかった自分にとって、この事業はまさに最適な入り口となりました。1年間という限られた期間ではありますが、国連の現場で実際に働けるという経験は非常に高い価値があります。現地の同僚からも「日本にはこういう制度があるのか、羨ましい」と言われ、日本の若手人材にとってこの制度がいかに恵まれたものであるかを実感しました。
派遣される国や所属する機関によって業務内容や勤務環境は異なりますが、どの現場にも共通しているのは、「自分の行動次第で学びの質が大きく変わる」ということです。私自身、希望していた業務内容とは異なる派遣先に最初は戸惑いもありましたが、「自らの道は自ら切りひらく」という修了生の言葉を胸に、前向きに取り組みました。
結果として、希望していなかった分野にも意義を見出し、やりがいを持って取り組むことができました。また、関心のあった教育分野でも、勤務時間外に活動の場を見つけることができました。
不安や迷いがある方もいらっしゃるかもしれませんが、自分の姿勢と工夫次第で本事業はキャリア形成において大きな財産になるはずです。少しでも挑戦したい気持ちがあるなら、ぜひその一歩を踏み出してみてください。
