平和維持・平和構築
研修員の声
令和5年度研修員 市田華純さんの声
プロフィール
福岡県出身。日本の大学(法学部)卒業後、英国の大学院にて紛争解決学修士を取得。在ナミビア共和国日本大使館(派遣員)、開発コンサルティング会社日本事務所・英国本社(Project Officer/Procurement Specialist)、外務省緊急・人道支援課(経済協力専門員)を経て、本事業に参加。本事業にて、欧州・中央アジア地域の18か国を担当する平和・開発分析官(Peace and Development Analyst)として国連開発調整事務所(UNDCO)で勤務。任期満了後、国連開発計画(UNDP)イエメン事務所にてモニタリング・評価・報告エキスパート(M&E and Reporting Expert、UNV Expert)として従事予定。
平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に応募した理由を教えてください。
9歳の時、南スーダン難民の写真と記事を見て衝撃を受けて以来、紛争予防や平和構築のために働きたいと思い、そのような分野に進学、就職してきました。国際機関にこだわりはなく、外務省やNGO等、どこでなら自分の思い描く効果的・効率的な平和構築への貢献ができるかを考え、政府機関、民間企業、国際機関全てで勤務してみようと思い、新卒では大使館で勤務しました。大使館勤務中も自分の夢について周りの人に話していたところ、上司から「できるだけ多くの人の話を聞いてみたらいい」と、グローバル人材育成事業の元修了生で、JPOを経て国際機関で勤務している方をご紹介いただきました。その際、本事業の研修内容の素晴らしさや人脈形成の重要性等を具体的に説明していただき、本事業への参加を強く勧められました。しかし、当時はまだ新卒であったこともあり、参加費用を払っての研修や、プロフェッショナルレベル(Pレベル)のポストではなく、国連ボランティア(United Nations volunteer、以下UNV)としての派遣に悩み、応募しませんでした。その後、コンサルティング会社で勤務しながら空席公募やUNVに応募し続けるもなかなか採用には至らず、人脈、情報、そして何よりUNVとして国際機関内部で経験を積むことの意義と、自分のキャリア構築における必要性を改めて認識し、本事業に応募しました。
国内研修に参加した感想は?
「本当に参加して良かった」という一言に尽きます。国内研修では、講義やグループワークを通じて実践的な知識を習得するとともに、第1週から第4週まで「分析」、「計画」、「調整」、「管理」をそれぞれ得意とする国際機関の講師陣から終日講義を受けました。紛争地域での人道支援の実施や、武装勢力や現地の人々との交渉のロールプレイなど、想像以上に実践的な研修でした。朝食は同期研修員を誘い、一対一でこれまでの職務や今後の夢を語ることでモチベーションに繋げ、朝9時から夕方まで研修を受け、合間の休み時間には講師の方々に直接キャリア構築について相談したり、昼食や夕食時は業務や応募書類の書き方を聞いたり、非常に濃密な時間を過ごすことができました。夕食後は、海外から参加している同期研修員が自国の状況についてプレゼンしてくれたり、自分のCVの添削や国際機関でのキャリア形成について相談したりと、体力的に非常にタフなスケジュールでしたが、得られた知識は膨大で本当に参加して良かったです。また、国内研修でとったノートはUNVとしての着任後、具体的な分析手法や報告書の書き方がわからない際に見返し、実際の業務に活用しました。国内研修は、様々な国際機関の講師陣が各組織の特色や業務の詳細についてご教授してくれたこともあり、各国際機関に合わせた応募書類の作成や面接対策にも活き、書類選考通過やポスト獲得に繋がりました。
業務内容について教えてください。
各国国内には国連世界食糧計画(WFP)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)等複数の国際機関の現地事務所が常駐している場合が多く、それらを国内で調整するのが国連常駐調整官事務所(UNRCO、もしくはRCO)です。そして、各国のUNRCOを地域レベルで調整することを目的として約5年前に開設されたのが、国連開発調整事務所(UNDCO)です。私は18か国のRCOを支援する、UNDCO欧州・中央アジア地域事務所で平和・開発分析官(Peace and Development Analyst)として、地域平和・開発アドバイザー(Regional Peace and Development Advisor、以下PDA)をサポートしました。私も私の上司も、紛争予防のための国連開発計画(UNDP)と国連政務・平和構築局(UNDPPA)との協同プログラムを通じて派遣されていたため、毎週同じビル内のUNDP地域事務所と会議を行なっていました。着任初日の上司との会議で、気候変動、女性・平和・安全保障(Women, Peace and Security、以下WPS)、カウンターテロリズムなど私が専門性を伸ばしたい分野を伝えた結果、(1)WPS、(2)気候・平和・安全保障(Climate, Peace, and Security)、(3)紛争感受性(Conflict Sensitivity)の3つの分野を任せていただくこととなりました。業務としては、各国のRCOが作成した年次結果報告書(Annual Result Report、以下ARR)や協力枠組、国別分析(Common Country Analysis、以下CCA)などをレビューし、私の担当分野であるジェンダーや気候変動の観点及び地域全体の視点から避けた方が良い表現の変更や追加情報の提案等を行いました。また、オープンソースや内部ネットワークの情報を整理し、欧州・中央アジア地域における情報を週刊政治報告書として、UNDP、DPPA、UNRCO等の幹部に共有する他、要請に応じて地域全体のリスク分析や、和平交渉のシナリオ分析、地域案件のコンセプトノートのドラフト等を行いました。その他、UNDCOだけではなくDPPAや複数の国際機関を巻き込んだ調査も企画の段階や実施の段階で携わらせていただきましたが、情報のセンシティブさから案件そのものが企画段階で無くなったり、調査実施中に方針転換し一般への公開はせず内部資料として展開されることになったりと、政治の難しさを実感する1年となりました。
勤務後、上司と参加したイベントで撮影。上司とは勤務時間だけではなく、トルコの伝統行事である春を祝うイベントで一緒に5時間踊ったり、同僚達を含め飲みに行ったりして、楽しく親睦を深めることができました。
海外派遣での感想は?一番印象に残っていることは?
特に印象に残っているのは、ジェンダーの視点から中央アジアにおける気候変動を原因とする国境沿いの紛争予防について議論する、2日間のハイレベルリトリートを企画・実施したことです。上司から提案書の作成を任され、背景説明資料やアジェンダの作成、招待すべき参加者の選定、各セッションの司会進行者の調整等を担当しました。その結果、政治ミッションの国連事務総長特別代表(SRSG)や国連常駐調整官(RC)をイスタンブールに招待し、2日間にわたり議論を行うことができました。さらに、成果として挙げられたアクションポイントとして、私が中心となり国連女性機関(UN Women)地域事務所と連携し、外部研究員による中央アジア5か国を中心とする48名への現地インタビューを調整しました。その他、UNDCO地域事務所の全員で、年に一度のオフィスリトリートとして郊外のロッジに泊まったことも、最も楽しかった思い出の一つです。朝から晩まで地域事務所としての役割改善や、どのようにRCOをよりサポートできるかについて議論し、RCとオンライン会議を行った他、全員で黒海までボートに乗ったり、同僚と夕陽が沈むのを見ながら家族や将来について話したりしたことで、同僚達との絆を深めることができました。また、UNVの休暇制度であるStudy Leaveを語学学習に使用することを考えていましたが、上司の提案を受け、UNDPアゼルバイジャン事務所に派遣していただきました。当該事務所を希望した理由は、UNDCO地域事務所では18か国を包括的視点で分析・調整することはあるものの、今後のキャリア形成のために各国の現地事務所でプロジェクト関係の経験を積みたいと考えたからです。また、紛争国や紛争後の地域で経験を積みたいと考えていたため、コソボかアゼルバイジャンを希望し、上司がニューヨーク本部やRCOと調整を行ってくれたことで実現しました。外務本省にも度々ご相談させていただき、安全を最優先事項としつつ、10日間のStudy Leaveに有給休暇も加えて3週間滞在しました。コンセプトノートの作成等プロジェクト関係の業務の他、COP29開催前で気候変動関連イベントが多く開催されていたため、UNVとして参加させていただくことで、所属組織を超えて様々な国際機関で働く同僚達との繋がりを得ることができました。短期間ではあるものの、UNDPで経験を積めたことは私自身にとって重要な糧となりました。
オフィスリトリートの際に、黒海に沈む夕日を背に同僚と撮影。
アゼルバイジャンで勤務するUNVの同僚達と、気候変動イベントに参加した際の写真。COP29では、世界の平均気温上昇を1.5度未満に抑えることを目的としていることから、国際機関職員を中心に1.5キロを歩いた。UNVの同僚達はそれぞれ、UNHCR、UNICEF、UNRCOで働いており、滞在期間中はUNICEF事務所も訪問させていただいた。
今後のキャリア・プランを教えてください。
1年間の任期終了が近づいてきた際、大変有り難いことに契約を延長できないかと上司からオファーを頂き、ニューヨーク本部とも相談してくださいましたが、私が所属していたUNDCO地域事務所は18か国のRCOのコーディネートが主な役割であり、各国の現地事務所のようにプロジェクト予算があるわけではないため残念ながら叶いませんでした。しかし、政治分析や平和構築に実のある貢献をしていくためには、まず現場での経験が重要だと考え、紛争地や紛争後の国における空席公募やUNVに応募し続けた結果、UNDPイエメン事務所でモニタリング・評価・報告エキスパート(M&E and Reporting Expert、UNV Expert)としての勤務が決まりました。イエメンでは紛争が続いているため、ヨルダンのアンマンを拠点とし、出張ベースでプロジェクトを管理します。紛争地でのプロジェクト実施の課題や、遠隔での業務管理の難しさを学ぶと同時に、アラビア語を身に付けたいと考えています。今回、次のポスト獲得につながったのは、人材育成事業の国内研修で、幅広い分野・異なる国際機関の講師陣に、機関毎の特色や面接でどのような点が見られているか等をご教授いただいたおかげです。私は、効果的・効率的な紛争調停・平和構築を行うためには、現場を知らずに政治的視点のみで語るよりも、現場を歩き、現地の人々のことを少しでも理解した上で政治的議論や分析を行うことが重要であると考えています。そのため、今後5年以上は紛争地で経験を積み、紛争地域における紛争調停・平和構築のジレンマや現場でのオペレーションを学び、その後本部で紛争調停・平和構築のための政治分析に携わりたいと考えています。他方で、国際機関は終身雇用がなく数年の契約ベースであることや、自分の本来の目的である「紛争予防・紛争調停・平和構築に貢献したい」という気持ちを忘れずに、国際機関だけではなく幅広い視野で自分のキャリアを構築していきたいと考えています。また、長期的な人生プランとして、退職後は孤児院やNGOの運営や、日本に戻り自分の知識や経験を日本の学生達に還元できたらと考えています。
事業への参加を考えている方にメッセージをお願いします。
本事業参加前にも、空席公募やUNVに応募しており、数回UNVのポストで面接に呼ばれましたが、どのように準備をすれば良いかもわからず、面接本番でも全く手応えのある受け答えができませんでした。本事業を通じて、書類審査での自分の経験をアピールする方法を学び、応募書類を準備する際の考え方が180度変わり、面接は何が重要かを学べたことで、面接の準備もどのような質問に対してどのような準備をしておけば良いかが少しずつわかるようになりました。また、本事業の国外研修を通じて国際機関の中に身を置いて経験を積むことは、内部の人脈や情報等得られるものがたくさんあります。私は、研修費用やUNVとしての派遣、会社を辞めるタイミングなどで悩んで本事業への応募を数年先送りにしましたが、今参加を考えている方にはぜひ応募することをおすすめしたいです。
